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【悲運の戦国大名🌺筒井氏の深い謎④】筒井康隆氏の小説『筒井順慶』を読んで

4年前、ルーツ探しの参考にするために筒井順慶に関する本を探しているとき、筒井康隆氏による同名の小説があると知りました。約50年前の作品で、おそらくマイナーな部類に属すると思われるので、読んだことがある人は少ないのではないでしょうか。

▼SF作家による歴史小説

【Amazonの紹介文】
SF作家のおれのところに歴史小説の依頼がきた。しかもおれの先祖であるらしい、洞ヶ峠の日和見で悪評高い筒井順慶を書けというのだ…。型破りの発想で小説のジャンルの壁を破壊した表題作。

なぜSF作家が筒井順慶のことを書くのかさっぱりわかりませんが、とりあえず読んでみることにしました。

▼ナンセンスなドタバタ喜劇

この記事を書くために、本書を探したところ見当たらなかったので、当時受けた印象をそのまま書いてみますね。

まず思ったことは、作家である主人公と、色っぽい女編集者とのコメディタッチのラブシーンが出てきたり、何がなんだかよくわからないギャグ漫画みたいなシーンの連続で、なんとなく昔っぽいというか、父が読んでいた週刊誌の漫画みたいなノリだなあということでした。

あ、もちろん、筒井康隆氏が現代文学の巨匠と言われているのは知っていますが、この作品は50年以上前のものなので、作風が今とはずいぶん違うはずだし、当時の世相が色濃く反映されているんだろうと思います。

Wikipediaの「筒井康隆」の項目をみると、「パロディやスラップスティックな笑いを得意とし、初期にはナンセンスなSF作品を多数発表」とあるので、きっと本書はその初期の作品にあたるのでしょう。ちなみに、「スラップスティック」とは、体を使ったギャグや「ドタバタ喜劇」のことらしいです。

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あの有名な小説家・筒井康隆氏による『筒井順慶』、一体どんなことが書いてあるのかワクワクしますね!

▼作者が筒井順慶をリスペクトしていることは、よくわかった

作家である主人公は、「ご先祖様は筒井順慶」という伝承をもとに、各地を訪ね歩きます。順慶のお墓や筒井城址、山崎の戦いの場を見下ろせる洞ヶ峠など、あちこち先祖の痕跡をたどるのです(たしか養老の滝壺の下に潜って宝探しをするというコメディタッチのシーンもあったような)。

いま思うと、主人公が一心不乱に先祖の足跡をたどる様子が、この4年間の私に重なるような気がします(一生懸命すぎて、まわりから見たらちょっとおかしいという……💧)。

主人公は、自分の先祖である筒井順慶が大和の戦国大名であったことを誇らしく思う反面、山崎の戦いの際、順慶が洞ヶ峠で戦況を日和見ひよりみしたという世間の悪評恥ずかしく思っています。また、順慶の父である順昭が狂死したことについても、ネガティブな印象を抱いていました。

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念のため、前にも書きましたが、洞ヶ峠の話は後世のデタラメですからね!

自分の先祖のことが誇らしいけれど、恥ずかしくもある

作中には、主人公のそんな矛盾した気持ちがあちこちに表れていたように思います。でも全体的に見ると、偉大な先祖に対するリスペクトの気持ちが勝っていたように感じられました。

▼作者は本当に筒井氏の子孫なのか?

当時のネットの書評を読むと、筒井康隆氏が筒井氏の子孫であるかどうかは不明であるとか、作者自身は否定しているといった書き込みがあったので、実際はどうなんだろうと疑問を抱きました。

でも、もし作者が大和の筒井一族と何の関係もないのなら、わざわざこんな本を書くでしょうか。それに、この本に表れていた順慶への熱いリスペクトが、単なる創作とは思えません。

私はそんな疑問を抱きながらも、当時はそれ以上確認のしようがありませんでした。

▼改めて読んでみると、驚くことばかり

実はさっき、本書がkindleで読めることに気づいたので、さっそくダウンロードして、4年ぶりに読み直しました。

当時、私は順慶の伝記部分を拾い読みするような感じで読み、他の部分はさっと読み流してしまったのですが、いま改めて読むと色々な発見があり、こんなことが書いてあったのかと驚くことばかりです。

パロディものって、そのもととなる事実を知らなければ何のことだかよくわからないものですが、私は当時、順慶のことをよく知らなかったので、このドタバタ劇の意味がさっぱりわかりませんでした。でもいま、順慶の生涯を知ったうえでこの本を読み返すと、色々なことが見えてきます

たとえば冒頭、主人公が長編小説を2つの出版社のどちらから出すかで大いに悩むシーンがあり、これが物語の最後まで尾を引くのですが、これって山崎の戦いで順慶が明智光秀と羽柴秀吉のどちらにつくかで迷った日和見ひよりみをなぞっているんですね、きっと。子孫もまた大いに優柔不断なんだぞと言いたかったのかもしれません。

また、主人公は順慶について調べるために色々な人に会うのですが、それが誰かについて、今なら心当たりがあります。この本って、よく読んだら半分ドキュメンタリーなんですね。筒井氏に関する史跡を訪ねるシーンも、私がその後、実際に現地を訪ねた体験と重ね合わることで、情景がありありと浮かんできました。

(あと、どうでもいいかもしれませんが、養老の滝にもぐったのは主人公ではなく別の子孫でした)

▼今は50年前とは状況が違う

いま本書を読み終わって私が感じるのは、この本が成立したのは50年前だったからだろうなということです。さっき言ったように、パロディというのはその元になる話を知っていなければ楽しめません。この小説が発表された当時、「洞ヶ峠の日和見順慶」という悪評とともにではあったけれど、世間の人たちは筒井順慶のことをよく知っていた。だからこそ、こういう本が出来たわけです。

でも、いまの世の中で筒井順慶のことを知っているのは60,70代以上の人と、一部の歴史好きの人だけでしょう。そう考えると、50年前がとても遠い時代のように感じられます。

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いまは50年前と違い、筒井順慶のことを知る人があまりいないのが残念です。

ともあれ、このnoteでは、これまでの私の体験を基本的に時系列で紹介することにしているので、現時点でこの話はここまでにして、筒井康隆氏のことは後日、また別の形で書こうと思います。どうぞ次回もお楽しみに!🌺✨

★まとめ★
筒井康隆氏の小説『筒井順慶』は、約50年前のナンセンスなSF作品
・筒井康隆氏は、筒井順慶をリスペクトしているが、子孫かどうかは不明
・現在、筒井順慶のことを知る人は少ない

★最後までお読み頂きありがとうございました。ぜひスキやコメント、フォローをして頂けると嬉しいです。私も訪問させて頂きます!

(続く)

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★今回の見出し画像は、spicebouquetさんです。ありがとうございました。


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