見出し画像

こんなにも「哲学」にワクワクしたことがあっただろうか『武器になる哲学』◆読書メモ2019#2

今年は、読んだ本の感想を全てnoteにメモしていきます。
2019年の2冊目は、山口周さん『武器になる哲学』です。

今後、「ビジネス本や自己啓発本の類で、3冊ほどおすすめを教えてくれ」と言われたら、そこに本書が含まれることになると思います。

さて、本書のメインキーワードは「哲学」なわけですが、
哲学に対して多くの方が抱くイメージは、難しい・つまらない・役に立たないの三重苦でしょう。
僕もその例外ではなく、いわゆる理系学部出身ということもあり、哲学をしっかりと学ぶことは避けてきた一人です。

大抵の哲学入門書は、基本的に「哲学史」を軸に扱っており、
古代ギリシアからスタートして、時系列に沿った順に、「哲学史」上重要かどうかという観点から説明が進められます。
しかし、大昔(とりわけ古代ギリシア)の哲学者が残した主張そのものは、現代の我々にとってあまりにも自明であるか、あるいは誤りであることも多く、
そこに学ぶ意義を見い出せないまま挫折して、結果、哲学嫌いを生み出してしまうのです。

その点、哲学・思想の専門家ではない著者がビジネスパーソン向けに書いた本書は、それらとは全く違った形を取ります。
歴史上の時系列や重要度を一切無視して、何を考えるときに役立つのかという「使用用途」ごとに分類して、「役立つ度合い」に基づいて各コンセプトを紹介しています。
さらに、通常「哲学」では扱われない、経済学・社会学・文化人類学・心理学・言語学などにあたるようなコンセプトも広く含めて紹介している点も、非常に面白いです。
哲学という営みが、ある意味、あらゆる学問分野の考察プロセスの根底部分に通ずるものである以上、「哲学」領域のみにフォーカスすること自体が、既に哲学的でないとも言えるのです。

こういった、「類書との違い」をふまえつつ、
そもそもなぜ現代のビジネスパーソンが「哲学」を学ぶべきなのか?ということについても、冒頭でしっかりとページ数を割いて説明されています。

人類の長い長い歴史の中で、おそらくはその中でも相対的に「頭の良い」人達が、本質を求めて問いを設定しては仮説を立てて考察し、時に常識を疑い、批判し、再提案し続けてきたその営みは、
究極のクリティカルシンキングと言っても、決して過言ではないでしょう。

「哲学」から学ぶべきなのは、歴史的事実でも哲学者の格言でもなく、そこに至るまでの視点であり考え方であり、つまりは、そのプロセスなのです。

本書では、哲学・思想を学ぶメリットについて、次の4点が挙げられています。

①状況を正確に洞察する
②批判的思考のツボを学ぶ
③アジェンダを定める
④二度と悲劇を起こさないために

もしかしたら、あの経営者が、あの政治家がこのコンセプトを知っていたら、あんな失敗は起こらなかったかもしれない。
今上手くいっていない我が社のあの問題は、このコンセプトを参考に見直せば解決できるかもしれない。
そんなことを何度も思わされました。

例を交えつつ、網羅的に、かつ読みやすく分かりやすい文章で解説しながらも、
しかし本質的で鋭い指摘を多数含んだ本書を読んでしまうと、
残念ながら、他のビジネス書・自己啓発本の多くが、いささか陳腐なものにも思えてしまうほどです。

本書では、人生に役立つキーコンセプトを50個ピックアップしているのですが、それゆえ、「このコンセプトをもっと深く学びたい」と感じることも少なくありません。
しかし、ちゃんとこの本の最後には、そんな方のための参考書籍が38も紹介されています
こういった部分も含め、総合的に見て大変秀逸な一冊でした。
また定期的に読み直そうと思います。

タメになる度 :★★★★★
文章の読み易さ:★★★★☆
分かりやすさ :★★★★☆
総合オススメ度:★★★★★


この記事が参加している募集

推薦図書

飲食店の開業を目指して準備をしています。バカな若者をちょっと応援したいと思った方、サポートお願いいたします。 スキ・コメント・SNSシェアだけでもとても嬉しいです。