シェイクスピア全集(松岡和子訳):⑯恋の骨折り損/⑰から騒ぎ/⑱冬物語/⑳じゃじゃ馬馴らし/㉒シンベリン
シェイクスピア全集を読もう!シリーズ第4弾。
まとめて5冊の感想を。
1)「シェイクスピア全集16 恋の骨折り損」
タイトルは知っていたけど、読んだことはなく、最後は収まるところに収まる(人数割り切れるし)ドタバタ恋愛喜劇なんだろう、と予想。
でも、それなら「骨折り損」なんて言うタイトルになるかなあ?相手の気を引こうといろいろ苦労したけど、うまくいかなかったっていう話なのか、それともそんな苦労はもともと必要なかったのに、っていう話なのか?という疑問を持ちながら読み進める。
結末は、なるほど、という感じだった。ネタバレになるからやめておくが。
上品とまでは言えないけれど、一応、王や王女など位の高い方々の登場だけあって、言葉遊びもうまい!と思わせるような部分が満載で、庶民だけが登場する話より楽しめる気がする。
「訳者あとがき」が興味深い。
この話に登場するナヴァール王のモデルはフランス王のアンリ4世で、他の青年貴族3人もちゃんとモデルがいる。アンリ4世はシェイクスピアと同時代の人物で、深読みすれば、カトリックとプロテスタントを行き来するさまが、恋愛に絡めて誓約を破ろうとする様子になぞらえたのでは?という感じ。
解説には、当時起こった事件も並んでいて、なるほど、と思う。
と、こんな難しいことを考えなくても、気軽に楽しめばいいのかもしれない。モデルはいても、いわゆる元ネタはなく、シェイクスピアが自由に書いた作品だそうだ。
2)「シェイクスピア全集17 から騒ぎ」
「から騒ぎ」というタイトルは知っていたけど、中身は全然。
でも、予想通りの恋愛喜劇で、ハッピーエンド。
ちょっとしたいい間違い―緊張からのこともあり、故意のこともあり―で、で笑いを誘う、言葉遊びが全開という感じの作品。
読むには気楽でいいが、訳すのは大変だっただろうなあ、と想像。
3)「シェイクスピア全集18 冬物語」
タイトルも内容も全然知らずに読み始め。はじめは、ややおしゃれな言葉遊びの連発で、面白そう〜と思ったけど、だんだん嫌な展開になってくる。。
レオンティーズが急に嫉妬に狂いだす場面があまりに唐突で、しかも誰の助言も聞き入れず、冷酷な決断を下す。そうかと思うと突如後悔し始め、精神を病んでいるんでは?と思いたくなるけど、そんな描写はなく。
最終的には、若い男女が結ばれたり、和解したりと、見かけはハッピーエンドだけど、その前に亡くなった人もいるし、深い心の傷は一生いえるものではないし、複雑な気持ちになる。どうせあり得ない展開になるなら、すべて妖精のしわざでした~とか、魔法でみんな生き返りました~という方がまだ許せるのだけど。
「最後に読者を驚かせる」(だったか?)という解説があった気がするけど、その部分は予想通りで、全然驚かなかったし。
というわけで、微妙な作品。
4)「シェイクスピア全集20 じゃじゃ馬馴らし」
読んだことはないけど、内容は何となく知っていて、あまり読む気がしないなあ、と思っていた話。妻の「調教」の仕方がひどい。暴力こそふるわないが、虐待以外の何物でもない。喜劇だなんてとんでもない。
ただ、感想をこれで終わりにしてはせっかく読んだかいがないので、もう少し考察。
カタリーナには美しくしとやかで求婚者が多数いる妹ビアンカがいる。
2人の父は、まずカタリーナが結婚してからでないと、妹ビアンカを結婚させない、という気でいる。
このビアンカをめぐって、求婚者たちがあの手この手を使う様子は面白い。
たくさん人が登場するので、いちいち確認しないと混乱するが。
本題に入る前に「序幕」があり、実はこの「じゃじゃ馬馴らし」全体が、長い劇中劇という設定だ。それによって、この話があり得ない話、としてとらえるべきだと示唆しているのかもしれない。
ところが、「序幕」はあるのに、「終幕」はなく、最初に登場した人たちがその後どうなったのかわからずじまい。実際に演じる時は適当に「終幕」を付けて演じたりもするらしいが、なんともすっきりしない終わり方だ。
5)「シェイクスピア全集22 シンベリン」
「罠にはまって、不貞を疑う」、「男装」、「薬で仮死状態」、など、他の作品で使った仕掛けがてんこ盛りで登場する。
その辺はそこそこ楽しめるが、全体のストーリーとしては、いくら変装したって夫や恋人の見分けくらいつくだろうとか、あまりにも無理な展開もてんこ盛りだ。
全体としては、シェイクスピアの創作だが、シンベリン王は、実在のブリテンの支配者クノベリヌスをモデルとし、また、挿入されるエピソードは「デカメロン」から引いてきたりなどしているとのこと。
あまり上演される機会のない劇のようで、タイトルすら知らない作品だった。
シェイクスピア全集に関する、過去の記事。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?