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「もうひとりの編集部の話」③『DISTANCE』ができるまで

私たちが作っているZINE『DISTANCE』。私が村上くんを誘った際の仮称は「STAY HOME MAGAZINE」でした。いかにも平々凡々とした名前。
 雑誌の編集を進めつつも良いタイトルを探しているときにふと、「コロナ禍で変わった一番大きいものって、人と人との物理的かつ心理的な“距離感”なんじゃないか」そして「自分なりの視点でそんな世界を切り取りたくて、この雑誌を作っているんだよな」そんなふうに思ったんです。そこからDISTANCE(距離)というタイトルが生まれ、同時にこのときの思いを副題にして「人同士が距離をとらなくちゃいけないけど、心の距離は近くいようね」と表紙のタイトルロゴの下に書きました。

当時は、村上くんと「どんな雑誌にするのか」という議論にかなり時間を割いていて、インタビューに加えて、一般誌にあるような投書コーナーや細かな企画をちりばめることも考えていました。しかし限られた労力で本誌のコンセプトを実現することを考えると、自ずと当初の構想そのままに「コロナ禍を生きる人たちへのインタビュー」を軸に構成されることになりました。

これまでにも本を作ったことは何度かありましたが、ゼロからインタビューがメインの雑誌を作るのは初めての経験。もともとレイアウトや編集作業がしたくて始めた雑誌作りでしたが、蓋を開けてみると制作前半はほとんどの時間を文字と向き合って過ごすことになりました。まずはインタビューの書き起こし、それをもとに原稿作成、できあがったお互いのものを交換しては校正を何度も何度も繰り返しました。

実はこの『DISTANCE』の原稿は、最初から文字数を決めずに作っています。おそらく普通の雑誌であれば、あらかじめ内容やページの割り振りを固めた“台割”を作成、それをもとに取材や執筆、ビジュアルの作成に入っていくと思うのですが、『DISTANCE』ではとりあえずインタビューしちゃって、原稿も作っちゃって、ある程度素材が出揃ったところではじめて構成を考えています。
素材を見て、その場で順番や構成を変更できるメリットもありますが、基本全部行き当たりばったりなので手間もかかります。
今ではさすがにVol.1の頃よりは、あらかじめ多少は全体の流れを考えるようにはなりましたが、総ページ数が決まるのは完成直前。私は普段「どんな絵を入れるか」よりもむしろ「どんな順番で見せるか、どんな風にしたら飽きずに読んでくれるか」のような作業に力を注いでいました。

まぁそんなわけでなんとかインタビュー、イラスト、ビジュアルを組み上げ、突然の思いつきから約4ヶ月をかけて『DISTANCE』Vol.1が完成したのです。いま見ると、我ながらなんとも読みづらい編集の本だなぁと思います(笑)が、当時は初めて自分の手でゼロからつくった雑誌とあってなかなかの感動がありました。

そうしてVol.1が完成したわけです。そんななかで次回は「どんなことを考えながらビジュアルや文章を作っているのか」書いてみたいと思います。
それではごきげんよう。

(つづく)

「一番はじめに、村上くんに送ったコンセプトシート。かなりざっくりだが、根幹はブレずにここまでこられているように思う」

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