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行こう・残そう・極楽を/9日間銭湯に通った話

銭湯に9日間通った。
理由は家風呂の給湯器の故障である。
先月半ばに突然壊れた。
すぐにガス会社に連絡をするも
コロナ禍で社内も人員削減らしく、
訪問点検する社員も工事の職人もすぐには揃わないとの返事。
治すってか新しく取り付けるのは「月末にはなんとか…!」、
ということで結局連絡してから10日後となった。
で、この寒くなりかけの秋終わりに、外風呂通いとなったのだ。

私は銭湯が好きだ。
書き仕事が行き詰まるとチャリを走らせて銭湯で気分転換をすることも多いし、
旅芝居・大衆演劇の役者さんが劇場での一か月公演の際に通う銭湯に
彼らの「風呂券」をもらって入りに行ったことも何度もある。
あ、くれたんです。こっちから無理やり頼んでもろた訳やありません。
今はなき某大阪のちいさな劇場裏の銭湯や
奈良の奥深まった地のプチ歴史街道を歩いて行った先の地元の銭湯などいろいろ行った。
とある銭湯では番台で「おつれさん先あがりはったで」と言われて、
「いや、ツレちゃいます、知らんおっさんです(笑)」
「え、あんたも女優さんちゃうの?」「ちゃうんです(笑)」なんて会話をしたりも。懐かしい。
そうだ、こんな機会やねんから楽しもう。毎日、ちゃう銭湯に行こう。
フリーの仕事ゆえに時間の融通はなんとかなる。
家から自転車&電車で行ける範囲の銭湯やスーパー銭湯をこの機会に巡ることにしよう。
しかし、この9日間が、なんともまあ、楽しいけど楽しいだけじゃない、
楽しいだけじゃないけど楽しい、9日間だったのである。

【1日目・月曜日・炭酸泉とばつ丸と犬】
初日。
夜の8時頃に電車で数駅のちょっと豪華なスーパー銭湯へ行った。
近くの劇場で公演していた某座長が「最高」と言うていた某所でもある。
別料金(追加料金)でいろんな種類の岩盤浴にも入れる。
マジで大人のテーマパーク。
今回は岩盤浴は付け加えないことにしたが、
なんせここには私の好きな「炭酸泉」がある。
ちょっと前(給湯器壊れる前)にも「行こうかな」と思ったけど
「でもコロナ怖いもんなー」と行かなかった。でも、今回は、そんなん言うてられへん。
受付でしっかり検温してくれた。消毒液も館内の各所に用意されていた。
だから安心してがっつり炭酸泉に浸かった。人多かったけど。気にならなかった。
完全に浮かれていたから。まだ初日だから。
「風呂巡り用」として「某しま●ら」で
ぬいぐるみフード付きパーカーを購入したあたりもう無駄にテンションがおかしい証拠である。
ええ歳してぬいぐるみフードって。
お前はギャルか。もしくは地元のヤンキーか。どちらよりも性質が悪い。
そんなバッドばつ丸のぬいぐるみパーカーを着たまま乗った行きの電車内で、
神の使いのような白いラブラドールレトリバーに会ったのは【先日の記事】のとおり。
はい、はじまり。

【2日目・火曜日・シャワーでトホホ】
さて2日目。もうつまづいた。
「どこに行こう♪」とあれこれ考えていたのだが、
仕事と用事が夕方遅くまでかかってしまい、さらに夜は呑み会に誘われた。
呑み会場所の近くに銭湯がないか検索し、一応、鞄にタオルと風呂セットを忍ばせた。
……が、勿論、会の前にも後にも、そんな余裕はなかった。全くなかった。終電で帰った。
あ、もしかしたら近所の銭湯の1つの「しまい湯」に駆け込めるかも?!
しかし検索するとコロナの影響で早じまいらしい。しょんぼりと帰る。
仕方ないので自宅で水シャワー……ぎゃー!
寒さと共に痛感。
家風呂。それは好きな時間に入れる。
外風呂。それは「あいている時間」に行かないと入れない。
当たり前のことをたっぷりしみじみ思った。寒かった。

【3日目・水曜日・まだまだ青い】
今日は絶対にシャワーじゃなく熱い湯舟に浸かりたい!
この日は台本と資料でかかわっているレギュラー番組収録の立ち合いである。
立ち合い中もずっと風呂のことを考えていた。心ここにあらず。
今日こそ憧れの「チャリの前カゴに風呂セット積んで走って颯爽と入浴し颯爽と帰る」をやるのだ!
と、この日も初日と同じくらいの夜20時頃に決行。
駅でいうと1駅先、自転車で10分の銭湯へチャリを飛ばした。
番台ではなく券売機制のスタンプカードもある、サウナもある、銭湯にしては大きめな風呂だ。
24時(ほんとは24時半?)までやっていて、ロビーも風呂も広く、開放的。
が、脱衣所に入ってから気付いた。
そう。お年寄りの多いこのあたりの地域、この時間帯は、結構、混む!特に洗い場が、混む!
混んでいた!身をもって知った!
こういった「風呂屋的ゴールデンタイム」は常連さんが大集合。
洗い場にも「私の席」「誰誰さんの席」みたいのがあるっぽい。
と、隅っこの方の洗い場をこっそり使いながら常連さんの挨拶やおしゃべりの様子で知った!
私は一応会釈やら最低限の挨拶はするようにはしているものの、
「誰や?」「どこのもんや?」な視線をひしひしと感じるような気がしてならなかったのだ。
そう、銭湯は、ひとつの「コミュニティ」なんだ。村、とまで言うと、あれやけど。
例えば旅芝居のちいさな芝居小屋だったり、地方のストリップ劇場のように。
あー、私も、こうしてコミュニティに入る「初心者」「よそもの」の気分を改めて知ったからこそ、
もっと「一部の人のものだけになっている」みたいにならんように
劇場とかでももっといろんなとこに目を配ろう。しみじみ。
そわそわしながらも、しみじみ。でも、しみじみしながらも、そわそわ。
あ!化粧水と乳液忘れた!
憧れの「チャリの前カゴに風呂セット」……
旅行用のものではなく、家で使うボトルのシャンプーリンスボディーシャンプーとタオルは入れてきたのに!そればっかりに気を取られて忘れ物をした!あかん!肌弱いのに!
洗った髪が乾かぬまま(ドライヤー2台&その席は主みたいなおかあちゃんらが占領していたから)、
チャリで全力疾走して帰宅した。
熱い風呂に使った直後に疾走したので心臓ドキドキ。ああ、まだまだである。
ドライヤーびゃーっしながらまたしてもトホホ。

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【4日目・木曜日・しょんぼりし考えたり、じーんとして笑ってツッコんだり】
昨日とは別方面の一駅先の風呂に行こうとしていた。
ちょっとおもろい風呂がある。
番台には、黒ジャージ上下の今時の朴訥とした兄ちゃん。少年?!
どっかの部屋住みのチンピラ?いえいえ、もしかしたら、息子さん?お孫さん?
なんの興味もなさそうに始終ゲーム機をいじり、
お客さんが来ても、顔もあげずに一言挨拶「うぃっす」
帰る際こちらが「ありがとうございました」と声をかけても「うぃーっす」
兄ちゃんはともかく、わりに風呂が広くて、しかもいつも空いている。
桶をまとめてある湯の湧き口になぜかあるカエルの銅像も味わい深い。
で、コロナ前、しばしば、行っていた銭湯なのだ、うぃっす。
雨降ってるからチャリ乗れへんし、今日はここに決めよう。
と、電車で向かい、到着したら「!」閉店していた! 
やはりコロナの影響なのだろうか……。
コロナ禍によるお店の休業や閉店や人の休職・離職の話は身近にも少なくない。
他人事ではなく、私もレギュラー仕事のひとつのギャラを数か月、いや、数か月以上「ごめん、待って」と言われている!うん、待ってる。待ってるけど!
己のことはともかく、なんだかとても沈んだ気持ちになった。
当たり前に在ると思っていた場所は当たり前ではない。
直接的にも間接的にもこのコロナという厄介すぎるやつの影響がある今はなおさらだ。
コロナで気付かせてもろたけど、コロナに関係なく、そうなのだ。
そもそもいつでも空いてて、「うぃっす」の時点で、気付いておくべきだった!

と、落ち込み、しばし佇んでしもたけど……。
え、ちょっと待って。もう21時半! やばい!今日も風呂入れんかったら困る!
地元駅に戻って……よし、ここしかない。
最寄り駅から橋を渡ったところにある、駅から徒歩5分の風呂。

ただし、ここは注意しないといけないことがある。
注意というのは悪い意味じゃない、おもろい意味で。
番台の女将さんが超お喋りなのだ。
常連のおばちゃん@脱衣所とずーーーーっと喋っている@レールカーテン越しに。
最近の銭湯(いわゆる番台式のとこ)は番台から女風呂が見えないようにレールカーテンを置いているところが多い。
番台がおっちゃんやおじいちゃんやと、女風呂のお客さんはみられるのを嫌がるからかなあ。うん、やはり時代なんかなあ。(※私はあまり気にならない)
ここの女将さんはそんなレールカーテン越しに、顔が見えなくても常連さんとずーっと喋ってる。
阪神タイガースが弱い話、藤浪がアカン話、阪神百貨店の地下の食料品売り場のどの店がおいしい話、常連さんの話、テレビの夜のニュース見ながら安倍政権(当時)があかん話。
すべて「地元のおばちゃん目線」で盗み聞きする気はないがいつも噴き出してしまう。
この日も!盛り上がってる盛り上がってる!
紅葉見に行きたい話と野球の話と消毒液の話。
笑いを堪えて風呂場へ行ったら、別のおばちゃんが、ひとり。しかも、もうあがるところ。
「こんばんは」と「おやすみなさい」
この時間の風呂でお馴染みの挨拶(?!)を交わしたら、おばちゃんが、一言。
「ひとりやけど、まだ閉まるまで時間あるから、ゆっくり入りぃ(笑)」
なんかちょっとジーンとして、お言葉通り、ゆっくり浸かることにした。
じーん&ゆっくりまったり。
で、出たら、脱衣所で、かのおばちゃんが女将さんと絶好調!
おばちゃん、私を見て、「え!もうあがってきたんかいな!(笑)」「えー!」
ちなみに帰る際に靴箱の上の貼り紙を見たらコロナへの注意と共に書かれていた。
「会話は控えめに」どこがやねん(笑)
しょんぼりし考えたり、じーんとして笑ってツッコんだり、忙しい一日となった。

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【5日目・金曜日・令和の銭湯はきっと大丈夫】
花金。って、私のような仕事には関係ないのやけど。
でもでも、収録仕事絡みでちょっと遠くまで行かないといけない日だった。
わりに早く終わったら、うん、ちょっと、知らない風呂の旅に出てみたい。
ということで、荷物等を置き、事後報告のメールなどなどを済ませて
向かうは電車で3駅の、テレビ番組とかでも取り上げられる風呂。
なんでも、「出世する湯」らしい。
場所バレなどで名前は伏せるが某歴史上の偉人も通った(?!)とか。
絶対行かなあきません。
Google先生を頼りに歩いて行った。
途中、ちょっと密並みに賑わうちいさな呑み屋(家みたいな呑み屋)を眺めながら。
小学校や昔ながらの長屋とまで言わないけれどそんな家々の間を通って到着。
20時前。そう、やはり常連さんっぽいおばちゃんとおばあたちが、大集合まではいかないけれど、集合していた。
が、おもしろかったのは、金曜だからか、「ちびっこ」たちの存在だった。
「こんばんは」と脱衣所に走ってきて、
「今日は遅いな」とか言う常連さんに「今日学校で絵ぇ描いた!あとで見せる!」に話しながら、
私をちらっと見、びゃっと服脱いでどぼーん。
近所の若奥さんらしき人に「金曜やからおばーちゃんとこ泊まるねーん」と語っていた。
そういやウチの番組のプロデューサーも言うてたなあ。
「孫来たら近所の銭湯行くんや。500円握りしめて「おっきい風呂行く」言うねん。あがったら瓶のフルーツ牛乳飲むのが楽しみや、言うてな」
銭湯は、生きてるんやなあ。
フルーツ牛乳はもうなくなるけど(※これ衝撃ニュースでしたよね。。)
ちびっこたちが、きっと、そんな気もなく、支えていってくれるのかもなあ。
おばあちゃんは完全に放置して他の御常連と喋っていたが、孫は慣れた様子だった。
あがって、脱衣所。おばあちゃんたちが喋っていた。
「孫が来たら翌朝は喫茶店でモーニングや。普段はいかへん」
そうか。ちいさな喫茶店もそないして続いてるんかもしれないなあ。
「普段なんか、2人やろ?パン焼いて、ウインナー焼いて、あとはあるもん食べさせといたらええ。
文句言うたら「あんた明日から自分でせえ」や」
みんなたくましい。生きている。
脱衣所を出ると、ロビーのテレビには生出演中の松井市長。
相変わらずあの口調、無意識かもしれないが、癇に障る喧嘩腰の口調で生討論してた。
ああ、都構想(この日はまだ選挙前)。おえらいさん方、我々庶民のために頼んまっせ。

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【6日目・土曜日・イケイケ・アニマル・やさしいお湯・神】
昨日の銭湯での人間模様が面白かったので、
また全く知らない風呂に行くことにした。
チャリを走らせて15分?20分? 
工場地帯の団地が立ち並ぶ中に、ぽつんと灯りがさす、人気の風呂。
湯がお肌にやさしい「軟水」だというのも気になっていた。
昨日とはまた違う人間模様。
「探偵ナイトスクープ」でも取り上げられたらしく写真が飾ってあったこの風呂で
この日ご一緒したお客さんたちはなんかイケイケな人が目立った。
キャラクターのスウェットやアニマル柄パーカーの女性3人親子連れ。
蛇柄にチェーンネックレスのおっちゃん。
イケイケやからこそ軟水に癒されたいんかな。(知らん)
キャラクタースウェットの娘さんたち(中学生?高校生?)と
虎柄パーカーのママはなぜかずっと脱衣所で椎名林檎の『ギブス』を歌っていた。
娘さんたちは脱衣所のテレビにうつる嵐の松潤とフワちゃんを観てテンションがあがりまくっていた。
「松潤は神」らしい。「そんなんええからはよ入ってはよ帰るで」とお母さん。
しかし娘さんたちは「わー、フワちゃんが韓国料理食べてるー。チキンー」 
思わずテレビに目が行った私もどやねん。
軟水は、肌にやさしかった。もう6日目だ。入っただけで肌で感じた、お湯の違いを。
チキン食べたいなあと思いながら服来てロビーに出たら、
蛇柄チェーンネックレスのおっちゃんが男湯から出てきて、
自動販売機に向かい、迷いもせずに買ったキリン淡麗をプシュッとあけた。男は黙ってキリン淡麗。
羨ましかったけれど飲酒運転になるので横目で見て出た。

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【7日目・日曜日・気になったことと無駄に気を遣ったこと】
実はちょっと気になってきていたことがあった。
昨日、「お肌にやさしいお湯」に浸かったことで、「あ、(やはり)、うん」。
それは、塩素。銭湯などの清掃に使われる、塩素。
子供の頃、学校でプールに入るとき、入ったあと、気になったあの匂い……。
数日前からちょっとコレが気になっていた。
どことは言わないが、帰ってきて半日ずっと、体から塩素のにおいがしていた!
今回の風呂行きには毎回ニベアのボディシャンプー(大)を持って行ってるし、
ボディクリームも皮膚科でもろてる保湿剤的なものも使ってはいる、にも関わらず、だ。
そう、不特定多数の人が常に入りにくる銭湯って、きっと、
私たちには見えてはいないけれど、清掃や衛生管理やいろんな維持が大変なのだ。
しかもこのコロナ禍である。きっとどこの銭湯もいつも以上に気を付けているに違いない。
営業妨害好きじゃなく、あくまで私が肌が弱いから気になるだけだが、
肌が荒れたり、においが気になっていた。
っていうのはひとつ言い訳かもしれない。
銭湯通いを始めて7日目。ちょっとしんどくなってきていた。いや、楽しいのはほんまやねんけど。
「好きな時間に好きに入る」んじゃなく
「わざわざ行かないとお風呂に入れない」ことが、どこか億劫になっていたのだ。
そう、趣味で銭湯巡りをするのと、毎日生活のために銭湯に行くのは、違う。
今回、身をもって実感したことだ。
で……この日、日曜、仕事して、資料や原稿して、
ぼぉっとテレビを観ていたらうっかり22時半を過ぎていた。
ヤバい!あいている銭湯が限られてくる!っていうか1つしかないやん。
観たくもないし面白いとも思わないのに観ていた私が悪い。
ほんとしょうもないドラマで初回から離脱したのに観てしもたのだ。
ぜんぶ玉木宏のせいだ。
男前で、なおかつ朝ドラ出演の際に近藤正臣に教わってから最強の武器になったこの人の大阪弁のせいだ。
「もー」と玉木宏ではなく自分に毒づきながらチャリを走らせた、行き先は3日目に行ったのと同じ風呂。
今度は行きに全力疾走して到着したら、若女将が、暖簾を中にしまいかけていた。わー!
でもチャリを停めた私に言うてくれた、「こんばんは。いらっしゃいませ」。ありがとう…。
でも若女将「あ!」。え!「スタンプカード持ってる?」持ってます!
「あー、(暖簾を手に持ちながら)ほな受付戻って(スタンプ)押さなあかんなあ…」
独り言のように呟くように言う様になんだか申し訳なくなった。
せやで。もう閉店やねんで。ドラマ観てこんな時間に来る私が悪いねんで。
と、思った瞬間、私は口に出していた。
「あー!でも!忘れたかも!また持ってきますー!」(無駄な気遣い)
「あ、そぉ?もしあったら受付置いておいて。あとで押しとく」
そんなん申し訳なくてそっと引っ込めた。券売機で買うた入浴券だけそっと置いた。
さて、脱衣所から浴場を眺めると、最後の一人。おばあちゃんが一人。
男湯から旦那さんらしきおじいちゃんが大声で「出るでー」、おばあちゃん「はーい」
そして、最後の一人として入る私に「おやすみなさい」と声をかけて出て行った。
なんか申し訳なくて、私もさっと入って、さっと出た。塩素が気になった訳ではない。
今日は化粧水乳液忘れずに来たけど、さっさと塗って出た。銭湯マスターへの道は遠い。

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【8日目・月曜日・少女の黒髪うつくしく】
私は学んでいない。また遅くなった。
テレビは観ていない!観たい番組は既に風呂を優先すべく録画をしておいた!
(島田雅彦が解説する谷崎潤一郎、の、最終回。って知らんがな。(笑))
が、飽きっぽさと、塩素(しつこいな)とで、
嫌とかじゃないけど、仕事や原稿をしていたらまた遅くなった!もー!
この日は、行く銭湯をあらかじめ決めていたのに。てか、とっておいたのに、楽日前に。
そう、銭湯通いもあと2日である。
家から2番目に近い銭湯。すごいすごい狭い昔ながらの銭湯。
昔ながらのちいさな家々の中にひっそりとある銭湯。
でも建築マニアが「わ!」って言いそうな屋根を持つ古い建物で、
お風呂もタイルが素敵で、ちいさいまあるい風呂もほっこりする。お湯も、熱い。ここ大事。
銭湯好きからも注目されているようで、なんか最近そんな愛好者によるイベントなども行われている。
一度、バザーをやっていた際、行った。コップのフチ子の銭湯バージョンを買って帰った。どうでもいい。
わりに好きなので楽日前にとっておいた。
……なのに遅くなってしまい、23時閉店なのに22時過ぎ、もう22時半近く(遅すぎるやろ!)に駆け込む。番台は、お父さん。快く入れてくれた。
風呂にはおばちゃんがひとり。
と、閉店前だからかな、奥さんも、掃除などを終え、入ってこられた。
(大女将も一番最後のお湯に入られた)
そして、あ、私より後からまた1人お客さんが。
高校生だろうか。奥さんと会話してるのが聞こえる。
近所のセブンイレブンでアルバイトをしているらしい。偉いなあ。
さっと入って、さっと着替えて出て行った。高校のジャージ姿で。
部活帰りの、アルバイト帰りだろうか。髪も乾かさずに、そのまま、颯爽と。
挨拶もしてくれた。なんだか格好良かったなあ。しっかりしてはるなあ。
私、高校の頃、わりにカシコいと言われる高校にわりにハードな受験地域で
勉強して入ったのに、音楽と演劇活動と劇団☆新感線の追っかけで、卒業するときはめっちゃアホになってた。
そんなことはさておき。
彼女はああして、毎日、一日のシメに、このお風呂に入ってから帰宅するんやろか。
少女の黒髪うつくしく。なんて、文豪気取りか、いや、拓郎か。
遅くなったけど、なんか、じーんとした、楽日前。流星やなあ(関係ない)

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【9日目・極楽について考える】
楽日!
「グランドフィナーレ」の場所は決めていた。
某チェーンのスーパー銭湯である。
初日に行ったのとはまた別、炭酸泉はない。
「情がある街の銭湯とちゃうんかい!」と突っ込まれそうだが、
どっちがいいとかどっちが好きとかじゃなくどっちにも行っておきたかった。

入ってまず気付いたのはお客さんが少ないこと。
普段は平日夜でも結構混んでいるのに。
そして、寝転べるスペースのソファや椅子などが撤去されていること。
幾度も注意やお願いの館内放送がされる。
「新型コロナウイルスの影響で」や「新型コロナウイルスの感染対策として」
そうだ。そうなんだよなあ。
毎日「生活の一部」として常連さんが来る銭湯よりも
こういった「レジャー」的要素が強いスーパー銭湯は、
もしかしたら、今、同じかそれ以上に辛いのかもしれない。
併設されているマッサージ屋もガラガラだったし。

中のお湯に浸かったのち、この9日間で初の露天風呂に浸かる。
さまざまな種類の露天風呂があるが、おばちゃんたちの視線は、皆、テレビにいっている。
政治じゃない。なんてことないバラエティ番組。中井貴一が出てた(どうでもええ)
私も昔は結構ファンやったんやけど、風呂で裸で観る中井貴一はなんか微妙だった。照れる。(なにが?笑)
ちなみに、露天風呂の薬湯は、季節替わりで地方の温泉の湯らしい。
入浴剤かな。いや、違うよね。
中井貴一が嫌になって、長くは浸からず、出た。
地元のおばちゃんたちがドライヤーコーナーで長話をしている。
「マスク、毎日使うとマスク代バカにならんわー」
「近くのイオンで398円で売ってたで」
「年明けの連休、長くなるってほんまかいな」
「そない長なると困るわ。毎日3食作らなあかんやないか」
「ほんま、上のもんは下のもんのことなーんもわかっとらん。あかんで政治家は。
自分の身は自分で守らなあかんな」
「ほんまほんま」
楽日、最後の最後まで、なんだか考えさせられる風呂通いとなった。
名前は極楽でも、この世の極楽は、なかなか、ないのかもしれない。

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そんなこんなの9日間。
書いていたらえらい長くなってしまった。
楽しかった。でも、楽しいだけじゃなかった。
楽しいだけじゃなかった。けど、楽しかった。
我が家の給湯器は、この後、水曜日、なんとか無事に工事に来てもらえた。
家風呂のありがたさと便利さを痛感しながらも
この9日間は、ほんとに、いいきっかけを頂いたありがたい日々だったなあ、と思っている。
不便になったことでわかることがあるってほんまやなあ。
人情って言葉は好かんけど、情みたいなものは勿論、
「場所」「皆の生活の一部」としての銭湯のこととか。
だからこそ「なくなってはいけない」なくしてはいけない、じゃない。
なくなったらマジでほんまに困る。そんなことがないようにしないといけないということとか。
これは私が今、大好きで、大袈裟なことをいうと救われている「劇場」……
中でもここ数年大事な大事な場所となった「ストリップ劇場」の片隅で、
舞台や客席すべてから人間模様・人生模様に触れ、己もいっしょになりながら、めちゃくちゃ思うことである。
この度の銭湯巡りで、本当に、思わされた。
そう、体で。お湯に浸かることで、チャリを飛ばすことで。

大好きで、尊敬で、
ずっとずっと憧れの人である漫画家で文筆家の故・杉浦日向子は著書『入浴の女王』で書いた。
「極楽は、ちょっと手を伸ばせば届くとこにある。地獄は、うっかりよろけるその足下にある」
「入浴とは快楽の装置なり」
せやねんよなあ。
でもそんな皆にとっての「場所」銭湯やスーパー銭湯が、今、当たり前のようで当たり前でなく、
コロナでさらに「当たり前に在る」が危ぶまれていることには本当に焦りや複雑さを感じてしまう。

この後、私は例の「ケロリン桶酒騒動」について、知ることになる。
あくまで私の意見ではあるが、ケロリン桶をそんな風に使うことはホントどうかと思ってしまい、
【前note記事】に書いた。
銭湯についても同じようなことを思う。
なんというかサブカル的にというかそういう見方はあまり好きではない(自戒を込めて)。
でも、そう、己も他人事ではないのだし、
それぞれがそれぞれのやり方で好いたり、またそれによって興味を持つ人が増えることは、
否定することではないし、好みはさておき面白いし、有意義で、素敵なことなのだと思う。

この銭湯巡りの9日間を終えて、私はますます「場所」、
それぞれにとっての「場所」「大事な場所」というテーマを考えるようになってた。
行こう。家風呂があっても、ちょいちょい、あちらこちらへ。忘れることなく。
そして、そうして、私も、そのあちらこちらに馴染むというかその風景の一部みたいになりたい。
なりたいな。なろうと思う。そう、日常に最も違い極楽の、住人に。
そうして、極楽を、“劇場”を、のこしたい。みんなで、みんなで(しつこいが2回言うね(笑))、楽しみたい。

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◆omake◆
この度は「極楽巡り」をいたしましたが、
先月は「地獄巡り」をしたよ。ふふふ。https://www.instagram.com/p/CGZ2lnrDUGg/

◆◆◆
以下、ちょいプロフィールと各種SNSなど。

【ブログ】 https://momo1122.at.webry.info/ 桃花舞台
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【note】
マガシン、今んとこ、ざっくり4つ。

◆日記がわりのつぶやき帖
◆大好きな〝劇場〟と人と人たちのこと
◆旅芝居スケッチブック
◆読んだ本のことを自分のことと合わせて書く場所かな

【プロフィール】
ブログ「桃花舞台」、のここ【トップページ】にご挨拶など掲載しました。
パソコンから見ていただくと右端に簡単な経歴やこれまでの仕事など書いております。連絡先も。

大阪の物書きでございます。
大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
下町・大衆文化も好きです。
女2人の立ち呑み旅、連載中。現在第7回まで更新中。
http://tabistory.jp/cat_story/cat_sakabawoman/

普段はラジオ番組やらCMやらの構成作家やライターです。

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