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「暴力と不平等の人類史-戦争、革命、崩壊、疫病 -」と「人類の歴史とAIの未来」を読み終え、司馬遼太郎に想いを馳せる

「暴力と不平等の人類史-戦争、革命、崩壊、疫病
-」を読み終えた。

5000円以上するので、コロナのクラスター分析に関係する情報が書いてあるかも、というこじつけで、会社の経費で購入した。

本の帯には、こう書かれている。

核戦争なき
平等化は
ありえるのか?
平等は破壊のあとにやってくる。
第二次世界大戦後の日本 250万人戦死→トップ1%の富が9割落下[戦争]
毛沢東「大躍進」 4000万人以上死亡→ジニ係数の劇的改善[革命]
欧州のペスト 2000万人死亡→実質賃金が2倍以上に[疫病]・・・ほか多数

戦争 革命 崩壊 疫病

を著者は、平等化の四騎士と呼んでいる。不平等が是正する4代要素であり、真に統計学的に有意に是正させるなら、人類史上、唯一有効な手段らしい。たまたま、少し良くなることはあるものの、長いスパンで見ると、4代要素が勃発するまで、高水準まで推移するまで、不平等は拡大していくのが、これまでの人類史の法則らしい。

不平等の是正は、規模に比例する。統計学的に有意に是正させるなら、世界大戦級の規模の戦争じゃなくちゃいけないし、革命にしたって、レーニン、スターリン、毛沢東、ポルポト級である必要があるらしい。

582ページ+注釈・引用141ページの大作を、読み進め、嫌と言うほど、説得されていくうち…気が滅入ってしまった。

致命的に大規模な不幸の屍の上にしか、不平等の是正が起きたことがない史実を目の当たりにした。

不平等の是正は、一手段であり、
幸せになることが、真の目的である。

大規模の犠牲という不幸自体、本末転倒だか、そもそも、よくよく考えると、戦争、革命、崩壊においては、上位層が転落し下位層が増えることによって成り立つ平等化なので、幸福の総体は、減っているではないか。

幸福の観点では、論外である。

ここで、最終部、第7部、「不平等の再来と平等化の未来」の一部を引用する。

悲嘆を繰り返さないために
 歴史が未来を決めるわけではない。おそらく、現代の特性はまったく違う。遠い将来、それがわかる時がくるだろう。人類は今、技術的特異点(singularity)に向かってるかもしれない。
そこでは、あらゆる人間が融合し、世界規模で相互に接続された、肉体と機械のハイブリッドの超生命体となり、不平等の心配はなくなる。あるいは、逆に技術の進歩によって不平等が新たに極端なかたちで進み、生体メカトロニクス(電子機械工学)と遺伝子工学により強化されたエリートと、普通の人間に分かれて、後者は支配者の進化し続ける能力に永遠に引き離されていくのかもしれない。あるいは、そのどちらでもなく、人類は、今は、まだ想像もできないような帰結に向かっているのかもしれない。
 だか、それらはしょせんSFの世界の話だ。われわれはさしあたり、現在持っている頭脳と肉体と、それらが作り出した制度でやっていくしかない。それはつまり、将来の平等化見込みは薄いことを意味する。

不平等を許容するとして、果たして、より良い未来は、実現可能なのか。

AI革命、技術的特異点(singularity)の観点が出てきたところで、バイロン ・リース著の、「人類の歴史とAIの未来」を引用する。

11 重要な問い
所得不平等
 所得の不平等さについてはどうたろう?所得不平等の未来は、先ほどの3つの可能性全てで同じだ。AIロボットが全ての仕事を奪うにせよ、一部分だけ奪うにせよ、所得不平等の問題は拡張し続ける。
中略
 そもそも、所得不平等が本当に、低所得者層の所得の絶対値などよりも懸念すべきことなのだろうかと問うことも必要だ。技術によって以前よりも億万長者が出現しやすくなっていること自体は悪いことではないはずだ。低所得者層の所得が、2倍になる間に高所得者層の収入が3倍になれば、確かに不平等さは増すが、そう提案されたら低所得者層の人はこの提案を受け入れるのではないだろうか?私は、米国のGNPが上昇し続けているにもかかわらず国民所得の中央値が一定であることが本当の問題だと思っている。世界で最も裕福な人間の1人であるウォーレン・バフェットは、次のように表現している。
 「金持ちは非常にうまいことやっている。事業はうまくいき、利益率は過去最大だ。しかし、底辺の20%に入る2400万人の人々の最高年収は2万2000ドルだ。どうやれば得た富を人類全体で分け合えるのか、私たちはまだ知らない。」
 1つ良いニュースは、貧困と上がらない賃金という問題は、私たちがこれから突入しようとしている、劇的な経済成長を遂げる時代に入れば解決できるということだ。

不平等にスポットを当てるのはもうよそう。

一縷の希望、それは、

レイ・カーツワイルさんが唱えている技術的特異点(singularity)によって劇的な経済成長を遂げることで、所得の底上げ、低所得者層の所得の絶対値を増やすこと

だと思う。

それが、ひとりひとりの笑顔をふやす、真っ当で唯一の道なのかもしれない。

うん、AI・データサイエンス業界で働いている、意義を見いだせた気がする。

最後に戦争の話で終える。
司馬遼太郎の歴史小説が大好物で、ほぼ読破してしまったのだが、彼は20代前半で太平洋戦争に参戦している。

過去から遡り、「坂の上の雲」で、日露戦争、大正時代まで描いた。

次は昭和だ。いざ、太平洋戦争、ノモンハン事件を描こうとしたら、どうしても、書けない。

数多の屍の先にある、意義、希望の光が、どうしても、見出せなかったからだ。

第一次世界大戦、第二次世界大戦を経て、1970代くらいまで、世界規模で、圧倒的に、不平等は是正されていたらしい。

著者によると、国民総動員、太平洋戦争で、250万人戦死という、壊滅的な被害を受けた日本で、類を見ないほどの平等が、実現したのも、先祖の死のお陰である。

大局観で見るのと、ひとりひとりの人生に焦点をあて見るのでは、勝手が違う。

やはり、司馬遼太郎は、太平洋戦争、ノモンハン事件は、描けなかったと思うが、この仮説に、どう思い馳せるだろうか。

今ある我々の幸せを、我々自身の実力と努力で勝ち得たなど、なんと烏滸がましい謗りだ。

250万人という先祖の死の上になりたつ、我々が享受してきた平等に、深淵な敬意と感謝の念とともに、未来・次世代に対する責任を献じ得ない。

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