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交渉下手に欠けている"ある視点"

普段の生活で交渉を意識されることはあるでしょうか?

交渉というというと、大げさに聞こえるかもしれませんが、あなたが普段何気なく誰かに頼んでいること、例えば、狭い通路で少し横に避けて欲しい、コップを取って欲しい、など、これらの小さなお願い事も立派な交渉と言えます。

また、恋愛における"付き合ってほしい"、"結婚してほしい"という願いや、就職活動において企業に雇ってほしいという要望もある種の交渉ごとです。

これらの要求がすんなり相手に受け入れてくれる場合もあれば、全く気持ちが通じない場合もあります。

相手が自分の要求を受け入れてくれない時は嫌な気分になったり、相手との関係がこじれたり、二度と会いたと思えない関係になったりすることもあります。

では、どのようにすれば要求が通りやすくなるのか?

何が要求を通す妨げになっているのか?

交渉事に不可欠な視点をご紹介したいと思います。

1.それは相手にメリットがあるか?

最初に考えなければいけないことは、自分の要求を通す時に相手にメリットがあるのか考えることです。

例えば、先ほどの例で言えば、狭い通路であなたが道を通りたい時に、道を塞いでいる誰かに、「少しどいていただけませんか?」と頼んだ場合、特に相手にメリットはないのではないか?と思われるかもしれませんが、

簡単なお願いであれば、人は頼られたという感覚になり、相手に親切にすることで、自己肯定感が高まるという感覚を持っています。

更に"道を譲ってくれた"ことに対してあなたがお礼をすれば、"良いことをしたという感覚はますます強くなり、頼みごとを聞いてよかったと思うでしょう。

この良いことをしたという感覚が、相手にとって小さな頼み事を聞くというメリットになります。

もしくはこのような小さなことでいざこざを起こしたくないという感覚から、道を譲る選択をしたとも考えられます。この場合は、いざこざというデメリットを回避できるというメリットのために頼みを聞いたということになります。

どのような願い事においても相手が行動をするということは、そこに何か行動を起こすメリットが存在すると考えて差し支えないと思います。

このような小さなお願いであれば、あまり意識することはないかもしれませんが、例えば家庭の中で、リモコン取って!コップ取って!など、相手を尊重しない小さなお願いの積み重ねが、徐々に信用を奪っていき、ついにあなたの言うことを聞いてもらえなくなるということも考えられます。

つまり、相手に自分の要求を通したいと思うのであれば、相手のメリットを考える必要があります。

逆に、相手にメリットを与えることができないのであれば、要求するのを控えたほうが良いかもしれません。

七つの習慣にも出てくるWIN-WIN or NO-DEAL(相互利益がないのであれば取引をしない)という考え方です。

ただ先ほども申し上げた通り、自分が少ない労力でできる手助けは頼られて嬉しいという気分をもたらすので、メリットを何も考えずに頼みごとをすることが悪いことであるとは限りません。

してくれたことに対して、きちんとお礼をすれば相手の自己肯定感の高まり、次の願い事も喜んで聞いてくれる可能性があります。

ちなみに、相手に損をさせるほど、自分が得るものが大きいと考えがちですが、そのような関係より、継続したメリットを得られる関係の方が得られるものが大きくなること多いものです。

特に現在のSNS社会において、相手に損をさせて自分がメリットを得るような汚い交渉すれば、その評判は瞬く間に広まり取り返しのつかない事になりかねません。

2.交渉相手のメリットの本質を考える。

"相手にメリットがなければならない"という観点を具体的に考えると、お金、モノなどのプレゼントが頭に浮かびますが、相手のメリットの本質とはもう少し抽象化して考えた方が、相手にとっては適切なメリットになることが多いと思われます。

そこで、メリットの抽象化の一つの指針として、役に立つのがマズローの五段階欲求説です。

マズローの欲求5段階説

1.生理的欲求:食事、睡眠、性欲など生命を維持するための本能的な欲求。
2.安全の欲求:安全性、経済的安定性、良い健康状態の維持したい欲求。
3.社会的欲求と愛・所属の欲求:自分が社会に必要とされている、果たせる社会的役割があるという感覚を満たしたいという欲求。
4.承認・自己承認の欲求:自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求。
5.自己実現の欲求:自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものにならなければならないという欲求。

例えば、夫婦の間で、夫に対して、妻が服を脱ぎ散らかさないで!食べ終わった食器は台所において!といった要求を文字通り、夫が改善したからといって、夫が趣味のゴルフ道具買うための小遣いを手に入れられるという事は考えにくいです。

この場合、妻が夫に対して本質的に要求していることは、夫の素行が改善される以上に、"自分のことを尊重してほしい"という気持ちであり、3.社会的欲求と愛・所属の欲求、4.承認・自己承認の欲求に近いものです。
これらの要求を満たさなければ、夫は妻にメリットを提供したことにはなりません。

つまり、素行を改善しただけでは、夫から妻への要求は相変わらず通らない状況が続くのであり、形式だけのプレゼント、気持ちの無いありがとうも相手の本質的なメリットになりません。

ただし、恋人があなたの気持ちよりも、欲しいと思っているモノがあるかもしれませんので、ぜひお互いの思いを確かめてみてください。

3.すべての交渉のベースはコミュニケーション

以上の例から分かる通り、交渉のベースはコミュニケーションそのものです。相手がこちらの言っていることを理解してくれているという感覚が高まれば、合意できる可能性は高まります。

素直に自分が欲しいもの、相手が欲しいものを言える関係が築けているのであれば、その要求を叶えるのにかかる労力を減らすことができます。

"交渉"や"メリット"という言葉を使うと少しあざとい感じがしますが、本質的には相手とのコミュニケーションを取り、お互いが本当に欲しいものを共有し、出来る限り良好な関係を築くために努力をするという事が、交渉の原則です。

自分が何かしてもらいたい時、反射的に頼むのではなく、一呼吸おいて相手に何ができるか考えることで、両者の関係はより深いものになると思います。

4.参考文献

今回の交渉の話を深堀されたい方は、こちらの『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』を参考にされて下さい。

本書では具体的な交渉の事例を交えながら、相手のメリットに対して考えるべき視点、交渉が決裂する場合に陥る思考パターンなど様々な場面で使えるテクニックが満載です。

交渉術と言うと大層な感じがしますが、今回の話の通り、自分が何かしてもらいたいと思うことはすべて交渉事に通じるので、コミュニケーションを円滑するためにもぜひ身につけておきたいスキルのひとつです。

『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』

内容(「BOOK」データベースより)
交渉は「駆け引き」のうまい者が勝つ―それは大きな間違いである。本当のプロフェッショナルは、時間と労力をもっと効果的に使う。どんな複雑な利害があっても「最高の解決法」を導く。相手の面子を立てながら、自分の要求を通す。「どう見ても不利」な状況も一発大逆転できる。理屈が通じない相手を180度変える「ひと言」…。「交渉力」を身につける―ハーバード史上最高の研究。

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