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保健師の呪い

「この子のお母さんは世界にただ一人、あなただけなんですからね」

産後まもない家庭に自治体の保健師が訪問する制度。自治体によって「赤ちゃん訪問」とかそんな名前がついている。その時の保健師が帰り際に言った言葉がまじで呪いだった。

確かにそれは事実だが、私はこの子の世話を「世界で一人の母」である私がまともにやらねば、この子はどうしようもない人間に育ってしまうということに受け取った。

保健師がどういうつもりでその言葉をにこにこしながら言ったのか。少なくとも彼女からしたら善意だっただろう。

その意図は未だによく分からないが、産後まもない女を深く絶望させるには良く効いた。

未だにふと思い出す。ただ、もしあれが繰り返されたとしても、今度は「余計なお世話だうるせえな」と心の中で思いながら、笑顔を返す余裕はありそうだ。

それが私自身の成長なら少し、報われた気持ちになる。