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映画や音楽のことについてのらりくらりと書いてます。

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    アルゼンチンロックの中心人物だったルイス・アルベルト・スピネッタの40年に渡るキャリアを、アルゼンチンの情勢と共に紐解く。

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    ジョアン・ジルベルトの全キャリアを年代とアルバムで切り分けて辿る。彼が何を見て何を目指したのか、同時代の流れも含めてルーツを遡っていくジョアンを知るためのガイド。 ※2020/2/1更新

記事一覧

【映画】憐れみの3章 Kinds of kindness/ヨルゴス・ランティモス

タイトル:憐れみの3章 Kinds of kindness 2024年 監督:ヨルゴス・ランティモス 前作「哀れなるものたち」の日本公開がことしだった事もあって、半年ちょっとでランティモ…

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6時間前
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【映画】アニエスvによるジェーンb Jane B. par Agnès V./アニエス・ヴァルダ

タイトル:アニエスvによるジェーンb Jane B. par Agnès V. 1988年 監督:アニエス・ヴァルダ ドキュメンタリーとフィクションが合わさった不思議な作品で、ジェーン・バー…

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2週間前
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【映画】ぼくのお日さま/奥山大史

タイトル:ぼくのお日さま 2024年 監督:奥山大史 シンプルなストーリーの中に三人の居場所が示されていて、それは真っさらな状態から作る場所であり、築き上げてきたものを…

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2週間前
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【映画】エイリアン ロムルス Alien Romulus/フェデ・アルヴァス

タイトル:エイリアン ロムルス Alien Romulus 2024年 監督:フェデ・アルヴァス 久しぶりにダラダラとエイリアン4を観た。ジャン・ピエール・ジュネらしい雰囲気とエグさが…

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2週間前
8

【映画】ナミビアの砂漠/山中瑤子

タイトル:ナミビアの砂漠 監督:山中瑤子 正直なところ山中監督の「あみこ」はうまく消化出来ず、この十年観た映画の中でも一番言葉にしづらい感覚があった印象が強く残っ…

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3週間前
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【映画】カンフーマスター Kung,Fu master!/アニエス・ヴァルダ

タイトル:カンフーマスター Kung,Fu master! 監督:アニエス・ヴァルダ いわゆるショタものと片付けてしまうのは忍びない。しかしながら倫理観を揺さぶりつつ、その衝動へ…

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3週間前
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【映画】ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選2024

昨年に続いてファスビンダーの作品三作の特集上映がル・シネマで開催。今回は自由の暴力、エフィ・ブリースト、リリー・マルレーンの三作で、70年代中盤のまだ20代の頃の作…

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3週間前
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【映画】Mommy マミー/二村真弘

タイトル:Mommy マミー 監督:二村真弘 1998年当時のメディアの過熱ぶりはよく覚えている。というのも個人的な事ではあるが、丁度ひと月前に恋人を事故で亡くた出来事があ…

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1か月前
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世界で一番好きな(のかもしれない)音楽⑬/Clairo「Charm」

・MOR化するUSインディシーン 2010年代のアメリカは好調な経済の下支えもあって(そこから現在はインフレが問題化しているが)、音楽と映画のインディシーンはこれまでにない…

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1か月前
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【映画】デビルクイーン A Rainha Diaba/アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ

タイトル:デビルクイーン A Rainha Diaba 1973年 監督:アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ キャンプ映画といえばそうなのかもしれないが、フレンチカルチャーからの…

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1か月前
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【映画】風が吹くとき When the wind brows/ジミー・T・ムラカミ

タイトル:風が吹くとき When the wind brows 監督:ジミー・T・ムラカミ レイモンド・ブリックスの名作「風が吹くとき」の映画化作品で、37年ぶりの上映となる。37年前の上…

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1か月前
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【映画】墓泥棒と失われた女神 La Chimera/アリーチェ・ロルヴァルケル

タイトル:墓泥棒と失われた女神 La Chimera 2023年 監督:アリーチェ・ロルヴァルケル 「幸福なラザロ」のアリーチェ・ロルヴァルケルの新作「墓泥棒と失われた女神」。登…

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2か月前
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【映画】違国日記/瀬田なつき

タイトル:違国日記 2024年 監督:瀬田なつき 全体のテンポ感の心地よさに浸る。なんだろう?あとあと一時間続いても苦にならないというか、むしろ終わってほしくない居心地…

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2か月前
8

【映画】Walk up/ホン・サンス

タイトル:Walk up 2022年 監督:ホン・サンス 相変わらずのハイペースで、日本未公開がまだ三作あるというこの意欲はどこから湧いてくるのだろう?ホン・サンス作品に毎度…

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3か月前
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【映画】アンゼルム”傷ついた世界”の芸術家 Anselm/ヴィム・ヴェンダース

タイトル:アンゼルム”傷ついた世界”の芸術家 Anselm 2023年 監督:ヴィム・ヴェンダース 先日、ポリタスを見ていて第二次大戦の出来事について、戦後日本が歴史に向き合…

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3か月前
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【映画】あんのこと/入江悠

タイトル:あんのこと 2024年 監督:入江悠 俳優陣の配役は中々良く、下手すると浮きがちな佐藤二朗や稲垣吾郎(「窓辺にて」など最近の俳優業は結構好き)がちゃんと役所に収…

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3か月前
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【映画】憐れみの3章 Kinds of kindness/ヨルゴス・ランティモス

タイトル:憐れみの3章 Kinds of kindness 2024年 監督:ヨルゴス・ランティモス 前作「哀れなるものたち」の日本公開がことしだった事もあって、半年ちょっとでランティモスの新作が公開される短いスパンは、もうやるの?とちょっと驚きだった。とはいっても2時間半の長尺のわりに、短編三作という小粒感は否めない。あまり期待せずにまあこんなもんかなという枠を大きく逸脱した作品ではなかったと思う。「哀れなるものたち」の作り込みに比べてしまうとという事でもあるのだけど。し

【映画】アニエスvによるジェーンb Jane B. par Agnès V./アニエス・ヴァルダ

タイトル:アニエスvによるジェーンb Jane B. par Agnès V. 1988年 監督:アニエス・ヴァルダ ドキュメンタリーとフィクションが合わさった不思議な作品で、ジェーン・バーキンの生い立ちやパーソナリティをベースに、様々な役柄の物語が挿入される。絵画を模した画作りはゴダールのパッション辺りを彷彿とさせるが、こちらはドラマというよりもアイコンとしてのジェーンを絵画的に映し出している。喜劇やスペインの踊り子、「カンフーマスター!」へと至るヴァルダとジェーンのやり

【映画】ぼくのお日さま/奥山大史

タイトル:ぼくのお日さま 2024年 監督:奥山大史 シンプルなストーリーの中に三人の居場所が示されていて、それは真っさらな状態から作る場所であり、築き上げてきたものを磨き上げる場所であり、終わった後の先の新たな場所である。 一見シンプルなようで、三者三様の場所を分かち合う時柔らかな光が差す場所になる。スケートリンクに差し込む光が生み出す陰影は、ひとりとふたりと三人では映し出される心の模様は不思議と全く異なる印象に映る。単純なようで複雑な心理描写が連なっていて、物語が進むほ

【映画】エイリアン ロムルス Alien Romulus/フェデ・アルヴァス

タイトル:エイリアン ロムルス Alien Romulus 2024年 監督:フェデ・アルヴァス 久しぶりにダラダラとエイリアン4を観た。ジャン・ピエール・ジュネらしい雰囲気とエグさが同居している部分は今みても良かったが、後半のタイムリミットとその後が示唆されない(クローンリプリーが地球に着いたら人体実験が繰り返されるだけ)部分が腹落ちしなかった。 それにしても本作ロムルスは蛇足以外の何者でもない。近作のリドリー・スコットのプロメテウスとコヴェナントも蛇足…というかドラマ部

【映画】ナミビアの砂漠/山中瑤子

タイトル:ナミビアの砂漠 監督:山中瑤子 正直なところ山中監督の「あみこ」はうまく消化出来ず、この十年観た映画の中でも一番言葉にしづらい感覚があった印象が強く残っている。拗らせた主人公の突っ走った生々しさと勢いだけは体の中に残っているものの、どうも心に引っ掛かりが残る感じでは無かった。とはいえ、その印象が残ってるだけでも、引っ掛かりと言えるのだろうけど、どうもそれを言葉にできる感覚を持ち合わせていない自分に面食らったとも言える。 本作「ナミビアの砂漠」はどうだったかといえば

【映画】カンフーマスター Kung,Fu master!/アニエス・ヴァルダ

タイトル:カンフーマスター Kung,Fu master! 監督:アニエス・ヴァルダ いわゆるショタものと片付けてしまうのは忍びない。しかしながら倫理観を揺さぶりつつ、その衝動への希求は突き進めば進むほど破滅へと導かれる。思いのまま生きなさいと諭す母の助言の通り行動すれば、自ずと当然の結果に陥る。 「幸福」のような倫理観を揺さぶる歪んだ家族観を描いたヴァルダだけに、彼女が作り出したものかと思っていたら、ジェーン・バーキンからの提案だったというのはちょっと意外だった。自身の実

【映画】ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選2024

昨年に続いてファスビンダーの作品三作の特集上映がル・シネマで開催。今回は自由の暴力、エフィ・ブリースト、リリー・マルレーンの三作で、70年代中盤のまだ20代の頃の作品と、晩年に差し掛かる1980年の作品という前回とはまた違ったラインナップでの上映となった。37歳という若さで亡くなったにも関わらず、40作品もの映画を残した多作な監督にも関わらず作品のクオリティや、内容の濃さ、人生観には驚かされる。今回の客入りも良さそうなので、来年も引き続き行って欲しい。 タイトル:自由の暴力

【映画】Mommy マミー/二村真弘

タイトル:Mommy マミー 監督:二村真弘 1998年当時のメディアの過熱ぶりはよく覚えている。というのも個人的な事ではあるが、丁度ひと月前に恋人を事故で亡くた出来事があり、僕の家族と彼女の家族との間で亡くなった事への大きな混乱の最中だったというのもあった。人がひとり亡くなる事の重みを僕だけでなく、周りの多くの人が抱える最中に起きた事件であり、複数人亡くなってしまった事件の事の大きさを肌で実感した出来事でもある。それは僕の中での1998年の夏の記憶と共に、それは少なからず

世界で一番好きな(のかもしれない)音楽⑬/Clairo「Charm」

・MOR化するUSインディシーン 2010年代のアメリカは好調な経済の下支えもあって(そこから現在はインフレが問題化しているが)、音楽と映画のインディシーンはこれまでにないほど芳醇で雑多なものが増えた。マス向けの高い予算を使った制作や大体的なコマーシャルな志向から、インディペンデントな表現との境目が曖昧になりつつある傾向が顕著になっている。00年代からその傾向は見え始めていたが、よりその傾向が強まった年代と言える。 映画でいえばA24やNeonの様なアメリカンニューシネマの再

【映画】デビルクイーン A Rainha Diaba/アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ

タイトル:デビルクイーン A Rainha Diaba 1973年 監督:アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ キャンプ映画といえばそうなのかもしれないが、フレンチカルチャーからの影響の強いブラジルにあって(ある時期まではリアルタイムで相互関係にあった)ヌーヴェルヴァーグからアメリカンニューシネマの延長線上にある映画なのは間違いない。自滅的な展開と、悦楽的なキャンプ感は70年代アメリカの空気とリンクする。しかしキャンプカルチャーの代名詞ともいえる「ロッキーホラーショー」は

【映画】風が吹くとき When the wind brows/ジミー・T・ムラカミ

タイトル:風が吹くとき When the wind brows 監督:ジミー・T・ムラカミ レイモンド・ブリックスの名作「風が吹くとき」の映画化作品で、37年ぶりの上映となる。37年前の上映時、まだ七歳だったが親に連れられて渋谷に観に行った記憶が残っている。幼い頃は無垢な老夫婦が被爆する可哀想な話くらいにしか受け止めていなかったが、さすがにこの歳になると見方は全く変わってくる。我々日本人は「はだしのゲン」のようは作品に触れる機会もあるため、被爆するという事は体にどの様な影響

【映画】墓泥棒と失われた女神 La Chimera/アリーチェ・ロルヴァルケル

タイトル:墓泥棒と失われた女神 La Chimera 2023年 監督:アリーチェ・ロルヴァルケル 「幸福なラザロ」のアリーチェ・ロルヴァルケルの新作「墓泥棒と失われた女神」。登場人物たちがガヤガヤとすったもんだする感じはフェリーニっぽい雰囲気があったり(インスピレーション元として「ローマ」を挙げている)、クストリッツァみたいなオフビート感も若干感じつつヨーロッパらしいテンポ感が懐かしくも心地よい。回想シーンでの太陽光が刺すフレアがフィルムらしい美しい質感を持ち、ロマンチッ

【映画】違国日記/瀬田なつき

タイトル:違国日記 2024年 監督:瀬田なつき 全体のテンポ感の心地よさに浸る。なんだろう?あとあと一時間続いても苦にならないというか、むしろ終わってほしくない居心地の良さが画面全体から伝わってくる。物語自体は両親を事故で亡くした主人公の中学生である朝と、孤児となった彼女を引き取った叔母槙生の生活が主題であるが、それぞれが抱えるペルソナと距離感の話でもある。というよりも、こちらの方が主題とも言える。 人と人とが理解し合えない領域、それは環境だったり、年齢や血縁関係、友人だ

【映画】Walk up/ホン・サンス

タイトル:Walk up 2022年 監督:ホン・サンス 相変わらずのハイペースで、日本未公開がまだ三作あるというこの意欲はどこから湧いてくるのだろう?ホン・サンス作品に毎度触れるたびに、どこが面白いのかという説明は本当に難しい。特に近作のミニマルなまでに削ぎ落とした表現は、余りにも淡々としてぱっと見のケレン味も薄く捉えにくい。ただ最後まで観た時のなんとも言えない後味を残す。「あなたの顔の前に」のラストでハッとさせられたように、本作もラストで混乱を生み出す。気を衒ったという

【映画】アンゼルム”傷ついた世界”の芸術家 Anselm/ヴィム・ヴェンダース

タイトル:アンゼルム”傷ついた世界”の芸術家 Anselm 2023年 監督:ヴィム・ヴェンダース 先日、ポリタスを見ていて第二次大戦の出来事について、戦後日本が歴史に向き合っていない事を痛感させられた。 旧日本軍の資料を保管する国立の資料館が存在せず、結局のところ自衛隊や靖国神社に資料が集まる結果となってしまう。結果的に旧日本軍と自衛隊との繋がりを生み出してしまうような事態まで発生する。この辺りは朝鮮戦争の際のGHQと日本の関係が生み出した自衛隊という存在が、矛盾を孕ん

【映画】あんのこと/入江悠

タイトル:あんのこと 2024年 監督:入江悠 俳優陣の配役は中々良く、下手すると浮きがちな佐藤二朗や稲垣吾郎(「窓辺にて」など最近の俳優業は結構好き)がちゃんと役所に収まっていた。何より「不適切にもほどがある」でも印象的だった河合優実の浮き沈みある役が見どころだったと思う。一番驚いたのが母親役の河井青葉。濱口竜介監督の「偶然と想像」で演じた朗らかな役とは真逆の、どうしようもなく病的なまでに暴力的な演技は見ていて嫌になるほど強烈。観劇中は気が付かなかったが後から河井青葉と知