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過去の傷も含めて自分なんだ

失踪ものに弱い。ものすごく弱い。
何の話?と思われたらアレだけど、近しい人が失踪して残された人がどのような生活を送るのか、そういった物語に弱いというそれだけの話だったりする。

最近読み終わった本に『とめどなく囁く』があるのだけど、これも元夫が行方不明になる話ということで手に取った。

元夫が行方不明になっても主人公には生活があって、その生活の中で現夫に出会うのだけど、その現夫は30歳も年上で、しかも現夫には自分と同い年の娘がいる。過去も現在もなんだか色んなことがある主人公の生活を眺めながら、元夫は生きているのか死んでいるのか、それを追求していく様はとても興味深くてこちらまでハラハラしながら展開を見守った。


そういえば以前、恋人が行方不明になったという話の本も読んだな~と思い出し、続巻があったのでそちらも現在読み進めているところ。

こちらは主なテーマが派遣社員として働く主人公の奮闘劇って感じなので、失踪ものとはちょっと違うし、続巻も失踪とは関係がない話になるのだけど、主人公・あすみの働き方、お金に対する考え方の成長具合とか、読んでいてとても面白くて3巻まで一気に読んでいる。


事故にしても自発的な失踪にしても、残された人たちの衝撃は強く、大きな傷となって一生残るのかもしれないと本を読みながら思う。生活は待ってはくれないので、残された側はそれでも生きていくけれど、時間とともに傷は癒えるのだろうと今までは思っていて、けれど実際には傷は傷として、永遠に残るものであり、その傷も含めた自分と生きていくしかないんじゃないかと思うようになった。

過去は無かったことにはならないので、その過去も含めた自分とともに生きるしかない。それは考えてみれば当たり前なのだけど、傷は必ず癒えるとか、過去は過去として振り返らないとか、そういったことが書いてある本を読んできた私は、過去を振り返らずに前だけを見ることが正しいのかと思っていた時期があった。

傷ができる前の自分には戻ることができないという事実が、なぜか自分を安心させた。以前の自分に戻れないことを、自分のせいにする必要はない。過去の自分と今の自分は、別の人間なんだから、過去の自分のように振る舞えなくても自分を責めたりしなくていい。そう思えたことでラクになれた。

やはり読書はいい。本を読めば読むほど、自分がラクになるきっかけをもらっている。ありがたい。

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