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大人のスローリーディング

1冊の本をじっくりと読み深めていくという学び。

子ども向けでは灘高・橋本先生の「銀の匙」の授業が有名です。
中勘助の「銀の匙」を中学校3年間かけて読み解くというユニークな授業。

これを真似ている訳ではないですが、
私たちも、1冊の本を数年かけて読み深めていく
大人向けの勉強会をしています。

1冊目は、「成人教育の意味」エデユアード・リンデマン(著)
2012年6月~2016年3月 <3年10ヶ月>

2冊目は、「ダイアローグ」デビィッド・ボーム(著)
2016年4月~2023年4月 <7年1ヶ月>

現在は、3冊目がスタートしていて、
「被抑圧者の教育学」パウロ・フレイレ(著)
2023年6月~

師友舎という会で、
お互いに師となり友となり学びあう、という主旨のもと、
構成主義的な学び・教えについて、興味関心のある大人が集まり、
あーでもない、こーでもない、と研鑽しあっています。

長期に渡っている理由には、
月1回程度の開催であること、
それから訳本であることも要因に挙げられます。

それでも、1語・1文を取り上げ、
著者の言わんとしていることを解釈し、
お互いに理解をぶつけ合い、
ときには、大きく脱線して、理解を広げ深めていっているので、
1回で1ページ進まないこともあります。

けれど、お互いの経験や、職場や研修現場での出来事、
受講者とのやりとりや、部下とのコミュニケーションなど、
実際の例と突き合わせながら、
「こういう意味ではないか?」
「先日、こんなことがあったのだが、これに照らすとどういうことか?」
「こんな場合はどうすればよいのか?」
など、
現場・生活と密接した話し合いとなるため、
いわゆる「生きた学び」が繰り広げられている、と感じています。

他の輪読会を覘いてたことがありますが、
大抵は、その回に1冊を取り上げる形式で、その1回こっきり。
次の回には、また別の本…という進め方をしているところが多いです。

師友舎の輪読スタイルを経験している私にとっては、
1冊について全体をザックりと、
感想を言い合うことで終止する一般的なものは物足りなく感じます。

皆で感想を言い合っているけど、聞いてる?
感想を聞いただけで終わっているけど、
それに対して質問や疑問、自分との違いについて話し合いたくない?
自分の言いたいことを言ってスッキリするだけ?

それだったら、1人で本を読んだ場合と、そんなに変わらない気がします。

でも、スローリーディングでは
一言・一文丁寧に読み深めて、著者x他者sx私、対話していく。

その箇所についての他者の意見や解釈を聞き、
一人では気づかなかった新たな発見があったり、
まったく異なった解釈に愕然としたりして、
なぜ、そのような解釈になるのか、どんな理解をしているのか
理由や背景、前提を深掘っていくと、
さらに、理解が深まる…

そんな、新たな気づきや驚き、共感が、
一人での読書では得られない面白さに繋がり、
これまで、10年以上継続しているのだと思います。

続けているうちに、
次第に、自分一人での読書のスタイルも少しづつ変化が見られ、
ただ流し読みするのではなく、
一語一文丁寧に解釈していける部分が増えてきました。

「本を読む」ということは、いったいどういうことか。

これまでは、最後までページをめくった
ということで「読んだ」と言っていましたが、
内容が頭に入っていないことが多かった気がします。

「どんな本?」と聞かれても
自分なりの理解や解釈が述べられず、
感覚的に感想を言ったりする程度。

「本を見た」にすぎない。

「本を読むことは、著者との対話である」
と言ったのは誰だったか。

書かれた文字を相手にするので、
対面してのコミュニケーションとはスタイルが異なるものの、
相手の言わんとしていることを理解する姿勢には変わりない。

「この言葉を使っている意図は?」
「この文脈でこの言葉の意味は?」
「章のタイトルが〇〇であるから、ここでは何を言わんとしているのか?」

直接、著者にはその場で意図を確認することはできないまでも、
自分なりの解釈(著者はこういう意味で書いている?という理解)と、
自分の意見とを照らし合わせたりする。

それによって、
新しい見解を取り入れたり、ヒントにしたりと、
まるで、対話をしているかのように充実した時間となることは間違いない。

読書って、こんな風にすると、楽しいんだなぁ
と、わかったのが大人になってから。

子どものころから読書をしていれば…(悔)

振り返ってもしょうがないので、
これからも、どんどん、スローリーディングを
楽しんでいきたいと思っています。

興味のある方は「師友舎」HPご覧ください
https://shiyusha2009.wixsite.com/seijin-kyoiku

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