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福島の甲状腺検査10の謎

私たちは福島の甲状腺検査の問題点を一般の方々に理解してもらう活動をしています。その中で様々な予想外の困難を経験しました。福島県で行われている甲状腺検査は1000億円をかけた巨大な国家プロジェクトであり、様々な謎(闇?)があります。これらの謎については私たちも回答を持ちません。これから毎日1つずつお示しします。是非、メディアの方々に取材していただき、謎を解いていただきたいと思っています。

福島の甲状腺検査の謎1 

過剰診断の弊害を県民に伝えようとした大津留晶氏・緑川早苗氏を誰が、何の目的で福島医大から排除したのか。

当初甲状腺検査を担当し、検査の害を県民に伝えるのに積極的であった大津留晶氏・緑川早苗氏は2019年に検査の担当を解任されました。その後福島医大を去っています。両氏の活動を封じるためだったとすればまさしく令和の白い巨塔ではないでしょうか。この人事は誰が、何のために進めたのでしょうか。
(note 福島の甲状腺がんの過剰診断問題の年表 )


福島の甲状腺検査の謎2 

甲状腺学会雑誌事件:元福島医大の緑川早苗氏が担当編集した甲状腺学会雑誌「過剰診断を考える」について、学会幹部が言論弾圧ともとれる対応をしたのはなぜか

2021年に緑川早苗氏が編集担当として日本甲状腺学会雑誌特集号「過剰診断を考える」が発行されました。この中には福島甲状腺検査についての懸念が記載されていました。発行されてすぐに学会幹部が広報で内容を批判し、また編集委員会に対して指導が入りました。

自由な言論が最重要視される学会では極めて異例の対応です。一部の会員は言論弾圧ではないかと批判し開かれた議論を要求しましたが、学会幹部はいまだに応じていません。どうしてこのような対応をしたのでしょう。外部から何らかの圧力があったのでしょうか。(note 日本甲状腺学会雑誌「甲状腺癌の過剰診断を考える」の号をめぐる経緯 )


福島の甲状腺検査の謎3 

ヘルシンキ宣言を逸脱している?福島の甲状腺検査、なぜ福島医大の倫理委員会はお墨付きを与えた?

ヘルシンキ宣言とは医学研究が非人道的な人体実験にならないように規制するガイドラインです。福島の甲状腺検査はいくつかの点でヘルシンキ宣言から逸脱しており、子供を対象とした人体実験ではないか、という批判を招きかねない状態になっています。
普通の審査では大学の倫理委員会で承認されるのは難しいのでは?しかし福島県は、「福島医大の倫理委員会が問題ないと判断したから大丈夫だ」、と主張。
これが本当だなら、福島医科大の倫理委員会の委員は検査の被害者に対して重大な責任を負うことになります。どなたがお墨付きを?また本当に全ての事項に対しての審査がなされたのでしょうか。(note 福島県「甲状腺検査」の医学倫理問題、なぜ軽視されてしまったの?


福島の甲状腺検査の謎4 

福島で甲状腺がんと診断された子供や若者たちは国際標準の正しい治療を受けているのか

甲状腺がんと診断された300人の子供たちは福島の甲状腺検査を推進してきたごく少数の医師がほぼ独占的に診察しています。このような体制は危ういのではないか、という意見が2019年の福島県民健康調査検討委員会で出されています。過剰診断・過剰治療の批判を避けるために偏った診療方針が取られる可能性があるからです。しかし、県は診療体制を改善する努力をしませんでした。
彼らが現在どうなっているか、と言うことについては個人情報保護を理由に県は一切情報を出しません。最近、テレビや新聞で一部の患者の現状が報道されました。私たちはこれらの報道にびっくりしました。
例えば、①甲状腺がんの手術の後で厳しい食事制限をするように言われた、②明日の命もわからないような説明をされた、③半日もかかる大手術になった、等標準的な治療ではありえない話が次々にでてくるからです。彼らは本当に“正しい”治療を受けているのでしょうか。

福島の甲状腺検査の謎5 

福島県の有識者会議の司会者は、なぜ「過剰診断の害」「検査の中止・縮小」の議論を妨げるのか

福島県の有識者会議では検査の弊害の懸念は2014年から提示されていますが、「過剰診断の害」「検査の中止・縮小」についての議論はほとんどされません。その主な原因は司会者の姿勢にあります。
特に顕著なのは鈴木元氏で、2018年の甲状腺評価部会で髙野徹氏が過剰診断の懸念を示したのに対し、「論文の読み方にバイアスがかかっている」と痛烈に批判し、また2023年の県民健康調査検討委員会で室月淳氏が検査の一時中止を提案した時も韓国とは違う、という主張して退けました。
中立性を要求される司会者でありながら自ら科学的に偏った見解を述べて議論を遮るのです。また、氏が部会長をしている甲状腺評価部会にいたっては検査体制についての議論はしない、という方針まで決めてしまいました。
程度の差はあれ、他の方も同様の傾向があります。彼らは誰の意向を受けてこのような動きをしているのでしょうか。(note 第21回甲状腺検査評価部会―過剰診断の被害に背を向ける福島県の涙ぐましい努力 )


福島の甲状腺検査の謎6 

福島県の有識者会議の委員たちはなぜ過剰診断問題に沈黙するのか?

過剰診断の被害がこれだけ拡大しているというのに問題を会議で指摘した有識者会議の委員は極めて少数で、しかもほとんどの方が既に辞任(解任?)しています。
学会では、過剰診断について意見する人たちが“指導”される、ということは頻回に起こっており、その結果口を閉ざしてしまった方々も実際におられます。
福島県の有識者会議のメンバーの中には、研究助成や医局人事で、環境省、福島医大、そしてやはり過剰診断の被害が起こっていたのではないかと言われているチェルノブイリの医療支援団体と密接な利害関係を持っている方々もおられます。同様の“指導が”がなされていたりしないのでしょうか。


福島の甲状腺検査の謎7

福島県民に「過剰診断の被害」を伝えることを止めているのは誰か。

福島県の県民に対する広報では、「過剰診断」という言葉は一切出てきません。まだ福島医大の先生方も決して「過剰診断」を認めません。この用語を使うことがタブーになっているようです。いったい誰の指示なのでしょうか?( note 福島県の甲状腺検査について県の住民に対する『説明』の問題点 )


福島の甲状腺検査の謎8 

福島県民に「IARCの提言」を伝えることを誰が止めているのか。

2018年にWHOのIARCが「原発事故後であっても甲状腺スクリーニングをするべきではない」という勧告を出しました。この勧告文書は日本の環境省が税金から予算を出してWHOに依頼して作成してもらったものです。しかし、福島県・福島県立医大・環境省はこの内容を県民に伝えようとしていません。誰が、どういう理由で止めているのでしょうか? ( note 福島県の甲状腺検査について県の住民に対する『説明』の問題点  )


福島の甲状腺検査の謎9 

トーマス事件:イギリスの教授が福島でIARCの提言を改竄して報告したのはなぜか

イギリスのジェリー・トーマス教授は「原発事故後であっても甲状腺スクリーニングをすべきでない」としたIARCの提言の作成者の一人です。彼女は2021年と2022年に福島医大に招かれて福島で講演しました。その講演でIARCの提言を改竄してあたかも福島の甲状腺検査が提言に沿っているかのような説明をし、福島医大の参加者がそれに同調しました(公開されていた講演動画は現在は削除されています)。
これは科学者としての信用を失墜させる行為で、本人になんらかのメリットがあるとは思われません。どうして2回にもわたってこのようなことをしたのでしょうか。 (note トーマス事件その1 福島の甲状腺検査はIARC提言のモニタリングであると専門家が説明したことについて  )
(note トーマス事件その2 日本小児科学会:専門家たちは福島で甲状腺検査について何を語ったのか? )


福島の甲状腺検査の謎10 

環境大臣の爆弾発言、なぜ報道されなかったのか

2022年に当時の環境大臣の山口壯氏が、記者会見で読売新聞の記者から過剰診断に対する対応を聞かれ、「過剰云々は自分の関知するところではない。」と発言しました。私たちはこの発言に非常に驚きました。環境省として過剰診断に伴う子供の健康被害を無視する姿勢を明確にしたからです。しかし、なぜかこの発言は報道されませんでした。記者がその重要性を認識しなかったのでしょうか?それとも何か他の理由があったのでしょうか。

山口環境大臣は以前から『過剰診断』という言葉は絶対言わない 顕著な例
7分頃から
山口環境大臣会見(令和4年2月15日) 
読売新聞記者「過剰診断の弊害について大臣はどう考えるか。」
山口大臣「自分が過剰とか云々とかいう立場ではない」


心あるメディアの方々、どうか謎の解明を

福島の子どもたちは、せっかく被曝の健康被害を逃れたのに、かえって甲状腺がんに苦しむ、という極めて理不尽な状況に放置されています(あえて、放置と言いましょう。行政や学会が完全に責任放棄をしているからです)。これらの謎(闇)は現在の医療界の問題をそのまま体現しているもので、実際、日本は同じような経緯で神経芽細胞腫の過剰診断・子宮頸がんワクチンの接種中止と、繰り返し健康被害を出してきました。福島の甲状腺がんの過剰診断は歴史的な愚行として遠からず医学の教科書に記載されることでしょう。
わたしたちはこのような状況を福島県民に伝えようと努力してきました。しかし、正しい情報の伝達を阻害する壁はあまりに厚く、限界がありました。今こうしている間にも、危険な医療行為であることを知らされなかった中学生や高校生の被害者が増えていることを非常に残念に思います。どうぞ心あるメディアの方々、福島の甲状腺検査の真の姿を伝えてください。