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【掌編小説】転校ラブレター♪

 隣の県のA高校に転校することになった。

 そんなに充実した高校生活でもなかったし、転校することに抵抗感はない。

 ただ、好きだった女の子と、一度も話せなかったことが、唯一の心残り。

 でも、それだって、新しい高校へ行けば、また、新たな出会いがあるさと、割り切れた。

 で、いざ、教室で、クラスのみんなに別れを告げた。

 教室を出て、授業中の、シン、と静まり返った廊下を歩いた。

 階段を下り、踊り場に差し掛かったとき、

「ちょっと待って!」

 と、声を掛けられた。

「えっ?!」

 好きだった女の子が、僕を追い掛けて来てくれていた。

「あ、あの……」
「えっ……」

 な、何だろう、このドキドキ……。

「こ、これ~……」

 彼女は顔を赤らめながら、恥ずかしそうに、そっと、手紙を差し出した。

「えっ?! コレッて~……」
「ラブレター♪」

 お互い、顔が真っ赤っか!

 な、何なんだ! この、青春シチュエーション!

 えーっ?! 彼女、僕のこと好きだったの!

 うわ~、そうだったんだ~……。

 何の未練もなくこの高校を去り、新しくA高校でやり直そうと思っていた矢先、少しばかり、未練が残ってしまったか~……。

「A高校に転校するんだよね?」
「うん」
「A高校に、Aくんって子がいるんだけど、ラブレター渡しといて♪」
「はっ?!」
「私、予備校で彼と同じクラスなんだけどさ、彼のこと好き過ぎて、話し掛けられないんだよね~♪ だから、ね、頼んだよ! A高校で、ええ高校生活、送りなよ! じゃね♪」

 そう言うと、彼女は勢いよく教室へ帰って行った。

 じ、自分で渡せや~~~いッッッ!!!

 ダジャレで見送られ、転校、いきなり、恋のキューピット!?

 何やねん、このミッション!

 やっぱり、未練なく、この高校を去れるやないか~~~いッッッ!!!

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