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色気の行方 あおいさんと笑門

世代交代、という言葉は文字にするとたった4文字だけれど、かなり重い。
うまくできないと目も当てられないようになるもしくはゆるやかに滅んでしまう。
他のどんな業界や人でも言える・ついてまわる永遠のテーマではあるが、
殊に旅芝居の舞台でもよいもわるいもたくさん目にしてきた。
舞台という、生きて行くための日々の舞台という旅芝居の舞台において。
いいもわるいも、わるいもいいも、みせられてきた。
 
またひとつ、劇団がなくなる。来月の公演をもって。
いや、なくなる、は言葉としておかしい。
今いる若い座長たち中心の劇団となり、劇団名が変わるらしい。
 
と知ったときは「え?!」からの「ふぅん」
でも、まず気になったのは、今の座長、若くない方の座長のことだった。
あ、若くない「方の」って、この言葉もちょっとしっくりこない。
 
だってそのひとは、若くないけど、「おじさん」じゃない。
正確に言うと「おじさんおじさんしてない」。
それどころか、色気のかたまりのようなひとだ。
以前までわたしは例えとして「中条きよし的な」とか言っていた。
でも中条きよしは最近なんか言動が「むむむ」なので例えに使いたくない。
でも、あのような。謎に政治家になった中条きよしじゃなく、「必殺!」の中条きよし。
と、いうと、ちょっとはイメージをしていただけるだろうか?
 
踊っていても、いや、踊りだけじゃない、歌っているだけで、
ふわぁ、ゆらぁり。妙な、へんな、色気を漂わせている。これ、褒め言葉。
それも故意にあざとくではない、しぜんに、ふわぁ、ゆらぁ、涼しい顔で。
歌ってるだけで、やで? 
 
普段わたしのことを「あんたはオッサン役者が好きやからw」と茶化す友人たちですら、このひとのことは「素敵~!」と目をハートにする。
一方、わたしはというと、そこまで、いや、全然ハートにならないのだが、つまりは「よい」のだ。わたしがヒネクレるということは、「よい」ということなのだ。
実際、衣裳もいい、身につけるものや着方つけ方、立ち方たたずまいがいい、踊りもいい。踊りは、(この世界ではレアというほどの?!?!)ちゃんとした、日舞。

あと、これ、旅芝居の某正式な式典というか興行関係の記念パーティーに出席した際のこと。
着物ではなく私服の「正装」があれほどまでに「キマっていた」のは、
その興行関係に属する座長たちがほぼほぼ集まった中で、ダントツでこのひとだった。
ファッションセンスも似合い方も「どこの大御所芸能人ですか?」なオーラを漂わせていた。忘れられない。
 
そんなひとが、第一線を退く?!らしい。
 
どこまでほんとなの?
 
劇団として「関西公演はさいご」な今月、観てきた。
イベント日には「卒業友情公演」など「卒業」を冠にした名前があったりする。
うーん。うーん?
なんて思いながらいつもの「酒場梯子」の友人と共に。
 
若い、再来月から「メイン」となる座長の「若さ」が目につく、つきすぎる中で。ちょっと失笑すらした中で。
 
笑ってしまった。うん、「歌」。
出てきた彼は中条きよしの必殺の歌(忘れ草)をひたひたに色気滲ませながら歌った。
若手の役者を踊らせて、隣で歌っていた。
普通こういうときは踊り手に目がいくものだが、どうしても歌う彼に目が行く。
のは、わたしだけじゃないみたい。
後方の席から観ていて、お客さんの顔と頭が踊り手よりも歌い手側に傾いているのをみた。
あの、謎のフェロモンに引き寄せられるかのように。
 
そして、個人舞踊。
昼の部では2本観られた。
イブニングショーでは1本&ラストの皆が踊る際の歌。

ああ、この感じや。
この伏し目気味に憂いのある感じ。
旗揚げする前の劇団に居たときのことも思い出した。
硬派な座長、人懐っこい副座長、の次に、花形というポジション。
ひとり、すっ、と、ひとり、きれいで憂いをおびていたあの感じ、
からの、ますますの中条きよし感。
フリーから、あの劇団に入って、若くはなくなってから、旗揚げをしたのだ。
我が友人たちも、うるさがたのマダムたちも、ほぉっと、ぽぉっとさせていたあの感じが、武器? として、観るごとに、重ねるごとに、増していった。
 

イブニングショー。三門忠司の『雨の大阪』

どこか、涼しげ、激情型じゃなく。
たのしいのか、たのしくないのか。うれしいのか、うれしくないのか。
トークでフザケてギャグなどは言うけれど、なんだか読めないというか。
今の、この先の、気持ちは? さて。さて? 

そんなことはにおわせず、この日も、ふわり、ゆらぁり。

ああ、そうだ、ここだ、こういうところか。こういうところだ。 

ここが、皆を、惹きつけてきた魅力、のひとつ、なのかもしれないなあ。

次にメインとなる若い座長が、前に前に客席に出てきてお客さんの顔をみつめてアピールしたりが目につきすぎる中だったからか、そんなことを、思わされたりした。 

さて、さてさて。

 〝家〟のこと、〝家〟同然の一座(劇団)のことは「中の」こと。
客席の我々にはみえないこともある、どうしてもすべてが滲んでしまう旅芝居という舞台、でもそれでも見えないこともある、見せないこともある。
見えてしまうこと、みること、見せないこと。
それでも続いてゆく舞台、劇団。 劇団名がかわっても、いや、劇団名をかえて、あたらしい劇団となって、明日へ続く。 
色気を醸し出しまくりながら踊って、歌って、トークの際、お手伝いの若手に「再来月からも出て下さいね」というようなことを振られた彼は言っていた。

「オレはこれまでがんばってきたもん。がんばりすぎるぐらいがんばったもん」

涼しい顔で冗談めかしながら飄々と。
でもきっと本音なのかもしれないな、ともわたしは思った。 

『炎』

我々、客席に座る者、
つまりそれは舞台上に立つ者ではない者たちがやることは、
できることじゃない、やることは、
それを、これからを、観ること、観てゆくこと、
舞台におられる限りは観続けてゆくこと、それしかないのだと思う。
それが、客席の者の、やること、すること。好き勝手口さがなく言いながら。
って、つまり言うってことはこの先を「気になる」「気にしている」ってことなのだから。
これからを、どうなるか、よいもわるいも、わるいもよいも、「観て行く」ということなんだろう、なんだろうな。 

と、若い座長が、若い舞踊……え、なんでなんか煙草と缶コーヒーを持って出てきて、
いや、キメキメ、チャラっぽ舞踊をするのは「今の流行り」だもんね、
でも、え、ヘアゴムを手にし、そのヘアゴムを口に咥えてから、
上目遣いで鬘の毛をくくるなんて仕草、する?! する?! それ、いいの?!?!
(チャラいという意味だけじゃなく、傷まないのか、という意味で)
……とか、個人的には「ぴゃーー」となってしまったけれども、
けれどもっ、の話です。 

「これから」、〝あたらしいこれから〟。

 帰り、お見送りの際に、聞いてみた。

 「再来月からも、出られるんですか?」 

笑いながら、返してくれた。

 「出ますよ。笑門(次の劇団名)にこき使われます(笑)」 

その言い方と、笑顔。

ふふふ、ってなって、だからね、要らんことまで言うてもた。

「前に居た劇団のときから観てました(笑)」

笑ってた。
 
「古いね、フフフ」
 
このフフフ! フフフが! なんやろうなあ! 


( あおい竜也座長   一竜座
(再来月からは天昇屋心竜座長を中心とした「劇団笑門」に)
 2023.5・17@尼崎 芝居小屋・遊楽館   昼の部&イブニングショー
 ゲスト・幸の丞 & 新海輝龍(ともにフリー))


8年前(笑)同じ尼崎の、別の、今は名前をかえた劇場にて。


この日、ゲストお二人のうち、おひとりはこりゃまた懐かしい名前でした。
って、わたしが観ていないだけで最近は心強いゲストや助っ人としてご活躍のよう。

客席のアイドル、永遠のフェアリー。〝ゆきさま〟こと幸の丞さん。

10年、15年前とかと、ぜんぜん変わらず、歳をとらない、まさに妖精! 
いや、座長のあおいさんが中条きよしなら、
ゆきさま、は、さしづめ京本政樹やな(笑)

イブニング、プチ紙吹雪舞踊が観られた。
「紙吹雪!」と伝えたら「派手なんじゃなくてすみません」と言われたけど。

わたしの初「ゆきさま」は、
劇団むらさき(花組むらさきになる前)で、
着物にクマのプーさんをいっぱいつけて桑田佳祐の『明日晴れるかな』で踊り、紙吹雪をまき散らしていた舞踊でした。ふふふ。

◆◆◆
以下は、すこしだけ自己紹介 。
よろしければお付き合い下さい。
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構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。

大衆芸能、
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、各種文章やキャッチコピーなども、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

演劇鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)などの鑑賞と、学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)経験などを経て、
某劇団の音楽監督、亡き関西の喜劇作家、大阪を愛するエッセイストなどに師事したり。
からの大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

舞台と本と、やはり劇場と人間と、あ、酒も愛し、人間をひたすら書いてきて、書いています。

lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。

その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中です。
各種フォローもよろこびます。

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あ、5月1日から東京・湯島の本屋「出発点」で2箱古本屋も、やってます。

詳しいプロフィールや経歴やご挨拶は以下のBlogのトップページから。
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関東の出版社・旅と思索社様のウェブマガジン「tabistory」様では2種類の連載中。

酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在17話)と
大事な場所の話「Home」(現在、番外編を入れて4話)

旅芝居・大衆演劇関係でも、各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、YouTubeちゃんねるで過去映像が公開中です。
こちらのバックナンバーも、さきほどの「出発点」さんに置いてます。

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