小説 「僕と彼らの裏話」 12
12.「おかえりなさい」 先生が再び【自由】になる日。僕は運転手を願い出た。
アトリエに半日篭っても「記憶が吹っ飛ぶ」ような先生は、留置場に20日間以上も居れば、もはや「別人」だった。
若い頃の軟禁当時の記憶による症状が強く出ているようで、僕や悠介さんのことも、まったく思い出せないようだった。それでも、悠介さんは「自分の家に帰れば、そのうち思い出すと思う」として、比較的冷静だった。
彼も、僕も、先生に「誰だ貴様!?」と言われることには慣れている。それが、一過性のものであ