ベールオブ・イズモ
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ベールオブ・イズモ

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島根行きが決まった。

出発の2週間ほど前に国づくりの神として名高い大国主命を祀っている『出雲大社』へ急に行きたくなったのだ。

出雲と言う地はほんに不思議なところである。
奈良時代より前に日本と言う国をつくり繁栄してきた場所で、今からおよそ4000年ほど前に遡る。

その理由として荒神谷遺跡に、大和朝廷発生の約100年前に作られたであろう銅剣が358本も見つかっている。
つまり出雲には、奈良時代より前から文明があったと言う事だ。

今から4000年前の事なんて想像すらつかないが、ただならぬパワーがその地に宿っていることは確かだ。
出発の日まで心静かに待っておこう。

令和3年10月21日

出発の日がやって来た。
足早に職場へ向かう人々の中に大荷物をぶら下げ歩く私がいる。
皆んなの今日はどんな1日になる?

今回の旅は見たもの感じたものをメモを取るようにした。
何10年振りかのバスの旅。
しばし4時間程の出雲の国までのバストラベルだ。

出雲に近づくに連れて、その名の通り『出る雲』と書くように空には雲がポツポツと浮かんできた。
歓迎か?否か?
出雲の神々のご機嫌は如何程に?

幾つもの山々を超えると、空に向かって一際高く聳え立つ山が見えて来た。
中国地方の最高峰である大山だ。
『米子』と言う看板が見えた。もうすぐ松江に着く頃だろう。
さて、私の今日はどんな1日になる?

出雲の国

4時間半のバストラベルを終え私は島根に入った。
宍道湖を中心に平野が広がっており、その奥には山々が見渡せる。
今回の島根の旅は、奥出雲〜出雲〜松江と宍道湖を中心にぐるっと一周まわってみようと思う。

奥出雲は島根県の東部に位置する。
この地は日本神話である古事記に出てくる重要な土地だ。
『ヤマタノオロチ』について一度は聞いた事があるだろう。
素盞嗚尊(スサノオノミコト)がヤマタノオロチを退治した場所がこの奥出雲である。

ジブリ映画『もののけ姫』に出てくるタタラ場のモデルとなったタタラ記念館や、アニメ『鬼滅の刃』の炭治郎の持つ日輪刀に似ている『黒い刃』が展示されている刀剣館もある。

このように神秘的な力が宿る土地で、歴史マニアや神話好きには堪らない場所であろう。

こんな山奥なのに、大手業務用厨房機器メーカーの『ホシザキ』の創業者や、木次乳業の創設者の出身地であり、偉大な人物を生んだ地でもある。
太古から変わらず日本を引っ張り続けている地であると言う事が分かる。

実は私にも奥出雲出身の知人がいる。
その知人も、歴史に名を残すかもしれない人物である。
今回ここへ来たのは、その知人が設計した神社を見に来た事も理由の一つなのだ。

その名は『新宮神社』。
速玉男命(ハヤタマオノミコト)を祀っており、良くない縁を絶つ神として信仰されている。
この神社は全く新しく建て替えられ新品である。
以前は山の上に建てられていたのだが、参拝する人々の登り下りが大変だろうと下ろしてきたのだ。

今より260年前に建てられた神社を、知人はこれより1000年もつ神社をと設計したのだと言う。
立派な大社造りで、新しい木の香りがする神社は見るに新しい。
考えに考え抜いた設計と、それを忠実に形にした宮大工がなせる業である。
これより1000年、この新宮神社がこの地に建っていれば国宝となり、知人の名前が歴史書物に刻まれる事となるだろう。

この他にも私は奥出雲の素晴らしい場所を訪れている。
本当のところ教えたいのだが、あまり人気が出るとそれもそれで嫌なのでヒントの写真を載せておく。
気になる人は調べてみると良い。

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さぁさぁ本題である出雲大社についてだ。

大国主命と天照大神が国譲りをした場所は皆知っているだろうか?
冒頭話していた奈良時代より前の歴史の舞台である。
私は急いで日没に間に合うようにその地へ向かった。

稲佐の浜に着いた頃は、日没ギリギリの17:20。
あいにくの曇りで綺麗なサンセットは見る事ができなかった。
水平線の彼方に沈む綺麗なサンセットを見るには、冬の間(10月〜3月)がオススメだ。

この稲佐の浜で天照大神が大国主命に対して日本の国を譲って欲しいと申し出たと言う歴史がある。
その時の交換条件として、大国主命側が立派な神社を建てて欲しいと言って出来たのが『出雲大社』である。
出雲大社の正式な呼び方は『いづもおおやしろ』と言い、おおやしろと言うだけあって昔の出雲大社は現在の2倍である48メートルの高さがあった事が発掘調査により分かっている。
48メートルと言うと15階建のビルの高さに相当する。
このような事から考えると出雲は相当な権力を持っていたのであろう。

毎年11月になると出雲大社では神在祭が開催され、全国から神々が集まり、そこで全ての人々の縁を決める。
その時神々がやって来る所がこの稲佐の浜であり、出雲大社の宮司たちがお迎えに上がるのだ。
この行事を『神迎神事』と言う。

全て古事記に記されている通りに出雲という場所は昔から変わらずこの地に存在している。
神話を勉強してから出雲に来ると楽しさが倍増するのでオススメだ。

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私の神社お気に入りスポットの中に参道がある。
それは長ければ良いと言う訳でもなく、出雲大社の参道は降って登るというアトラクション的なデザインがお気に入り。
鳥居をくぐってから本殿に辿り着くまでの間、現実世界から神の世界へ入る為に色々な邪気を取り払っていく。

4年振りの出雲大社への参拝。
広大な出雲平野の中に突如現れる巨大な建造物。
大しめ縄の大迫力が素晴らしい。

出雲大社の参拝作法は二礼四拍手一礼が好ましい。
全国のどの神社とも違う参拝作法な事からも、大国主命がどれほど人々に敬われていたのかが分かる。

出雲大社の御神体は何なのか明かされていない。
ただ本殿に祀られている神様の向きは西に向いており、それは稲佐の浜の方角とも言える。
実際に私達が拝んでいる社殿とは違う方向に神様は向いている事になる。
このような事から考えると、古くから大国主命と海との繋がりは深くあったのかもしれない。

出雲大社の裏には山が聳えており、山の裏側はすぐ海に面している。
なんとも珍しく面白い地形だ。
その為、出雲平野にある家は全て松の防風林で囲まれている。
山から降りてきた風が直接当たるからだ。

出雲平野を見渡すと赤い色の瓦の家が多く見られた。
面白いほどに赤い色の屋根ばかりなので、知人に伺うとこの辺りは島根県石見地方で作られている石州瓦を使っているからなのだそう。
石州瓦は日本三大瓦の中の一つで、三州瓦(愛知県三河地方)、淡路瓦(兵庫県淡路島地方)が他にある。
中でもこの石州瓦は、1300度と非常に高温で焼き上げる為、凍害に強いと言われている。
このような事から、主に東北・北海道・ロシアなどの地域から注文が多いのだそう。
寒い地域で使われている瓦が島根で作られている事には驚いた。
やはり、海あり山ありの島根の地形と深く結びつきがあるのだろう。

屋根が赤いのは、出雲地方でとれる来待石から作られた来待釉薬の色である。
出雲平野の一面にかかった赤い色の屋根はとても綺麗だ。
このような瓦事情から紐解くと、昔から海を祀る事で大国主命は数々の災害から出雲の人々を守っていたのかもしれない。

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神社に行く事は神様からパワーをもらったと思うだけでなく、行くと決めてから目的地に至るまでの自分の行動、発見、感情の全てに意味があると思っている。

今回島根に来るまで知らなかった事が沢山ある。
日本を知ったつもりでいる人が多いと思うがそれは傲慢すぎる。
出雲のように日本はとても古くから存在する国で、歴史が長い。
それらの歴史に触れると万物の意味を知る事が出来て、心豊かになり新たな自分を見つけていけると私は思う。

出雲を離れ宍道湖のそばを走り、松江に戻ってきた。
松江では熊野大社、神魂神社、八重垣神社をまわった。
どの神社もパワースポットなので興味のある人は是非行ってみると良い。
次回は一畑電鉄に乗り、島根を一周してみるのも面白いかもしれない。

帰路に就く頃に雨が降り出した。
出雲では『弁当忘れても傘忘れるな』という言葉があるぐらい雨の多い地域である。
幸いにも雨に当たらず旅を満喫できた。

『ベールオブ・イズモ』
ベールを何重にも被っている出雲を少し知ることが出来たかもしれない。
まだまだそのベールに包まれた秘密を知ってみたいものだ。

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文章:ボタ餅 写真:てんぐ

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