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Liar kiss*永遠の片想い*

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連載小説「Liar kiss*永遠の片想い*」収録マガジン。私が、書籍の夢を叶えたかった、大切な小説です。ヘッダー写真は和月様撮影。
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2020年1月の記事一覧

Liar kiss*永遠の片想い*(第八話)

Liar kiss*永遠の片想い*(第八話)

第七話はこちら。

8.彼女と彼女

「おはよう。美紀ちゃん、寝不足?」

給湯室でコーヒーをいれながら、堪えきれずに大きなあくびをすると、亜弥さんが背後から入ってきた。

「あ、おはよう……うん、ちょっと寝不足、かな」

結局、たっちゃんとのチャットが終わっても眠ることなんてできなくて、そのまま迎えた朝。

もう一度出そうになったあくびを堪えて、棚の中からみんなの分のカップを取り出すと、出来上が

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Liar kiss*永遠の片想い*(第七話)

Liar kiss*永遠の片想い*(第七話)

第六話はこちら。

7.届かない恋

コチコチと、時を刻む音だけが静かな空間に流れる。

もう私以外は誰もいないフロアー。
やっとチェックの終わった大量の伝票の山を箱の中に詰めた。
それをキャビネットの中にしまうと、大きく伸びをして時計を見る。
いつもの月初より一時間以上も遅く、もうすぐ九時になろうとしていた。

さすがに、ランチを一切れ程度のサンドイッチで済ませてしまったせいか、ぐるぐるっと鳴り

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Liar kiss*永遠の片想い*(第六話)

Liar kiss*永遠の片想い*(第六話)

第五話はこちら。

6.すれ違う想い

明け方に切れたエアコンのタイマーのせいで、暑くていつもより一時間も早く目覚めた朝。
ぐっと大きく背伸びをして、ベッドから起き上がる。

あれから数日。
Twitterを開く気持ちにはなれなくて、スマホやパソコンをいじっては、何もせずに寝てしまう毎日の繰り返しだった。

まだ完全に梅雨明け宣言もしていないのに、空梅雨なのか真夏のような雲が広がる空。
夏はまだま

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Liar kiss*永遠の片想い*(第五話)

Liar kiss*永遠の片想い*(第五話)

第四話はこちら

5.囚われた心

「あれー、もしかして二人できたのか?」

蓮佑さんの店のドアを開けると、カウンターから蓮佑さんの声が飛んでくる。
それにつられるように、カウンターに座っていた女性と、その隣の男性が振り返った。

「……あれ、古賀さんも来てたんですか? 珍しいっすね」

二人に気づいたたっちゃんが、笑顔になる。

え?
この人が、古賀さん?

皆実から聞かされていたその名前を思い

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Liar kiss*永遠の片想い*(第四話)

Liar kiss*永遠の片想い*(第四話)

第三話はこちら。

4.偽りの始まり

朝方鳴り出した電話。
せっかくの休日なんだから、もう少し眠っていたいのに。
しつこく鳴り続ける電話を無視して、ベッドに潜り込む。
それでも、諦めることを知らない相手との根気比べは、私の負け。
明け方まで皆実と飲んでいたせいで、朦朧とする意識のまま、ベッドサイドに放り出してあるスマホに手を伸ばした。

ディスプレイもろくに確認しないで通話ボタンをタップする。

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Liar kiss*永遠の片想い*(第三話)

Liar kiss*永遠の片想い*(第三話)

第二話はこちら。

3.秘密の関係

「珍しいわね、アポなしで突然美紀がくるなんて」

皮肉を言いながらも、皆実はドアを開けてくれた。
さっきコンビニで買ったばかりの、ワインとデザートを差し出す。

「ごめんね、突然。電話しようかと思ってるうちに、着いちゃった。大丈夫?」

念のため確認をすると、皆実は私からその袋を受け取った。

「……金曜日が大丈夫なことくらい、知ってるでしょう?」

淋しそう

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Liar kiss*永遠の片想い*(第二話)

Liar kiss*永遠の片想い*(第二話)

第一話はこちら。

2.言えない気持ち

なんとなく一人の部屋で過ごすのが嫌で、膝の傷の手当てと着替えを済ませると、結局やってきてしまった蓮佑さんのお店。

隠れ家のような、大通りからはわかりづらい場所にあるそのバーは、賑やかさには欠けているけど、その分落ち着く。

「いらっしゃい、やっぱり俺に会いたくなって来てくれたんだ?」

カウンターから蓮佑さんに声をかけられると、私はカウンターの一番端っこ

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Liar kiss*永遠の片想い*(第一話)

Liar kiss*永遠の片想い*(第一話)

1.狂い出した歯車

忘れられないなら、無理に忘れる必要はないんじゃない?

ずっと好きでいればいいんだよ。
ずっと想っていても、いいんだよ。

いつかその想いが風化して、自然に新しい恋ができるかもしれない。

でも、もしそれでも忘れられなかったら。
そんな風に、たったひとりの人を好きになれたこと、誇りに思えばいいじゃない?

だから、泣かなくていいの。
ずっとずっと、好きでいていいんだよ。

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