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音楽: 歌謡曲 #1 | 細野晴臣イエローマジックショー

偶然TVの番組欄を眺めているとき このNHK番組を見つけ録画視聴したのですが
これは 知る人ぞ知る -- 特にYellow Magic Orchestra (=YMO)ファン垂涎の貴重なセッションを含む逸話だらけの -- コント+音楽番組だったようです。
きっと少なからぬ人がこの番組について思いの丈を述べることでしょう。

YMOが海外で脚光を浴び始める黎明期は 自身の多感な時期に重なっているため 多くの同時代人がそうであるように 私も いまもなおメンバーの動静に関心をもつファンですが 熱烈な信者とまではいえず
本記事は上っ面な印象を述べるに止めます。
*むしろ力点は <おまけ> の方にあり。。。

改めて 何がこの雑文のモチーフになったのか内省してみましたが
答えは 元YMOの皆さんの楽しそうな様子 に尽きそうです。


番組構成は簡単に言うと以下:
 1) 細野晴臣氏が家長 高橋ユキヒロ/幸宏氏がその父親 に扮し         
  日本家屋のお茶の間で静かに展開されるコント
  (=古いけど『寺内貫太郎一家』の対局的アドリブ風味)
 2)その他 細野氏が登場する寸劇風コント
 3) 細野氏本人による自作の曲目紹介

2) のほとんどは 喩えるなら 昭和の時代に『スネークマンショー』を好んで観ていた人達が喜びそうな感じ(でもないかな)で、自分には。。。。
※改めて思うに 番組タイトル自体が スネークマンショーへのオマージュ
 かも知れないですね。出演ミュージシャンを紹介する細野高橋両氏の姿に 伊武雅刀+小林克也が重なりますし。

細野氏自身は大げさな演技もなく 雄弁に語ることもなく 存在感や僅かな物腰だけで微笑を誘う自然体スタイルでした。
おそらく 氏のユーモアのセンスは ’中心から引いた感じ’ に根付いているのかなと想像されます。

話は横道に逸れますが:
このショーの番組内企画で 細野氏は 実は芸人 ’さまぁ~ず’ のファンで 民放の某番組でこのコンビが街歩きする際の物言いや関心事が 東京(港区生まれ)育ちの自分にはまる といったように説明されてました。
※芸風はかなり違う感じですけど、ね、、、、。


1) のお茶の間コントは、これまた、何がアドリブで何が台本なのか グダグダな展開で判然としない代物でしたが、、、、
細野氏と高橋氏が 時折ボソボソと短い言葉で かつての(主にYMO時代の)エピソードに対しアドリブっぽく本音をこぼすシーンがあり
そこが往時を知るファンにとっての味だろうなと感じます。

ユーモア好きそうな細野氏の控えめな茶目っ気が滲み出ていて
作意のないポーカーフェイスと 遠くを見るかのような大きなお目々の組み合わせが 視聴者に微笑を与えてくれます。

高橋ユキヒロ氏が結ぶ天才達のご縁

 そして3)では 過ぎ去った昭和の香りが今となっては懐かしい。。。

 番組への友情出演のようにカメラ越しに一言コメントされたミュージシャンは(番組放送は2001年だったようで) 既に鬼籍に入られた 忌野清志郎、シーナと鮎川誠をはじめ 錚々たる皆さんでした。
 当たり前ですが 約四半世紀も前なので どなたもお若く。。。。

演奏自体はおちゃらけません

ただ、、、
細野氏の音楽面での偉大さは 自分のように楽譜も読めない馬の骨にはなかなか実感できないのです。
一般受けするキャッチーな曲もあまり作られてないと思いますので。

しかし
そこを補ってくれる 文藝春秋のオンライン記事 を見つけました:

冒頭に 業界で傑出した同業者 且つ 戦友の坂本龍一氏が検知する 細野氏の特徴についてインタビューを受けた際のコメントがあります:

〈1枚目のソロ・アルバム『ホソノ・ハウス』が好きだったんですよ、とにかく。(略)いきなりあれを聴いて、メジャー・セヴンスとか、フランス近代音楽に通じるような、非常に高級なコード・ワークが出てくるんで驚いたんです〉(*1)
〈ところがあとになって訊いてみたら、(略)細野サンはハリウッドの映画音楽とかミュージカルからその辺の要素を体で学びとってたのね。フランス近代音楽はハリウッドに大影響を与えてるから。だから細野サンはちゃんと勉強したわけじゃないので。でも、勉強もしてない人がさ、ドビュッシーやラヴェルの和声の本質みたいなものをアメリカ経由で完全に血肉化してたんだよ。これは驚異的だったね。ぼくがこういうすごさを日本人に感じたのは、細野サンと矢野顕子だけですよ〉(*2)

https://bunshun.jp/articles/-/62883

まさに蛇の道は蛇。。。。。

多くのYMOファンが気を揉んでいたであろう YMO絶頂期のメンバー内の確執とその後についても このオンライン記事で詳述されています。


1)のお茶の間コントで 細野氏と高橋氏がNY在住の坂本氏に会いに行くシーン(=稼ぎが良いであろう坂本氏から無料ファーストクラス航空券が届いた設定)では この番組の白眉であろう三人のドテラ?姿での 'Rydeen' 演奏が登場します。

リラックスされてます

その後 茶の間のこたつを囲んで 坂本教授さえもおとぼけコントに参加するのですが 朴訥な会話のやりとりから 過去の不協和音らしきものを乗り越えた三人の関係性が想像できて 和みます。
よく知られているように 高橋氏が細野氏と坂本氏という異なる個性を結びつけていたそうですが その実際の様子が活字からでなく コントのなかの本音っぽい態度と発言から伝わってきて 納得しました。
三人が楽しそうにしている姿は 同時代人にとって 何よりです。


 なお 上の文藝春秋オンライン記事には「細野晴臣イエローマジックショー」にも言及があります(下記 一部引用):

続いて3人で「ライディーン」を演奏したが、オーケーが出るまでに2度やり直した。3テイク目の演奏を終えると、細野と坂本は顔を見合わせ、「まあ、いっか」と照れくさそうに言った。共演者から「よかった!」と声をかけられた細野は、「素人にはわからないんだ」とひとりごとのようにつぶやいた。

https://bunshun.jp/articles/-/62885?page=3

このシーン 自分も観てて 不意に笑ってしまったのですが
お母さん役(宮沢りえ)の ”お父さんほぉんとよく頑張ったわぁー” という労いに 独り言のようにつぶやいたのでなく、
壁際に立つ共演者達に視線を合わせず イラッとした調子で短く ”あなたたち素人にはわからないんだよ!” と投げ捨てられた言葉でした。

この言葉に毒があったか/なかったかは 細野氏にしかわからないとしても、発語したタイミングの良さに共演者とスタッフが大笑いした一幕でした。
細野氏のペーソスとひと好かれする様子をよく表しているひとコマだなぁと私は感じました。

 友達と戦友が先に旅立ってしまった細野氏はファン以上に寂しいでしょうけれど まだまだ様々なジャンルで健在な細野晴臣の姿を見ていたいです。
 控え目さに粋を感じられているであろうご本人には そういう気持ちはもうないかもしれませんが このショーのように少しは油っけもないと 辛いでしょうから、ね。

時代は遠くなりに、けらず。

<おまけ>

細野氏と 私の長年の超憧れシンガー 吉田美奈子氏のセッションを発見:

日本歌謡曲産業クラスター銀河で 互いに遠目に位置する恒星同士の 意外な化学反応

「そういえば吉田美奈子のカバーって聴いたこと無いなぁ」と気付き
(=大学生の頃から繰り返し聴いているけど ニワカなのか?)
不意を突かれた動画でしたが
美奈子流 'White Chistmas' が 当たり前のようにしっくりきますね。
ファンとしてはVocalistとしての姿ももっと観させて頂きたいものです。


<続・おまけ>
"MARS" TOWA TEI WITH IKUKO HARADA (CLAMMBON)

ひえええぇぇぇぇぇぇ

お茶の間コントで 茶の間のTVから流れてきたMusicVideoがこれ。
YMOの皆さんに憧れて なんとかお近づきになりたい思いでした と緊張しながらこたつの端で恐縮するTowa氏に 涼しい顔の細野高橋両氏でした。

Towa Tei氏のことは その当時 うっすら知ってたような気がしますがこのclipの音は懐かしく感じました。Tei氏が自分というキャラクターにビジュアルなこだわりを持ち演出されている点に総合格闘技的な才能を感じます。
※昭和の特撮っぽい映像に嫌悪感ある向きは画像無しでどうぞ。
 偏見を横に置けば 音はとてもイイのがわかりますよ。
※子供時代に特撮の洗礼を受けたTowa氏の世代(自分も)は
 こういうの作りたいって本能があるんでしょうね。。。
(判るなぁ。)
※ジャイアントロボみたいな涙リベットのグレーな顔がとても懐かしく。。。。

ところでこの曲
テクノ/エレクトロニカ というより やっぱり歌謡曲に分類したくなりますね。80年代ってこんな曲がそこら中に聞こえてたんで はいっ日本固有のものね、と 深層意識が勝手に定義してしまうので。。。

キワモノ映像を面白がりつつ ご自身自も時折コントの送り手側に参加したくなる細野氏の懐の広さが 関係者に愛されるんだろうな と推測されます。
本当に、音楽にとって豊かな時代だったなぁー。



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