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蘭陵王(著:田中芳樹)【我、読書紹介にて天下を語らん。天上天下、知る者なし!請う!比べられしこと望まざる万老、来たりてこの書を取らん!】

田中芳樹先生は、銀河英雄伝説の作者として有名になった作者ですが、
むしろ中国歴史小説の方が本業に近いらしく、

そんな中国歴史小説の一冊。長編一冊読切。

まず蘭陵王というのは、雅楽で使われたりする古典とかで、
元ネタは中国の南北朝時代末期の話です。

400年に及ぶ長い戦乱が終わろうとしていた時代。
経緯は省いて、中国の北半分は、東に北斉、西に北周。
このふたつの国が常に敵対状態で対立していました。
蘭陵王は、東の国、北斉の皇族の将軍。
極めて優秀な名将だったのみならず、美しい男性で、それがため戦場に出るときは常に仮面をつけたという。
北斉は蘭陵王の軍事的才能で、国を保っていたのですが、
あまりにも優秀すぎて反乱を疑われ、罪がないのに粛正される。
その後、その国は滅び、天下はその敵側の国、北周によって統一されたという。

大雑把に言って、こういう話です。

もうちょっと細かく。
背景についてですが、南北朝時代でも後半は、
北魏と呼ばれる国が北半分を統一していました。
南北統一まであと一歩な気がしますが、北魏はしばらく繁栄した後、
内戦を起こし、東西に分裂、
しかも東西それぞれが簒奪され王家が交代します。
東の国、高歓という人物が簒奪したこの国は、
この人は優秀なんだけど、酒乱なのが玉に傷。
どころか、この人の酒乱癖は子孫の歴代皇帝に受け継がれ、だいたい酒に酔った勢いで家臣を殺したり、国民を虐殺したりして、民心が離れるという繰り返しになります。
救いようのない王朝ですが、
蘭陵王だけ皇族でありながら善良な人という設定。
心を痛めつつもできることをしようと思うのですが。時勢利にあらず。
悲劇的な最後を迎えるという悲劇譚です。

ちょっと細かく書きました。

というわけで悲劇の人、蘭陵王の物語でして、
つまらんという方にはつまらないと思います。
(いちおう銀英伝の作者の筆致なので、戦場の作戦の描写なども出てきます。蘭陵王の戦いぶりをみてヤン提督を偲ぶのもアリかと)

その後、北斉を滅ぼした北周も、隋によって簒奪され、
隋によって天下統一がされますが、それは後日の話。

ただ。
こういうマイナーな時代背景を、知るために読むというのが、面白くて。
時代感があるという点では優れた話だと思います。
それぞれの時代背景を舞台にした小説というのも、有名な時代ならたくさんありますが、この時代はほとんどないです。
まあ、一冊くらいあってもいいのでは。

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