Mamoru Koujyo

こどもたちを甲状腺がんの過剰診断の害から守ることを目的に結成された甲状腺専門医を中心と…

Mamoru Koujyo

こどもたちを甲状腺がんの過剰診断の害から守ることを目的に結成された甲状腺専門医を中心とした医療者の会です。過剰診断に関する役立つ情報をつぶやいていきます。 略称 SCO

最近の記事

日本甲状腺学会は会員に「福島では過剰診断が起こっていない」と教育しているー世界の知見から大きく外れた、『甲状腺専門医ガイドブック』

どうして甲状腺の専門家から、福島の過剰診断を懸念する声が聞こえて来ないの?これは、SNS上でこれまでよく出てきた疑問です。一般の方々にとっては信じがたいかもしれませんが、実は日本甲状腺学会は会員に向けて公式に「福島では甲状腺がんの過剰診断は起こっていない」と教育しているのです。 問題の本はこれです。 甲状腺専門医ガイドブック 改訂第2版 診断と治療社(2018年) https://www.amazon.co.jp/ 甲状腺専門医ガイドブック-改訂第2版-日本甲状腺学会/d

    • 第50回の「県民健康調査」検討委員会で報告されたアンケート調査の結果からわかること

      第50回県民健康調査検討委員会では福島県の甲状腺検査の対象者である子どもや若者とその親に対するアンケート調査の結果が報告されました(611554.pdf (fukushima.lg.jp)。公表された検討委員会資料から主な結果をまとめると以下の表のようになります。 このアンケート結果は、福島の甲状腺検査の本質的な問題点を明らかにしています。 ① アンケートの回収率と偏りについてこのアンケートは検査の対象者とその保護者から無作為に計16000人を抽出して行われました。アン

      • 福島の甲状腺検査について

         現在、福島県では、2011年の福島第一原発事故当時18歳以下であった子どもたちを対象に、甲状腺超音波検査を実施しています。学校世代の対象者には学校の授業時間を利用して、学校検診と同じように行われています。  しかし、この検査は学校検診として行われている視力検査や尿検査とは異なり、子どもたちに重大な健康被害を起こしうる検査です。学校で行われていたとしても、検査は義務ではなく、受診は検査を希望した人のみであり、受けないことで何らかの不都合が生じることはありません。 下記の説明を

        • 金沢市で開催された第66回日本甲状腺学会で語られた「福島の甲状腺検査」

          2023年12月7日から9日にかけて、日本甲状腺学会が金沢市で開催されました。 今回は放射線の核種を用いた診断・治療の専門家が学会長であったこともあり、放射線に関する演題が多いように感じられました。福島の甲状腺検査に関連する演題も数台の講演と一般演題がありました。特に気になったことをお伝えしたいと思います。 福島の甲状腺検査の開始に深く関わった・関わっている先生方の講演1、甲状腺がんが多発見の原因を説明しなかった。 福島の甲状腺検査で甲状腺がんが多発見されていることに対し

        日本甲状腺学会は会員に「福島では過剰診断が起こっていない」と教育しているー世界の知見から大きく外れた、『甲状腺専門医ガイドブック』

          過剰診断があっても県民のために検査継続?第49回「県民健康調査」検討委員会を見てのマモルの4つの感想

          1. 座長変更について    ―いろいろな懸念がありますー 座長が重富秀一氏に変わりました。被災地の医師会の副会長です。令和4年8月から検討委員会委員でしたが、前回の検討委員会で過剰診断について理解せずにそれまでの議論に参加されていたことがお話しから懸念されました。正直なお人柄には好感が持てますが、今後は科学的なエビデンスをしっかりご理解いただいた上で会議を運営していただきたいです。 もう1点懸念があります。福島県民健康調査は1000億円の巨大事業であり、その大半が医療行

          過剰診断があっても県民のために検査継続?第49回「県民健康調査」検討委員会を見てのマモルの4つの感想

          福島医大に変えてほしい5つの事

          まもるが福島医大の先生方にご意見申し上げる5つのこと 私たちの立場では、しばしば福島医大の先生方へ厳しくご意見することがあります。これに対して、特に福島県の皆様から、「福島医大の先生方は一生懸命がんばっていらっしゃるのにそれに対して批判するなんて」というご意見をいただくことが、よくあります。私たちとしても同じく医業に従事する方々を批判するのは本意ではないのですが、やはり何点か、「同じ医療者としてこれはさすがにいかがなものか」と思ってしまうところがあり、どうしてもここだけ

          福島医大に変えてほしい5つの事

          福島の甲状腺検査10の謎

          私たちは福島の甲状腺検査の問題点を一般の方々に理解してもらう活動をしています。その中で様々な予想外の困難を経験しました。福島県で行われている甲状腺検査は1000億円をかけた巨大な国家プロジェクトであり、様々な謎(闇?)があります。これらの謎については私たちも回答を持ちません。これから毎日1つずつお示しします。是非、メディアの方々に取材していただき、謎を解いていただきたいと思っています。 福島の甲状腺検査の謎1 過剰診断の弊害を県民に伝えようとした大津留晶氏・緑川早苗氏を誰が

          福島の甲状腺検査10の謎

          第21回甲状腺検査評価部会―過剰診断の被害に背を向ける福島県の涙ぐましい努力

          第21回甲状腺評価部会は2023年7月28日に開催されました。会議の参加者は下記のとおりです。 鈴木元(部会長) 保内郷メディカルクリニック医師 (日本放射線影響学会推薦) 旭修司 会津中央病院内分泌乳腺外科部長 (福島県病院協会推薦) 今井常夫 東名古屋病院名誉院長 (日本内分泌外科学会推薦) 片野田耕太 国立がん研究センターがん対策研究所データサイエンス研究部部長 近藤哲夫 山梨大学人体病理学教授 (日本病理学会推薦) 祖父江友孝 大阪大学大学院医学系研究科社会医学講

          第21回甲状腺検査評価部会―過剰診断の被害に背を向ける福島県の涙ぐましい努力

          子供や若者の甲状腺がんの早期発見は有害無益である過剰診断問題について公正で開かれた議論を 髙野徹 りんくう総合医療センター甲状腺センター長/大阪大学特任講師(論座の記事より)

          2021年08月24日に論座 RONZAに出ていた記事です。2023年7月にサイトが終了し、 とでていましたので転載させていただきます。 福島で「異常な事態」が起きている福島では現在、300人もの子供や若者が甲状腺がんと診断されています。このような世代が甲状腺がんに罹ることは極めてまれであり、福島県の人口を考えれば異常事態であることに間違いありません。この事態にどう対応すべきなのでしょうか。  福島の子供たちに見つかっている甲状腺がんのほとんどすべてが、症状が出る前の小

          子供や若者の甲状腺がんの早期発見は有害無益である過剰診断問題について公正で開かれた議論を 髙野徹 りんくう総合医療センター甲状腺センター長/大阪大学特任講師(論座の記事より)

          現在の福島では甲状腺検査を継続することは正当化されない-見直しを行わない「不作為」がもたらすもの 緑川早苗 宮城学院女子大学教授/POFF(ぽーぽいフレンズふくしま)共同代表 ( 論座の記事より)

          2021年03月08日に論座 RONZAに出ていた記事です。2023年7月にサイトが終了し、 とでていましたので転載させていただきます。 福島県民健康調査の甲状腺検査は、原発事故後の放射線の健康影響を懸念する住民の健康の見守りとして2011年10月から開始され、事故当時おおむね18歳以下であった全福島県民を対象として、超音波検査によるがん検診が継続されている。多い人ですでに5回目の検査を終えていることになる。 福島では推奨されないがん検診が継続されている甲状腺がんの超音

          現在の福島では甲状腺検査を継続することは正当化されない-見直しを行わない「不作為」がもたらすもの 緑川早苗 宮城学院女子大学教授/POFF(ぽーぽいフレンズふくしま)共同代表 ( 論座の記事より)

          「県民健康調査」検討委員会に検査の継続・中止をまかせていいの?

          第 48 回「県民健康調査」検討委員会 2023年7月20日が行われました。議事録が出るのは後日になるそうです。今回は福島の甲状腺検査に関して、重要な事柄がいくつも出ていましたので、ハイライトをnoteにしました。 1.出席者、欠席者・安村誠二氏が新たに放射線医学県民健康管理センター長に就任されました ・甲状腺学会理事長の菱沼昭氏は今回も欠席(2年前からずっと欠席を続けています) 2.注目する主な議論室月淳氏が『福島の甲状腺検査の一時休止』を求めたのに対し、鈴木元氏、志村

          「県民健康調査」検討委員会に検査の継続・中止をまかせていいの?

          福島県の甲状腺検査に関するアンケート:実施するのは本当に「県民のため」ですか?

          福島県の県民健康調査検討委員会において、現在福島県で子どもや若者を対象に実施されている甲状腺検査に関するアンケートを実施することが決定されました。その目的は、「甲状腺検査についての県民の意識を調査して、今後の検査のありかたや、県民に対する説明の仕方を考える上での参考にする」、とのことです。 検討委員会で示されたアンケートの案を提示します。 我々はこのアンケートについて2つの懸念を持っていますので皆様にお伝えしたいと思います。 1.福島県が県民に甲状腺検査について誤っ

          福島県の甲状腺検査に関するアンケート:実施するのは本当に「県民のため」ですか?

          福島の甲状腺がんの過剰診断問題の年表

          私たちが今まで作成したNoteや「福島の甲状腺検査と過剰診断」(あけび書房)「みちしるべ、福島県甲状腺検査の不安と疑問に応えるために」(POFF)に基づき、これまでの経緯を年表として簡単にまとめてみました(敬称略)。 2011年 甲状腺検査開始・3月11日  東日本大震災 ・10月9日 1000億円の予算をかけて福島県民健康調査が計画され、甲状腺超音波検査が始まる。 2012-13年 問題が発覚・このころから当初の予想に反して甲状腺検査で多数の甲状腺がんがみつかるようにな

          福島の甲状腺がんの過剰診断問題の年表

          専門の先生に若い人の甲状腺がんに内視鏡手術をお勧めしない理由をお聞きしました

          ①  実施施設は限られる海外では内視鏡手術は広まっていませんし、国内でも実施しているのはごく一部の施設だけです。一般的に広く普及した手術方法ではありません。 ②  通常の手術より実は侵襲が大きい。内視鏡手術は、一般的には皮膚を切ったり剥離したりする範囲を小さくすることによって体への負担や痛みを小さくし、手術後の回復を早くするために行われることが多いです。甲状腺は首の皮膚のすぐ下にあります。ですから、通常の手術では皮膚を切開したら間もなく甲状腺が出てきます。とこ

          専門の先生に若い人の甲状腺がんに内視鏡手術をお勧めしない理由をお聞きしました

          マモルの索引

          甲状腺がんに関する情報提供福島の甲状腺検査について 福島の甲状腺検査について、科学的にわかっている事実だけを簡単に説明。(「かもしれません」、「可能性があります」等の曖昧な説明は省いています) 福島の子供の甲状腺がんに関する正しい情報を知ってください 福島で甲状腺がんが増加しているのは放射線の影響ではない 福島で甲状腺がんが増加しているのは過剰診断が原因 甲状腺がんの初期の症状ってどんなものか 科学的な議論をする上での学術論文の信頼性について 専門の先生に若い人の

          マモルの索引

          第65回日本甲状腺学会学術集会でなにがあったか

          この話をする前に、今まであったことのおさらいです。 2021年11月18日、第64回日本甲状腺学会学術集会の評議員会にて高野徹氏が、理事会が日本甲状腺学会雑誌の過剰診断特集号の内容を否定する広報を出したこと、「福島では甲状腺がんの過剰診断は起こっていない」とする論文が編集委員会の意向を無視して理事会の主導で出されたことについて、「理事会が科学的に誤った見解を会員に押し付けているのではないか」と質問。 これに対して山田正信理事長は「過剰診断についてはまだ学会としては検討中ですと

          第65回日本甲状腺学会学術集会でなにがあったか