電車内清掃アルバイト 初日編
アルバイト初日。
シフトの時間は21:45〜2:45。
それまで僕は最近ハマっている先輩芸人シークエンスはやともさんのYouTubeチャンネルをひたすら見ていた。
シークエンスはやともさんのYouTubeは心霊系のチャンネルなので絶対見ない方がいいんだけど、見ない方がいいって思えば思うほど見てしまう。
オナ禁と一緒だ。
すっかり恐怖に支配された僕だったが時間になり、雨が降っていたので親の車を借りて(実家暮らし)車庫まで行った。
入り口で門の鍵を開けて閉める時にもう一台車が入ってきた。人が降りてきたので、僕は挨拶した。
「あ、今日から入らせていただく真倉です。よろしくお願いします」
「○○です。よろしく」
雨に濡れながらその人は挨拶を返してくれた。
絶対事務所ですべきだった。
事務所に入ると誰もいなくて、少し待ってるとさっきの人が来た。
その人は明るいところで見ると頭文字Dに出てきそうなしげの秀一タッチの人だった。(以下:しげのさん)
前回XLの作業着が入らなかった僕の為に新しい制服が置いてあった。薄いグリーンの作業着。二階の更衣室に行って着替えた。
上のシャツを着るとかなりでかいが何故か丈だけ足りない。俺のギャランドゥが…
下を履くとあほみたいにデカかった。「XL入らねー奴はこんくれーいってんだろ!」っていうサイズだった。
まあベルトで閉めてなんとかした。あと上から反射材のついた網のチョッキを着るのだが、これがキツすぎてやばい。マジックテープでお腹のとこを止めたがパンパンだった。
下に降りるとスキンヘッドのおじさんがいた。わにとかげぎすさんに頭がつるつるの人が夜勤の社員だからその人に教えてもらってねって言われたのを思い出した。
わにとかげぎすさんも人をいじれる頭ではなかったけど…
「おーお前か!今日からのやつは!制服はもらったか?」
「あ、はい」
いや着てるじゃん!と思ったがさすがに言わなかった。
(一回この人の名前を見間違えて蝶野さんと読んでしまったのでここでは蝶野さん。)
一台目の電車が入ってくるまで時間があるみたいで座って蝶野さんと話していた。とても優しいおじいちゃんみたいな人だった。来年還暦を迎えるらしい。
今日の業務内容はとりあえず蝶野さんに付いて行って見て覚えるとのことだった。
よかった、まだ暗い電車で一人になることはない。
ただ僕は色々不安だったので思い切って聞いてみた。
「電車のつなぎ目にうんこが落ちてたりすることがあるって聞いたんですけど本当ですか?」
「ぶははっ!昔は良くあったよー!つなぎ目の扉のガラスが半分しかないやつだとしゃがむと頭しか見えないからそこでしゃがんでしちゃうんだよーwww」
めっちゃ笑ってる。
電車清掃の人からしたらちょうどいいあるあるなのか?
さあ行くよ、と言われ立ち上がろうとしたら
バリッ!
僕のチョッキのマジックテープがはじけた。
「…これ横に調節できるのついてるから」
と言って蝶野さんは僕が気付かなかった左右についてるマジックテープを緩めてくれた。
桃の飴の匂いがした。
外に出てちりとりとホウキを持った蝶野さんは線路をずかずか歩いて行く。なんかこんな風に線路を歩くのは初めてで少しテンションがあがった。
エンダナイッ!って脳内で歌ってみたけど外が暗すぎて全然合わなかった。
15本くらい線路が通っていてそこの一つに電車が入ってきた。
手を上げて運転士さんにいることを合図する。
車より静かだから轢かれないようにって言われてたけど、トラックには勝らない程度だった。
電車が止まると運転席のとこによじ登って鍵を開けて入る。線路から乗ろうとすると電車は結構高かった。
電車はまだ電気が付いていて
「この明るいうちにどこまで出来るかが勝負なんだよ」
と言って蝶野さんは仕事を始めた。
今はコロナで電車の窓が大体空いてるからそれを閉めていく。その時網棚と座席に何か物がないか確認する。ゴミがあったら通路に落としておく。そして最後にホウキでゴミを回収する。
それを先頭の車両から最後尾までやって最後に確認しながら先頭まで戻る。
と言った流れだった。
自分でも窓を何個か閉めてみたが電車の窓は思ったより重かった。
そんでその日は雨が降っていたから傘の忘れ物が多かった。
蝶野さんは「忘れ物の傘は最後戻る時に忘れないように通路の真ん中の吊革にかけとくんだ」と言ってかけていた。
すると運転士のアナウンスが入って「車内の電気消しまーす」
と言った。
バチン
真っ暗になった。
こぇえええええ
慌てて首から下げているライトをつけた。
すると窓に、下から照らされた自分の顔が写った。
ブサイクだった。
ただ暗い中作業していたら割と目が慣れてきてそんなに真っ暗じゃない事に気付いた。街灯の明かりが少し入ってくるからだ。よかった。これならなんとか。
ただつなぎ目のドアの窓に自分が写ると、合わせ鏡のように何重にも奥に自分がいるのが不気味だった。
蝶野さんは網棚は縦から見ると見やすいんだよとかコツをいろいろ教えてくれた。この人がいると全然怖くはない。
ただちょいちょい僕が「これ夏とか冬は大変そうですね」とか言うとシカトされた。
なんで?
そんで最後尾まで終わって棚とかを再確認しながら先頭に戻って行く時に目の前に急に透明な何かが現れた。
「うわあ!!」
と言って払ったらビニール傘だった。
「何やってんだお前wそんなんでいちいちビビってたらダメだぞ。いて!なんだこれ!」
と蝶野さんもその一つ先の傘にぶつかっていた。
最後に網棚とかにあった雑誌とかを全部回収して電車を降りた。
これがあと9台あるらしい。結構大変だな。
次の電車がもう車庫に入っていたのでまたすぐ乗り込んだ。これの繰り返しらしい。
この電車はすでに真っ暗だった。
蝶野さんは丁寧に教えてくれていた。
「これ行きでちゃんとやっておけば帰りはそんな見る必要ないから行きが重要だからね」
「分かりました、確かに行き適当にやったら帰りもちゃんと見ないとで二回やるみたいなもんですもんね」
またシカトされた。もう慣れたけど。
そっから一分くらい経って蝶野さんが
「二回?」
と言ってきた。
さすがに笑っちゃった。俺の無駄な発言をずっと考えてくれていたんだろう。申し訳ない。
「いやなんでもないです。すみません。」
と言って作業を続けた。
そんでその作業を続けて5台目くらいの時に気付いたのだが、周りに電車が増えて電車に挟まれると街灯の明かりがまったく入ってこないことがわかった。
暗闇。
うわこれ一人だったらマジでやばいなと思った。
その時隣の電車に人影が見えた。
えっ
マジ?
その人はライトを首から下げている
しげのさんだった。
こんな書き方したけど実際はすぐしげのさんって分かってました。ごめんなさい。
しげのさんはアルバイトらしいがかなりベテランの動きをしていた。
ただ蝶野さんは凄かった。車両に入るとすぐ窓が空いてるかどうか判断していた。僕には全然分かんなかったが、匂いが違うらしい。
あとまたうんちの話になって、昔特急をやっていた時電車内の小便器でうんこをするやつがいて、中国系の人のうんこは漢方みたいな匂いがする。と言っていた。
いろいろ疑問は残ったが、とりあえず嗅覚がするどいらしい。
残り二台くらいになって僕は思い切って蝶野さんに聞いてみた。
「お化けとかって見たことあるんですか?」
「そりゃあるよ!」
え!?
「こうやって歩いてると電車がギコギコ鳴るんだよ!」
ん?
なんだその回答
なんか蝶野さんが気を使って誤魔化したような気がしたのでそれ以上触れられなかった。。。
お化けがいるかどうか真相は闇の中に…
(うまいこと言えてる?)
そんな感じで初バイトは終わった。
2:45までのシフトだったけど1時間くらい早く終わってその時点で帰っていいらしい。
ラッキー!
今回は平和だったけど、ゲロがあったりしたら結構大変だと思う。あとこれを一人でやるのは俺は怖い!!
また進展があったら報告します!
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