僕の好きな先生①~「好きの力」と007と「アホ」~

先週土曜日。
恩師(のひとり)がABCの朝の番組「おはよう朝日土曜日です」に生出演をしていました。
テーマは「今だからこそおうちで観たい映画」の紹介です。
「年間250本の映画を観る」と紹介されていた先生は
朝からハイテンションで映画評論を語り、笑いもとりまくってご機嫌さんでした。
冒頭から女性のアナウンサーに「みんな大好き●●さんでーす」と紹介されるなり
「会いたかったよ~」、コメンテーターの漫才師の2人「……?!」。
さらに大好きな『007』シリーズを紹介する際にはノリノリで
「僕ねえ!中学生の頃007になりたかったんですよ!
強いしお酒の飲み方もカッコいいし女の人にモテるし!
でもねこんなんになってしまいました!あはははは(笑)」、
漫才師の2人「ざ、残念ですねえ(笑)」。ちょっと困ってるやん。優しいなこの人ら(笑)
でもね、観ていて私は嬉しくなってしまいました。
「この人に学んで、育ててもろてよかったなあ」
そして、思いました。「アホやなあ。格好ええなあ。あーめっちゃ格好ええなあ」と。

専門分野は映画とお酒とケルト文化。
元読売新聞の文化部の記者で、今はエッセイスト(と、オヤジバンドのギター&ボーカル?笑)です。
学生時代のゼミの先生であり、私の文章の師匠のひとりです。
いつもニコニコ、めっちゃお喋りでめっちゃお酒好きな大阪のおっちゃんです。
おっちゃんとはいえ、
ケルト文化をLifeworkとしており、お酒と映画と大阪文化を専門とし、
……というのだからお洒落ですよ。あちこちのお洒落なバーにも出入りする粋人ですよ。
映画に出てくるお酒をまとめた小粋なエッセイなんかも出版してるねんから。
数年前、天満にあるめっちゃお洒落なバーに連れてってもろてびっくりしてんから。
でもバーで先生はニコニコ話していました。
「ディーンフジオカってさ!あれな!なんであんなにおばちゃんらのアイドルなんやろな!イケメンやからかな?!」
……なんの話!?舌好調!!

ここ数年もちょっと相談などがあり何度かサシで呑みに行かせてもらいました。
ある時、約束の大阪・天満で待ち合わせたら、
先生は「イタリアンにしょー。ええとこあるねん」と言うて下さったのに
出会うなり「今日寒いやんかー。熱燗呑みたいねん。熱燗呑みたいから焼鳥でもいい?!」
お洒落な焼鳥屋に入るなりバイトのおねえさんに
「任せるわ!あなたの美味しいと思うのん持って来て」面倒くさいなー!(笑)
その後、私がここ数年大好きになった某ジャンルの劇場の話をとても興味を持って聞いて下さった。
私は喜んで話しながらも「さすが記者、さすが話の訊き方引き出し方すごいなあ(惚れ惚れ)」と思っていた。
すると「行こ。今から行こ」。まさかの恩師と共に某ジャンルの劇場へ!
その後Facebookに書いておられました。
「昨夜はmomoさんと刺激的な夜を過ごしました。内容は内緒です」
ややこしいやん!(笑)

ゼミも独特でした。
毎回政治から街あるきから映画の感想から課題をもらって
原稿を書いてきて皆の前で読んで講評をもらうスタイルだったのですが
とても自由というか各自の個性をのばしてくれました。
論文を書くな、原稿を書け、「読んでもらえる文」を「誰にでもわかるように」と。
でもいつも褒めて下さった。
「momoさんはもうあかんとこないからわ。カラーがあるからな。おもろいわ。楽しみやわ」
そのかわり、あきらかに手をぬいたときはびっしり赤字を入れられましたが!(笑)
当時の私は劇団活動で忙しくて決して真面目なゼミ生ではなかったのに
全然嫌な顔もせず、「ほなゼミ全員でmomoさんの芝居観に行こ!その感想を課題にしよ!」という回までありました。
さらに当時就活をやりながらも嫌で迷いがあって「落語家になりたい」とか言っていたら、(※ちなみに私の卒論は上方落語と大阪文化です)「ええと思うで!」と笑顔で!
結局落語家にはならず喜劇作家の私塾に行くことにしたのですが、
それも「おもろい!君らしい!」と喜んで下さり、今も、ちょくちょく会うて下さいます。

ずっと私たちに教えて下さった言葉があります。
「好きの力」
なにかを好きと思って行動する力は強い、その力こそが仕事や生きる上での原動力や、と。
そしていつも私を「momoさんは「好きの力」がめっちゃある」と褒めて下さいました。
演劇、舞台、書くこと、大阪(笑)、「人間が好きやねんな」って。
同期は優秀な秀才ばかりで今も新聞記者になったりした子も居ます。
そんな中で私はたぶん当時も今もカタギではありません。
フリーの構成作家・ライター、いろんな雑文業、もっか、原稿企画2本向き合い中。
でも、気にかけて下さります。ありがたいなあ。もっと精進せねばなあ。

そういえば、先生のゼミはとても人気で、
入学ならぬ入ゼミする際の選考試験も結構難関(?)でした。
選考試験がわりの作文は「私の好きな言葉とその理由」、
いや、「人生の支えとなっている言葉とその理由」やったかな。
皆さんなら何を選ぶでしょうか?
なんとまあ、ありがたいことにめでたく入ゼミ出来た訳ですが。
講評会の際、同期はそれぞれとても格好いい言葉を書いていて私は恥ずかしくなりました。
ちゃんと覚えてないねんけど(笑)「実るほど稲穂は首を垂れる」みたいのとかさ。
順番に先生が発表して講評してゆく中、わー!もー!ぎゃー!
いや、もう提出してるし合格(?)してるねんから今更遅いねんけどさ。
私が選んで書いた言葉?
それは一言、「アホ」。
いや、ちょっと待って。引かんとって。
真剣に書いてんて。ウケ狙いちゃうで。
本気でこれを選んでん。
あ、いや、その時も公演前で劇団超忙しかったんやけどさ!
大阪弁で「アホ」は他人をけなす言葉ではないのです。
いや、その意味もないことないねん、けなす時もあるで。
でも、心許している相手や大事な相手に対して、
その人たちに向けての、心の距離近い愛情みたいなもんもこもっている言葉やと思うねん。
このニュアンス、わかっていただけるでしょうか。
例えば、オカン(母親)が子供に言うときの「アホ!」。
近しい仲間内で言う、「お前アホやろ(笑)」「あいつアホやなー(笑)」
男女の恋愛とかでも、本音で返すのが恥ずかしいときに、
女性でも男性でも、ちょっと照れて「……アホ」みたいのとか、
わかっていただけるとめちゃ嬉しいのですが。
当時所属していた劇団(文化系ちゃうで体育会系やで。このこともまた書きたいね)では
いかつい男の先輩らがよぉ言うてました。
「もっとアホにならなあかんやろ!このアホ!(笑)」意味わからん(笑)
そんないろんな意味のこもった「アホ」、
愛とエールとはだかんぼな言葉として「アホ」を取り上げて書いたら、
めっちゃ褒めて下さった。稲穂とえらい違いやのにな(笑)

そんなこんなで、先週の「おは朝」を観ていた私は
笑いながらもじーんとしてしまいました。
「僕らのことはね、ダブルオーセブンちゃいますねん。
ゼロゼロセブン言うててん、この方が馴染みがあるねん。
僕ねえ、007になりたかったんですよ」
朝8時前からハイテンションで!(笑)
あー、なんだか嬉しくあったかくなりました、笑いながら。
私ももう若いとは言えない。
だからついついカッコつけたり、かっこよさげに書いたりのがええんかな、とかなったりする。
尊敬されるような、「おお」って言われるような文と人に、とか、
ちょいちょいなってまいそうになるねん、バカだから(笑)
でも、ああ、「好きの力」で、アホアホpowerでええやん、それやん!って。
それをわかって下さる方、喜んでくださる方、楽しみに、楽しんで下さる方が居て、
書き屋としても人としてもまだまだやけど、ありがたく、しあわせやん、って。
改めてなんだか思わせていただいたのです。
格好付けることも格好いい。
でもそれをわかっていながら「らしい自分」のまま、
決して格好つけず、笑いにまぶして(笑いばっかり(?!))で、
人になにかを伝えることって、格好いいなあ。
007にはなれなかったし、なれへんし、ならんけど、でもそんな今が格好いい。
私もこのまま(?!)楽しく楽しんで参りたいです。
ちなみに……先生は「おもろいおっちゃん」ではありますが、
ほんまはめっちゃ厳しいし、
カタい文書いたら痺れるくらい〝007〟なことも私は知っています。
あの当時もいろんなことを笑ってあたたかく見守ってくれたけど、
締め切りを守らない人に対してだけは別人のような鬼の形相で怒ってたのも覚えてる。
うん、やっぱり格好ええ。
さて、私も、さらにさらに、書いて参りましょう。
いつも読んで頂いている皆への感謝と喜びを胸に。
あーLifeworkな原稿企画2本、応援していただいているねんから、進めないとー!


※※※
前の記事とその前の記事で、
偶然なのですが「素敵な上司と出会って人生変わったキラキラ」みたいな本に出会い、
楽しくて。ふと、己の恩師たちのことを思い出し、書いておこうかなと思いました。
子供の頃から書くことが好きで、常にいろんなもんを書いてきた私ですが、
物心ついてから3人(かな)の言葉や文章の師匠と呼べる人がいます。
高校生時代に出会った、某今や日本を代表する劇団で「音楽役者」をやっていた「日本のフレディ・マーキュリー」な役者さん。
今日ここに書いた、大学時代の恩師である大阪のおっちゃんで素敵すぎるエッセイストな先生。
大学卒業後、軽い気持ちで行ったら、誰よりかわいがってくれた
吉本新喜劇・岡八郎&花紀京な黄金時代に台本や他のバラエティ番組を書きまくり、
それでいながら松竹新喜劇・藤山寛美さんの台本も書かれていた喜劇作家のジジー(失礼)。
己のことを書いてもおもろないんちゃうかと思いますが、
この筋トレでありながら癒しの場(?)なnoteにもまた書いていこかなと思います。
己のためでもありますが、誰かに何か伝わったり楽しんでいただけたら、
嬉しくありがたいです。読んで下さり、ありがとう。

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