生き方の選択肢が増える旅 -鹿児島県阿久根市「職業体験型ワーケーションプログララム」7daysレポート-
鹿児島県阿久根市、あなたは聞いたことがあるだろうか。
私も昨年まで聞いたことすらなかった地名だ。
でも今は、「ただいま」と言いに行きたい港町がそこにある。
私について
都会に生まれ、都会に育ち、都会に就職をする、
何の変哲も無い、情報とデザインを齧った大学4年生だ。
ただ、決められた線路に沿うだけにしか見えぬ自らの人生に一抹の不安を感じている(いた)。
阿久根市とは実は昨年から縁がある。
所属する研究室の活動にて、阿久根市の青果市場跡地活用に向けたデザインリサーチ(調査)のため、昨年に夏と秋に1週間ずつ2回訪問させていただいている。
あまりにも私にとって最高だった阿久根に、なんとしても卒業までにもう1度行きたいと考えた。そこで、地域おこし協力隊が主催する「職業体験型ワーケーションプログラム」に阿久根を全く知らない地元の友人を連れて参加することにしたのだ。「最高だった」理由も、この記事を見れば大体分かるだろう。
参加したワーケーションプログラムはこちら↓
1日目:ただいま、あくね
朝イチで羽田から鹿児島空港まで飛び、空港からは阿久根駅まで出ているバスに揺られ2時間。
昼食を取るため阿久根駅から徒歩5分ほどにある、港町珈琲焙煎所に向かった。
住宅街にポツンとあるなんともお洒落なこの珈琲屋さんは、古民家をリノベーションして作ったのだという。店主から「おかえり」と言われた時は、うるっときてしまった。
おいしすぎる。。
ここは珈琲屋さんでありながら、臨時的に阿久根で獲れた魚介で食事も提供している。
昨年来た時は朝獲れのブリを使ったサンドイッチをいただいたが、これも絶品だった。
昼食を済ませた後は、阿久根市の北側にある、日本三大急流の一つが流れる黒之瀬戸大橋の下に渦潮を見に見にいく事にした。
あいにく渦潮を見ることはできなかったが、いつまででも見ていられそうな雄大な自然を楽しんだ。
黒之瀬戸大橋の後は、本日泊まるイワシビルというホステルにチェックインを済ませた。ここは阿久根で有名なウルメイワシの丸干しで代々受け継がれてきた下園薩男商店が運営する。カフェとショップとホステルが融合した施設で、ホステルの部屋は秘密基地のようでなんとも可愛らしい。
夕食は私たち以外のワーケーション参加者との交流も兼ねて、阿久根駅前にあるジャンクサーフコーヒーでいただいた。
阿久根産の食材を使用した、これまた絶品な料理をいただいて、ワーケーション参加者だけでなく阿久根に住む様々な方々と焼酎を片手に目一杯お話しをした。
阿久根在住の方々の中には移住者もいて、みんな人生経験が豊富だ。
都会っ子の私にとっては人生について考えさせられる話ばかりだった。
2日目:誰もいない絶景
2日目の朝食はイワシビルの宿泊者限定で食べることのできるイワシ定食。
フルーツには阿久根で採れるぼんたんも添えられていて、大変健康的で美味しかった。
朝食後は、阿久根市の南側にある佐潟に海を見に行った。
今すぐにでも潜ってみたくなる、エメラルドグリーンに見える透き通った海が広がっていた。
ここには「佐潟の洞窟」と呼ばれる小さな洞窟があり、そこまで険しい道を進んでいったり磯を歩き回った。
どこを歩いても絶景だらけで、私たち以外に誰もいないのは不思議で仕方がない。
冒険の後は、阿久根市の南側にある道の駅阿久根に昼食を食べに向かう。
道の駅のある大川というエリアには、美しい小川が流れている。
秋に訪れた際には、綺麗な川に生息する山太郎(モクズガニ)を捕まえて塩茹ででいただいた。
道の駅からは、一車両で走っている肥後オレンジ鉄道に乗ってゆっくりと薩摩大川駅から阿久根駅まで向かい、明日のアクティビティに備えた。
3日目:奇跡に乗って
3日目は念願のシーカヤックの日!
昨年に2回阿久根に訪れた際もSUPなどを体験するつもりが、あいにくの天気で一度も海に出ることができなかった。
そのため、冬で海が荒れがちだがなんとしても海に出たくてシーカヤックのスケジュールを組んでいただいた。
幸運なことに、この日は凪であった。雨も降っておらず奇跡的にシーカヤックに出れることになった。
阿久根旧港と新港の間にある川から出航した。
目指す場所は、2~3km岸から先にある阿久根大島だ。
人生初のカヤックは、初めは腕に力を入れてしまいすぐに疲れてしまっていたが、インストラクターのしのさんのアドバイスでコツを掴み、それからはスイスイ進んでいった。
阿久根大島に近づくと、海底の白い砂の影響で海が澄んだ緑色に近づいていく。
とにかく水が綺麗で、簡単に海底のウニや小魚・サンゴまで目視できる。
1時間ほどかけて阿久根大島に到着すると、なんとしのさんが流木を使って焚き火を起こし、珈琲とシュークリームをご馳走してくれた。
自力で辿り着いた島での珈琲は格別であった。飲みながら語ってくれた、しのさんの経験談や私たちの人生相談は忘れられない思い出だ。
私は自前の釣竿もカヤックに積んでいたので、現地の貝を餌にカサゴを釣り上げることができた。まさに至福の極みだ。
釣り上げたカサゴは、持ち帰って翌日に味噌汁でいただいた。獲るまでの過程が存在するだけで旨みは倍増した。
最高だったシーカヤックを終えたら、冷えた体を温めに、ぼんたん湯に向かう。
ぼんたん湯は、阿久根で生産されているぼんたんという大きなみかんのような果実をお風呂に浮かせるのが特徴だ。
温泉自体も塩湯という塩分を高く含んだ珍しい天然温泉で、冬だったためぼんたんもお風呂に浮かんでいて最高であった。
4・5日目:いざ、阿久根のお仕事!
4日目からは本格的に阿久根の企業のもとでの職業体験が始まった。
4,5日目は、海連さんというそうめん流しの大野庵を運営したり、さつまいも加工などをされている企業でお仕事だ。
お仕事の内容は、現在開発中のレトルト加工を施した干し芋のブランディング企画だった。
私と友人は2人とも大学でデザインを学んでいたこともあり、まさにぴったりのお仕事をいただくことができた。
2日間のという時間の中で、実際に干し芋を様々な調理法でいただきアイデアを広げ、パッケージデザインまで作成して発表を行った。
大変光栄なことにありがたい評価をいただいて、今後そのまま私たちのアイデアをブラッシュアップしていって製品化まで持っていけるかもしれないというところまで持って行くことができた。
なんと終わりには、志村けんが愛した伊七郎という焼酎を一瓶ずついただいた。
もちろんその日の晩酌に。さつま揚げと共に贅沢にいただいた。
6日目:何を食べているかわかるという価値
6日目は、焼酎を製造している大石酒造さんで見学とお仕事のお手伝いをさせていただいた。
大石酒造さんは焼酎の中でも広く知られている鶴見など、様々な焼酎を製造されている。
中でも神舞という焼酎はかつての蒸留技法である、兜釜を使用した焼酎も新しく製造されている。試し飲みをさせていただくとどれも飲みやすくて少し酔いが回った。
酒造の内部を見学させていただいた後は、実際に販売されているがんこ焼酎屋という焼酎瓶のラベルを貼るお仕事のお手伝いをした。実際にラベルを貼ると一気によく見る焼酎の姿になり感動。
大石さんが焼酎の製造方法について解説をしてくれている際に、「うちで飼ってる(酵母菌など)~~」という表現をされているのが印象的であった。
阿久根に住む人は自然にも優しく、人以外の生物・自然に思いを寄せることができる精神性を持っているのだとこれまでの旅で何度も思った。
大石酒造の後は、脇本海岸という3kmに続く遠浅の砂浜に向かう。
脇本海岸に着くと運が良いことに雲が晴れ、夕日が沈むタイミングを存分に楽しむことができた。
そこには美しいという言葉で表現できないような風景が広がっていた。
砂浜にゴミはなく、濡れた砂はウユニ塩湖のように影を反射させる。
悩みなど全て吹っ飛んでしまうような圧倒的な風景だ。
この日の夕食は、以前からずっと行きたかった日本料理まつきさん。
ここは阿久根の新鮮な海鮮をコースでいただける場所だ。
まず出てきたのは阿久根で獲れた石鯛の刺身。
それも来店30分前まで生きていたという。
刺身の切り方も香りと味を感じやすい2つの切り方でいただいた。
磯ならではの臭みなど全くなく、本当に切り方によって味の感じ方が違うのだと感動。
阿久根産の伊勢海老は、生きたまま目の前で捌いてくれた。
甘エビよりも甘味が強くこれまで食べてきたエビの中で最も美味しい。
石鯛のあらで作った煮付けも、伊勢海老のあらで作った味噌汁も、余分な添加物を一切使っていないのに美味しすぎた。
まつきさんはただ料理が美味しいだけではなく、提供してくれる食材についての解説や食に対する思いを熱く語ってくれた。
時間になったら腹を満たすために食事をしていた私にとって、何を食べているか分かる食事というのがこれほどまで心を満たしてくれるとは思わなかった。
7日目:またね、あくね
最終日は、釣り好きの私にとっては憧れの漁師体験の日だ。
朝イチで深田港という港から出ている海盛丸水産さんの船に乗って出発。
真っ暗なうちから、ブイや薄く見える景色を頼りに定置網の場所に向かう。
なんと定置網を上げると、私が今一番釣ってみたい太刀魚が!
死なないうちに脳〆と血抜き、神経〆をして氷で冷やす。
太刀魚の他にも、大きなカマスやアジ、ヒラメや鯛までも見ることができた。
漁を終えた後は、海盛丸水産さんが営業している、うずしお館という食事処に向かう。
うずしお館に着くと、なんと太刀魚の定食を朝ごはんにいただいた。
あまりに美味しすぎる太刀魚の塩焼きをいただいた後は、
実際に自分たちで〆た太刀魚を捌かせていただいた。
薄い体をしているため、なかなか捌くのが難しい。
捌いた太刀魚は刺身でいただいた。これもまた美味すぎる。
漁の後は、イワシビルや阿久根駅でお土産を購入して、バスまでの時間をぼんたん湯で癒された。
最後に港町珈琲焙煎所で阿久根産の鯖を使ったサンドイッチをいただき、帰路についた。
この記事に書ききれない阿久根の思い出は山ほどある。
勿体無いので最後に少しだけ写真を載せて終えることにする。
少しでも阿久根の雰囲気が伝わってほしい。
旅を終えて
ここにはスタバなんてもちろん無くて、ファミレスだってほとんど無い。
遊園地も無ければ何千個ものLEDが巻き付く街路樹だって無い。
だけど、圧倒的に美しい人情と自然と食がある。
3度訪れたが、やっぱり阿久根に住む方々の笑顔は眩しい。
都会のイルミネーションなんかより、よっぽど輝かしいのだ。
ここには阿久根らしさがある。
現代において土地らしさがあるというのは、どれだけ価値があることなのか。
阿久根にいると痛いほど気づくのだ。
なんとなく都会で生きていかなければならないと思って20年生きてきた私にとって阿久根で過ごした日々は、そんなことはないという気づきを与えてくれたかけがえのないものになった。
また近いうちに、阿久根に行くだろう。
いや、阿久根に帰ろう。
阿久根地域おこし協力隊
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