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月曜モカ子の私的モチーフ vol.193「ポッペンバッザーク女王、何かを掴まえる」

※画伯が最近“肖像画”に凝っているので、絵から思いつく物語を書いてみることにしてみました^-^

これはかの有名なポッペンバッザーク女王が「何か」を掴まえたときの肖像画である。女王はこの場所で、あの時確かに「何か」を掴まえた。
彼女があの時「何か」を掴まえたことによって、世界は激変し、我が国は(世界は)今のような豊かな国となった、あの時彼女が「何か」を掴まえ、世界が変わったのである。
今となっては知らない国民などいないこの出来事であるが、あれから30年が経った先日、あの出来事がいかにこの世界に大いな変革をもたらし影響を与えたということを記念し、その瞬間を捉えた肖像画が、ベベンバ・ポッペによって描かれることとなった。
ベベンバ・ポッペは有名な宮廷画家ではあるが、あの革命的な瞬間――女王が何かを掴まえた時――にそれをじかに目にした唯一の目撃者としても有名である。その凄さを刻み伝えていく使命の人、という意味も込めて、当時ベベンパには「ポッペ」という王家に伝わるミドルネームが贈られた。
(それまではベベンバ・ペッポとして活動している。名前だけで見るととても間違いやすいが、作風で見るとあれ以前、以後では様変わりしているので、絵を見ればペッポが描いたものかポッペが描いたものかは一目瞭然だ)
国家にとっても歴史に重要なその瞬間が、唯一の目撃者によってこのたび肖像画にされるというのも、またすごい話である。
                          
あの時女王は何を掴まえたのだろう。
これはこの国家にとっての最大の謎といえるのかもしれない。唯一の目撃者であるポッペは肖像画製作会見の中で「女王が掴まえた何かについて話せる時期は来るのか」「あなたはあの手の中にあったものを見たのか」という記者の質問に対して、
「掴まえた何かというよりは手放したとも言えるのかもしれない、手放したことで掴まえたのかもしれない」
と意味深な発言を残したが、真相に関して核心的な発言はしなかった。
                          
その「何か」に関しては未だにベールに包まれている。
しかしその「何か」によって、完全に世界が変わったことだけは、国民も皆知るところなのである。
筆者はポッペが「核心的な発言はしなかった」と前述したが、
もしかしたらベベンバ・ポッペのあの発言こそが、
本当は核心なのかもしれない。
我々はこの30年間あの時女王は何かを掴まえたのだと思い込んできたが、実はあの時何かを手放していたのかもしれない。そういうことも考えながら見ていくとますます謎は深まっていくばかり。
「何か」とはなんなのだろうか。
あなたもぜひ、じかに眺めながら国家の謎に迫ってみてほしい。
なおこの絵は特殊な塗料でコーティングされており、触るのは自由。

(ベベンバ・ポッペによる肖像画 ”ポッペンバッザーク女王、何かを掴まえる" は2048年12月11日から2049年4月1日まで、コクリツ・バッザーク美術館にて展示、そこから世界を回る予定)

<イラスト=Miho Kingo>
                                  
      

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