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2021年12月23日「小説に対する期待」

あっさりと『郵便配達は二度ベルを鳴らす』を読み終わった。

この本を読む前に、予備知識として仕入れていたのは「郵便配達員は出てこない」ということだけ。確かに出てこなかった。

ギリシャ人の妻が、本当はどういう人だったのか、私はつかめないままで読了してしまった。語られる通りの女性なのか、それとも違うのか。変に勘繰りすぎて物語を読んでいたのか、それとも不思議な魅力を持ち合わせた女性として描かれていたのか、私には分からなかった。

「犯罪小説」として紹介されている本なのだけど、私にはそれも違うような気がして、確かに「犯罪」は行われるんだけど、でも何か違うような気がして、でもそれを言葉で説明できない自分がもどかしいのだった。

ちなみにAmazonには「ノワール」の文字があった。ノワールって何よ?となり検索したら「暗黒小説」と出た。なるほど。人間の悪意を描いた作品ということのようだけど、悪意なのか、そうなのか、という思いのほうが強い。

確かに、殺人計画を立てて、ギリシャ人を亡きものにしようとすることは、悪意なのかもしれない。けれど何故か、その悪意を重く感じない自分がいる。現実社会の毒のほうがもっと強いと、私が思っている証拠かもしれない。

現実と小説の世界を比べたらダメなんだろうし、小説のほうが上である必要も全然ないのだけど、私の中で、小説というのは現実以上の何かがあるはず、といった期待があったのかもしれない。

そういった思いは年々減っていて、現実世界のほうが大変である、という事実も理解しているつもり。それでも私は、仮想世界に驚きと発見を、性懲りもなく求めているのかもしれない。

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