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【人物図鑑】宝船桂帆柱(3)十遍舎一九×歌川広重


六親ろくしん和合わがう

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

六親和合ろくしんわがう
よろづ代の よはひをともに ちぎらばや ふろうふしある竹のそのうに

※ 「六親ろくしん」は、最も身近な六種の親族のこと。父・母・兄・弟・妻・子、父・子・兄・弟・夫・婦など。
※ 「ふろうふしある」は、不老不死ふろうふしふしある竹の掛詞になっています。
※ 「竹のそのう」は、たけ園生そのう


隠居いんきよ祖父ぢゝ 隠居いんきよ祖母ばゝ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

隠居いんきよ祖父ぢゝ
おひぬれば したがふのならひにて 家につえつく よはひひめでたき

隠居いんきよ祖母ばゝ
とゞたけは かせぎて いまの 世話せわをもたなへ あげ気楽きらく


主人ていしゆ つま

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

主人ていしゆ
繁昌はんじやうおやひかりぞ いまとなりて つぶりはげし にぞしらるゝ

つま
何事なにごとも みさほたゞして つとめなば たからやまの かみといはれん


嫡子そうりやう 次男じなん

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

嫡子そうりやう
孝行かう/\商売しやうばい として かせぎなば すゑは黄金こがねの かまど 将軍しやうぐん

次男じなん
でるくひとなりて うたれなすなをなる にはいたゞく 大黒だいこくのつち 

※ 「かまど 将軍しやうぐん」は、かまど 将軍しょうぐん 。家庭のなかだけで威張る一家の主人のこと。


三男さんなん 末子ばつし

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

三男さんなん
柔和にうわなる こころもつが おくぞ まけるをかちと 修行しゆぎやう せよ

末子ばつし
尻軽しりかるはたらけ めしはくひ次第しだい 人からぜんを すへのたのしみ

※ 「まけるをかち」は、負けるを勝ち。
※ 「尻軽しりかる」は、ここでは身軽にという意味合い。


あね いもと

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

あね
あはれみの あるこそ人の かゞみとて そのとくをてらす 愛敬あいきやう

いもと
夜目よめ遠目とうめ かさのうちこそ ゆかしけれ うへ見ぬ心 やさしかりせば

※ 「あはれみ」は、あわれみ。かわいそうに思う心、慈悲。
※ 「夜目よめ遠目とうめかさのうち」は、夜目よめ遠目とうめかさうちという諺。夜見るとき、遠くから見るとき、笠に隠れた顔の一部をのぞいて見るときは、はっきりと見えないので実際よりも美しく見えるという意味。


せう よめ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

せう
まひのぼる とてもそのを つくしまば とびたかうむ すのはんじやう

よめ
難所なんじよをも そのがばすえは よかるべし おんなみちの とうげこすまで

※ 「すのはんじやう」は、すえ繁昌はんじょう。行く末長く栄えること。 末繁盛すえはんじょう


隠居いんきよ番頭ばんとう 支配人しはいにん

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

隠居いんきよ番頭ばんとう
《しう》の |●すね かぢりし おんいまにしる 入歯いればをしても くひかねぬ

支配人しはいにん
いしうへ三年さんねん どこか辛抱しんばうは たゞ一金に いまの番頭ばんとう


帳場てうば手代てだい 掛方かけかた

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

帳場てうば手代てだい
奉公ほうこうしうの 恩義おんぎとさしひけば わがに残る す衛のさいは

掛方かけかた
金銀きんぎんも ほうこうにんは 見たばかり 辛抱しんぼうをして 見せるとなれ

※ 「す衛」は、すえ
※ 「ほうこうにん」は、奉公人。


売方うりかた 腰元こしもと

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

売方うりかた
うれやうれ そのとくは はかねとも そんにはならぬ す衛のりつしん

腰元こしもと
青柳あをやぎの こしもとなれば そのいへの かぜになびきて 奉公ほうこうをせよ

※ 「す衛のりつしん」は、すえ立身りっしん
※ 「いへのかぜ」は、やなぎかぜいえかぜ家風かふう)の掛詞になっています。


賄女まかなひ 丁稚でつち

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

賄女まかなひ
身にくもり かすみなければ 親方おやかたの|眼鏡《めが
ね》ちがはず 出世しゆつせをやせん

丁稚でつち
しからるゝ たけはそのくすりにて 今に功能こうのう 有は 掛合かけあい


乳母うば 子守こもり

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

乳母うば
持手もつてからこぼるのたとへ 金持かねもちを 大切たいせつにすれば そんなし

子守こもり
ひとを守するゆへに おのが身も こめしらず そだ生長おいさき

※ 「持手もつてからこぼる」は、ある手からこぼれるという諺のことと思われます。お金持ちには、お金があり余るほどあるから自然とまわりにお金がこぼれ落ちる(施す気持ちがなくても、まわりの人々に恩恵を施している)という意味。


中働なかばたらき 物縫おはり

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

中働なかばたらき
わかきうちは ものにうかるゝ ならひなれ 目をさましてよ ちや奉公ほうこう

物縫おはり
いとふなよ のため かたはりしごと 人にもまるゝ うちの辛抱しんぼう


下女げぢよ 下男げなん

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

下女げぢよ
傍輩ほうばいねこ杓子しやくしもへだてなく 笑顔ゑがほわするが おたふくかみ

下男げなん
両足りやうあし を 擦子すりこ木として はたらかば かどのなきとて 衆人しゆにん愛敬あいけう

※ 「傍輩ほうばい」は、同じ主君や家などに仕える同僚のこと。または、仲間、友達。
※ 「衆人しゆにん愛敬あいけう」は、多くの人に愛され尊敬されること。


料理人りやうりにん 掛人かゝりど

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

料理人りやうりにん
包丁ほうてうも をもきかして つとめなば やがてそのみも 仕出しだしりやうりぞ

掛人かゝりど
闇雲やみくもに はたらけ いつかひとに 掛人かゝりどくういつぶしは

※ 「掛人かゝりど」は、他人の家に世話になっている人。居候いそうろう


按摩あんま 髪結かみゆひ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

按摩あんま
正直せうじきをつえとたのみて すぎせば よくにのなき 人《ひと》に|勝まさらん

髪結かみゆひ
一筋ひとすじに 家業かげうつとめよ 元結もとゆひのしまりよければ すへ安楽あんらく


米舂こめつき 日雇ひより

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

米舂こめつき
ゆくすへは 出世しゆつせおもはゞ からうすの にはたくばかりととめ

日雇ひより
日やとひの わづかの銭《ぜに》も つもりなば |太平楽たいへいらくな 節季せつき物前ものまへ


長寿てうじゆ人物じんぶつせん

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『宝船桂帆柱2編4巻

長寿てうじゆ人物じんぶつせん
五雜組ござつそいはく 人壽じんじゆさいすぎざるは すうの終おはり也 ゆへに 百世をすぎしせざるものを 失帰しつきばけものといふ 

我朝わがてう 武内たけのうち 宿祢すくねは 三百十余歳よさい 伶人れいじん尾張おはり濱主はまぬしは 百十三にして 舞楽ぶがくそうし そう義円ぎゑんは 百十四にてぐはよくす 道守臣みちもりのおんど 東人あづまんど百廿二さい 聡明そうめい 少壮しやうそう なるがごとし 桓武くわんむてい衣服ゐふくたまふ その 失帰しつきばけものしやうするもの とぼしからず めでたし/\

※ 「五雜組ござつそ」は、『五雑組ござっそ』。明代末期の謝肇淛しやちようせつによる随筆集。


筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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