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第2話 ✴︎仏壇Bar? のモールス信号✴︎by 根津イーディ

そうそう「すり鉢の底土曜日」の続き。
実は先週の木曜日の昼間、水曜にきらしていた領収書を届けがてら「英多郎寿司」にランチに出かけて、その帰り道に根津まで歩いてみた。そしたらその途中に可愛いインド雑貨のお店を見つけて、服とかを衝動買いしたのだが、その時に、
この今日のTOP画像にしている「Thinking Bowl」を購入した。

(実はこの筆を置いている青い瓦礫たちもそのお店で見つけたもの。買いたいと言ったら下さった)

「Thinking bowlーシンキングボールー」というのはヨガなどやって”瞑想”なんかにも詳しいお方はご存知だと思うのだが、要はマントラを唱える時とか、場を清めて”メディテーション”する時などに使うものである。わたしはどちらかというと楽器としてのそれらが面白いなあと思っていて「ティンシャ♪」もいつか欲しいのだが、まずはシンキングボールからということで買ってきたのだけど、当然このお店に用途はない。笑。

この日[土曜日]はわたしがシクシクと本を増やしているということで、常連ーーと呼ばせてください、がじゃん&O上さんたちーー陣と「ハッシュタグ」について話していた。本を持ち込んでくれた「ホリエモンさん」がSNSに投稿する際「なんてハッシュタグつければ? 」と言った流れから、その話になる。

わたしは要はこのお店の本でお金儲けをするつもりはなくって、
みんなが要らない本を持ち込んで、気になる本を持って帰る、そういう循環にしたいから意味合いとしては「本屋」でなくって「図書室」だよね?

そんな話から最初はやっぱ「#文壇Bar かな?」と言っていたら、
いや、「文壇」て言葉は難しくて、文壇というものはある執筆家たちが所属しているものではないかしら? という話になり、こない全く、文壇の端っこにもいない異端なわたしがハッシュタグ「文壇」は、それはアカン!ということで、次にわたしが「#文豪Bar は?」と言うと、大学同期のデキルくん("蝶番"にはその名前で登場する)とO上さんが「お前文豪じゃないだろ!笑」

聞けば「文豪」は”酒豪”と同じで「諡(送り名)」のようなもの。「諡(おくりな)」とはその人の死後にその人に贈る称号のようなもので、まだまだ道半ばのわたしが自称で文豪と名乗ってはいけないということがわかった。笑。
(そういう意味では譲さん[佐々木譲]は生きながらにしろもう文豪じゃない!?
そのお方がいらしたとあれば、文豪(がやってる)ではなく、文豪(が集う)という意味では文豪Barとも呼べるかもしれない。

ともあれ話は「本の扱い」になって、がじゃんの奥様が「モカコさんのやりたいことってきっと根津駅にあるメトロ文庫みたいなことじゃないかな?」と教えてくれて、そうかわたしのやりたいことって「文庫」だ。となりましたが「文庫Bar」だとハッシュタグ的にはちょっとパッとしないなあ・・・と言っていたら、O上さんの友人が「店の名前もう”Bar 図書室”でいいんじゃね?」

その響きがあまりに美しく、ライターの妹が時々通う高円寺の「Bar"私”」を彷彿させたので「Bar”図書室”いい!」となったのですが、ここはそもそも「Stock根津店」そこにわたしの著書に出てくるBarの名前がくっついて「根津イーディ」となっている今、ここに「Bar図書室」をぶちこむのはお客様が店名を覚えるにあたり大変困難である。笑。

そんな訳で定番ハッシュタグはこんな感じにしようと思う。

#Bookstockbar     #Bar図書室     #根津イーディ     #BarSTOCK

"Bookstockbar"というのは本店のSTOCKコンセプトを踏襲しているし外国人にもわかりやすいので気に入った。”Bar図書室” はわたしが恍惚に酔いしれた美しい響きを繰り返したい欲望のため。

そう、すなわちインバウンドで外から人に来てもらいたかったら、#BookBar とか、#文壇Bar とか、皆が使う言葉を使うべきなのだが、それよりも自分の好きな言葉の配列を優先。次の段階として #芸術酒場  とか #小説家のいるお店
とか、なんか気分で付け足していこう。
そして「じゃんじゃん!」

この「シンキングボール」がなぜ「モールス」に変わったのかというと、
まさに最初にわたしがこれを鳴らした時、ただただ「こういうの買ったんだ」というのを、がじゃんと奥様に見せたかっただけだったのだけど、

予想外に反応したのが写真左奥のO上さんと友人で、友人さんがその前のハッシュタグの会話を拾ってすかさず「なにそれ!チーン♪て。文壇じゃなくて仏壇Barかよ!」とわたしに突っ込み、一同大笑い。

「てかそれいつ使うの!?」

「何用なの!?」

そういう話になってみんなで用途を考える。

「それはやっぱり、トイレに行くときじゃない? 今から使用します〜っていう」

「じゃあさそれは出てきた時も鳴らすわけ?」
「そうだね、終わりました〜っていう 笑」

「あとさ、わたしの方から変ないちげんさん来た時に鳴らさせてよ」
「わたしはあんまり歓迎してないよ、っていうお知らせ」

「え? もはやそれモールス信号じゃん!」

文壇Barが仏壇Barに早変わりしてからの「モールス信号」にカウンターの一同は腹を抱えて笑っていて、その合間にO上さんが「ちょっとトイレ」とかって「チン♪」と鳴らすからさらに皆大爆笑。

ただ、話はこれで終わらなかったのだ!

わたしが言った「変ないちげんさん来た時」という言葉がまさかの予言だったかのように、それから数分後、正体をなくすほどに酔っ払っている男の子が一人で入ってきたのだ! ろれつが全く回ってなくって、目は座っていて、幽霊みたいにフラフラしながら、その子は「まるで指定席」のように入り口に一番近い席に座った。

なんとなく店内全体がさっきの和気あいあいが嘘のように「しいーん」とした。
次の瞬間だった。その子の隣に座っている同期の照明家のデキルが、おもむろに立ち上がって後ろに行くと”アレ”を鳴らしたのだ。

チーン......♪

(緊急事態を知らせるモールス!!!笑)

まさかそれまでの会話が防災訓練でもあったかのように、カウンターの一同は、
その鐘の音の意味を瞬時に理解し、そして次の瞬間、いっせいに吹き出し・・・はせず、その笑いを堪えた。笑。

果たしてそのモールスの警鐘は正しく、
正体不明の泥酔彼は、そのままつっぷして寝てしまい、
その後立ち上がった瞬間、そこをトイレの中と思ったらしく、
THE YELLOW MONKYの"SUCK OF LIFE"の出だしよろしく、
♪ファスナーを下ろして・・・・・

「ダメダメここトイレじゃないから!!!」

わたしは慌てて彼を制し、デキルとがじゃんに手伝ってもらって彼を扉の外へ出した。もはやお金は払ってもらえないとわかっていた。でも長い酒場生活の経験で、このまま彼をトイレに入れたら、他のお客様が本日は終日トイレに行けなくなる(つまり閉じこもる)のもわかっていたので外に出てもらう。

その後、一旦は「今日は戻ってこないようにね」と鍵をかけていたのだが
(常連陣に「酷い!」と笑われながらも。「永久じゃないよ、今日だけ」ということで、施錠。笑)、誰かがおかえりになってドアを開けたあと、1時間後くらいに雨でずぶ濡れになりながらまた彼は戻ってきた。笑。
もはやモールスを鳴らす人員も足りていなかったので、
今度は「今日は帰ろっか。また明日以降に会いたいな」と諭して帰ってもらう。

それでも深夜3時頃店には「サムラです!」と名乗りながら電話が。
これはさっきの彼だなあと思いながら「どうした?」と聞くと家の鍵がないとのこと。「うちにはないなあ」と伝えると「わかりました!」と電話は切れた。

ここから先が小説だったら面白い、そして小説でなくとも、真実はそれより奇なりで面白いのだが「サムラくん」は次の日の日曜日のオープン時に、律儀に現れた。
「ご迷惑をおかけしたお詫び」と「お支払い」に。

あの日のサムラくんに何があったのか、しらふのサムラくんはとても律儀で誠実で丁寧な青年であった。聞けは我が憧れの国会図書館で働いているという。

チェーホフで言うところの誰だろう? 板付では登場しない、途中から出てくるタイプの、酒瓶片手に持ってるタイプのような”劇的登場”にてこの”根津イーディ”の板の上に上がったサムラくん。彼が主要登場人物になっていくのは間違いはないのではないかと思う。
これが芝居なら、皆サムラくんの役をやりたがるだろうね!!笑

(物語は「今宵まったり日曜日」に続いてく)
 <Photo by...だいたい "HORIRMON">

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ー皆様へー
ともかく”日々”は流れてゆくので、まずは「今」に一番近いものから綴りながら、
時間のある限り6/1〜6/12までの出来事も同じようにアーカイヴしていきます。
読んでくださっている皆様からするとスターウォーズ的な感じで、エピソード1に回帰していく感じになるかもしれませんが、お楽しみにお待ちください。
全部がアーカイヴされてから、時系列をたどって読むのもまた面白いかも。


長く絶版になっていたわたしのデビュー作「蝶番」と2012年の渾身作「誰かJuneを知らないか」がこの度、幻冬舎から電子出版されました!わたしの文章面白いなと思ってくれた方はぜひそちらを読んでいただけたら嬉しいの極みでございます!