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生姜の蜂蜜漬けと中村元訳『ブッダのことば』

 土生姜。お料理にもお菓子にも飲み物にも使える万能スパイス。
 うちではすりおろしや刻みで使うだけでなく、蜂蜜漬けのスライスを常備して日々利用しています。朝のチャイ、夜のホットワインには欠かせないし、料理の甘味づけにもちょうどいい。バニラアイスにちょっぴり掛けても乙なものです。また、ポッカレモンで作る手抜きホットレモネードも生姜蜂蜜を入れたらワンランク上のお味になるのです。
 作り方はごく単純。ジャムかなんかの空き瓶に、スライスした生姜を入れて蜂蜜を注ぐだけ。30分ほどで生姜から水分が出て、サラサラのシロップ状になります。管理は常温でOKです。うちは一週間ほどで使い切る量で作っています。冬にはおすすめの簡単ホームメイド調味料ですよ。
 簡単じゃなきゃ、作りも使いもしませんから、私。

 常備といえば、岩波文庫の中村元訳『ブッダのことば』は、私にとって常備薬のようなものです。

 手元にあるのは1991年の16刷なので、大学時代に買ったんでしょうね。
 スッタニパータと呼ばれるこの古い聖典は、ブッダの肉声をある程度伝えているものと見られています。御存知の通り、日本の主である大乗仏教の経典というのは後世に作られたいわば二次創作だけれども、当然ながらそれらは釈迦の直説ではありません。拡大解釈に拡大解釈を重ねた、あるいはより深く思索したといってもいいのかもしれませんが、なんにせよ二次創作には間違いない。
 そして、おそらく現代人には釈迦仏教が一番しっくりくるんじゃないかなあ、という気がします。なぜなら、別に神信心しなくてもいいから。
 お釈迦様、わりと現実的なタイプだったようです。
 出家者には厳しい戒律を守ることを教え、僧伽の中にあっても個としての独立を求めて、 

あらゆる生きものに対して暴力を加えることなく、あらゆる生きもののいずれをも悩ますことなく、また子を欲するなかれ。いわんや朋友をや。犀の角のようにただ独り歩め。

中村元訳『ブッダのことば』14ページ

と、家族や子孫どころか友達すら持つな、ただ一人歩め、と説くわけです。 
 けれど、在家には案外普通の道徳に近いものを「幸せの秘訣」として教えたりしています。まじめに仕事をして家族を大事にし、嘘をつかず酒をのまず欲張りなことをしなかったら幸せになれますよ、みたいな。
 もちろん、紀元前のインド社会がベースですから、21世紀の社会的通念とは合わない部分もありますし、女性差別的傾向もあるのでその部分は目を細めて読まなければいけませんが、それでも人生の指針になるよい言葉はたくさんあります。迷った時にはちょっと目を通してみるのもいいのではないでしょうか。近頃ではなんと電書も出ているので、スマホにダウンロードしておいてもいいかも、ですね。
 最後にこのご時世にふさわしい一節を。

村や町を破壊し、包囲し、圧制者として一般に知られる人、──かれを賤しい人であると知れ。

中村元訳『ブッダのことば』33ページ

 一日も早く、全世界から戦争と独裁がなくなりますように。



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