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「虎」に想う/旅役者って、旅芝居って

旅芝居・大衆演劇が「嫌だなあ」と思うようになったのはいつからだろう。
純粋になにも余計なことを考えずに観ていたいられていたのはいつまでだろう。
最近、いろんなきっかけもあり、よく考えていた。
本当に肚の底から「良いなあ」と思って観ていたのは
観始めて3年もなかったんじゃないかという考えに本気で落ち着いたりもした。

どうしようもない世界だと思う。なぜなら「生きる事そのもの」だから。

我ながらなんてまあ漠然とした言い方だろう。
「生きる事そのもの・そのこと」  でもそうとしか言いようがない。

だから私は自分の理想と言う綺麗事フィルターで濾過したことを書けない書かない。無責任なような気がして。

でもこのスタンスで居ると妙にムキになって反発してこられる方々も居る。
「あなたは私たちとは(観方や観る目が)違うので(だから接しませんし尊敬もしません)」
(しかし、どうしてどうしたらこんな失礼なことが言えるのだろう)
「あなたの考え方だと、きたないもの、極端な話、汚物や体液までみていると?」
(誇張ではなく血や涙やをみてきた(みせられてきた)のだが)

濾過して書かない書けない己の力不足だろう。うん。とはいえ、やはり、それはしたくない、しない。

「生きる事そのもの・こと」
だから客席の皆が魅了され、嫌になったりしても、皆が離れられなくなるのだと思う。
勿論、すべての芸能や人の前に立つ商売(というか普通の人間同士でも)で言えることだ。
でも、旅芝居の場合、顕著に、濃く!!  思う。

……という長い前置きをして。

先日、劇場予定表ならぬ告知Twitterを見て足を運んだ。

虎。

「肩書き」だ。正式には「東京大衆演劇協会 演劇部長 虎」、「林友廣」。

旅芝居を観始めた方に訊かれたことがある。
「あの人は誰なんですか」「虎、ってなんですか」 
元「劇団ママ」、若水照代の息子であり、元「劇団虎」、座長。寅年。

現在のベテラン勢には彼と同じ時代競い合った座長らも多くおり、よく当時の話を聞いた。
中には「悪友だった」とか「昔喧嘩した」という声もなどあった。
当時、そのうちのひとりに、初めて彼を目にした際、伝えた。
「虎! 虎、って感じだった、アイアム虎!!」
面白がって(何年かぶりかに)ご本人に電話をして伝えてくれた。
「アイアム虎、って言ってるよ」
電話の向こうの本人が爆笑する声は今も忘れられない。
もっともっと上のベテラン世代に色々なここには書けないことも聞いてきた。書かないけど。

肩書「虎」になってから幾度か目にしてきた。
いつも着物に手ぬぐいに傘に虎、虎虎虎。俺の虎を観ろ!! 俺を観ろ!!
あの引力故に客席の好き嫌いはハッキリしたりもする。
私のまわりの「推し」が居る友人たちの中にもハッキリと嫌悪感をあらわす者も少なくない。

でも私はね、いつも、笑ってしまっていた、しまうのだ。
決してばかにしての笑いじゃない。
うれし笑い? いや、それもないとは言えないかもしれない。
でも、たぶんそうじゃなくて、いや、それだけじゃなくて。
笑うしかないというか、すべてを越えて、なんかもう、笑ってしまうというか。
言葉にして説明するととても曖昧だが、超漠然とした言い方しかできない。

「あー、もぉ、生きてるな。生きてるって、ええな」
「どうしようもねーな、でも、だからそれでも、ほんともぅ、でも、ええな、もー、ほんと全く、でも、でもでも」

彼の舞台に。
彼の居る、生きてきた生きている、そして「部長」「虎」してるこの舞台世界に。
いや、この旅芝居という舞台世界、生きている世界に。

この「どうしようもない」の中には許せない許してはいけないこともある。
業界や、世間や世界やのこと、人が人らしく生きるはずべきのこと。
「絶対に」見て見ぬふりをしてはいけないしないことだって多い。
そして私はそれを本当にみてみぬふりや濾過はしない、声を上げる、もっと。
とは、2年前の夏に特に思い、
さらに先月、もうひとつの大事な世界でいろんなことを学ばせていただいて、改めて思ったこと。

でも、それでも。それでもでもあかんけど、だから、でも。
という、大きな大きな葛藤と、まだ悩みと、己や世界と向き合う決心と、進む気持ちと、の延々繰り返しをしながら……。

芝居。登場をいまかいまかと待った。
ストーリーどうこうよりも「かたち」「型」大事みたいなゆるい芝居だった。おい、まだか。
出た。中盤、幕が閉まる前に、ええ感じのタイミングで、屋形船の戸があき、登場。
キマッた形(恰好)と顔で。じゃーん!! ……「うわー!」キマった!

舞踊。驚いた。
誰か歌手にカバーで歌ってもらって録音したのだろう。
旅役者たちがこぞって踊るあの曲のオリジナル・特別・虎仕様Ver,だった。
K1のリングコールみたいなプロレスのリングコールみたいなのと同時に幕が開く。
頭にはクイーンの『We will rock you』の冒頭のような「ズンズンチャッ」を入れて、最後には特別歌詞付。
舞台にはご丁寧にセットまで組まれた。
これでもかとばかりに悠々とセットを使っての俺songのぎらぎら舞踊。
さらに公演中の座長と相舞踊、副座長の際は歌で共演、
3本の出番と、ラストショーにも勿論出演、
またまたオリジナル版の唄で、座員率いてセンターでカッ! キメ!!
「虎」!! 今日は虎の日! タイガーday‼

目が離せないのだ。あの悪、あ、間違った、アクに、毒に、毒気に。
すべてが、すべては舞台姿から滲むのだ。
例え、みたくなくとも、ひとも、こんなに、これほどまでに、
生きる事、生きてきて、考えてきたこと、生き様(古館かお前は)が。
体と心、が、すべて、今の舞台にあらわれる。唯一無二の、「私(俺)」の舞台。
そう、この舞台は、今この瞬間お客さんいえあなたであり私の前に居るのは「俺」。
その「私(俺)」のにおいに、だから、人々は、皆は、魅了される。
客席のそれぞれの「私たち」のにおいたちに。
辟易としたり、吐き気がしたりすら、する。でも、それでも。

やはり私は(は)ただ綺麗だけで他の人には言わない、薦められないし薦めない。でも。
それでも完全にこの世界から抜けていないのは。
「それでも人間を信じたい」、なんとまあ綺麗事だな、信じられないものだと思っている訳だが。
って、そんなことはどうでもいい私の考えだ。
仕事だから。書き残したい書き続けたいことがあるから。に加えて、意地。
そんな私の能書きはどうでもいい。どうでもよくないけど、いい。

そうだけど、そうじゃない、それだけじゃない。

人間。人間。人間、の、におい。
惹かれてならないのは、きっと、絶対、私だけじゃないだろう。
陶酔と吐き気、恍惚と生きることそのもの。
生きること、生きている様。例え不格好だとしてももがきながら、酔いながら。
ギリギリで独特の美学と、生きていかねばならない切なさと、孤独、両の間で、もがきながら。
きっとそれが、旅芝居であり、旅役者ではないか。良い悪いではない、そんな簡単なことじゃあ、ない。
そんな世界で、故にかくも歪になり、歪なまま、独特の進化をしてきた旅芝居の世界の、旅役者の、これからは……。
という話は、先日、旅芝居ジャーナリストの大大先輩とも話していたのだが。

でもそれでも、もがきながら、模索しながら、。我々皆も客席から一緒に、時代と共に、未来へ。

替え歌の最後の歌詞は泣けた。
これから目にする人の楽しみを奪うのは嫌だから書かない。
でも、笑いながら、じんとした。
ああ役者、旅役者って、業、それでも純。―虎。人間。

しかしなんなんですかね、虎って!

以前、背中に「虎劇場」ってデカデカと書かれた着物で、踊ったり、
いわんや、相舞踊していたりしてたのを観た。なんだよ虎劇場って!

「あー、もぉ、生きてるな。生きてるって、ええな」
「どうしようもねーな、でも、だからそれでも、ほんともぅ、でも、ええな、もー、ほんと全く、でも、でもでも」

ふふふ。

(でもどうぞどうぞどんな皆も、皆、皆、お体にはほんと注意して、大事にして、ずっとずっと居てください、居ましょう、ほんとに、ね!)

(劇団美鳳ゲスト、虎、林友廣演劇部長・2022・4・24@篠原演芸場)

以下、関連する過去記事や、ここに至った過去記事オマケー。

■omake①■
これと(違うようで同じことを言いたい)過去記事かもしれません。
結局わたしはずっといつもこういう観方(笑)

■omake②■
改めて。(これだけじゃ、ここだけじゃ、ないけどね)

■omake③■
で、過去の虎さま記事。結局わしはずっといつもこういう観方(ふたたび、笑)

■omake④■
この曲でしたよ。ははは。

と、虎、のお弟子さん……で、今の若い役者たちに影響をあたえたという
あの関東の役者さんがこの曲を踊った際のこと。


◆◆◆
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大阪の物書き、中村桃子です。
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/
大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。


ブログのトップページに簡単な経歴やこれまでの仕事など書いております。連絡先も。
お仕事依頼は勿論大歓迎、以外のご連絡も大歓迎です。

現在、ウェブマガジン「tabistory」様にて女2人の酒場巡りを連載中。
現在第10回。11回~12回もうすぐ!

そして、あたらしい連載「Home」。皆の大事な場所についての文章、も、ぼちぼちと。

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、
各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。あ、小道具の文とかも(笑)やってました。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中(貴重映像ばかり)。

……と、New。今年からはYouTube絡みのお仕事にもかかわっております(演劇系とかじゃないけど)。ふふふ。

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改めて今後ともどうぞよろしくお願いします。ありがとう。ラブ。

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