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なぜ『miss you』の幾つものトレーラー映像には桜井和寿しか出演していなかったのかを考察する。#Mr.Children

ずっとこのことを疑問に思っていたファンは
少なからずいると思う。
瑞野の個人的な解釈をまとめてみる。

思えば、アルバム「miss you」の存在が初めて世に放たれたとき、その始まりとなるティザー映像は、桜井さん1人がギター1本だけを手にし暗い空の下ギターを弾き語り「ケモノミチ」の1フレーズを歌うものだった。

ミュージックビデオで桜井和寿1人だけが出演することはこれまでにも多くあったため、さほど珍しいことではなかった。まして今回は「収録全曲未発表」「タイアップなし」というMr.Children史上最もミステリアスな作品であるため、この閉鎖的で期待感を煽るトレーラーは非常に巧妙であったと言えよう。

その後発表されたアルバム全体のトレーラーでは、一部の楽曲が背景に流れている。「4人組バンド・Mr.Children」としての輪郭ははっきりと出しつつ、しかしやはり画面の中の映像に出てくるのは桜井さん1人だけだった。ここまで一貫して1人での登場を貫くことに、多少なりとも違和感を覚えた方はいただろう。

「君に会いたい 何していますか 気分はどう」
「ああ 新しい日々も君が恋しくて」
「たまらなく君に会いたかった」
「もう一度 その温もりに その優しさに包まれて生きたい」
「そう 君じゃなきゃ 君じゃなきゃ」
「誰も一人じゃない きっとどっかで繋がって」

miss you ホールツアーはニューアルバムを主体としたツアーながら、コアなファンを狙うかのようにレア曲も数多くラインナップされた。しかしその曲たちはいずれも、明らかに「人恋しさ」が見え隠れするセレクトだったことはもはや周知の事実だろう。

アルバムだけを聞いていれば、これは単なる一人の男の暗く鬱屈した気持ちを体現するだけのじっとり憂鬱なアルバムで完結していたかもしれない。しかしこのセットリストによるホールツアーが実施されたことで、アルバムの「真の姿」が徐々に徐々に、見えてきたように思えた。

そして、アリーナツアー発表。
ついに4人が映像の中で集結した。
しかも、楽器を持たない生身のままで。

楽器を持たずパフォーマンスをする。その躍動感ある映像は「Mr.Childrenはやはり4人でなければ決して完成しない」ということを、言葉なく、しかしはっきりと強く主張するかのような迫真の完成度だった。その映像に、奄美にいたミスチルファンは皆息を飲んだことを覚えている。

半ば「桜井和寿ソロプロジェクト」とも捉えられかねなかったここまでの演出はしかし、「孤独」という本作のコンセプトを明確に体現したと言う点では大きな意味を与えたように思う。

開催されなかった幻の「SOUNDTRACKSツアー」以降、オーディエンスとの直接的な声のやり取りを制限され続けたこの数年間。音楽はかなり一方通行的な状態となり、受け手のレスポンスが届けられない・伝えられないというもどかしい状況に。そんな最中で生まれた幾つもの曲が「miss you」には纏められている。

パンデミックを超えて、やがて日常は孤独から再び連帯へ。音楽は、1人から4人、そして不特定多数へと再び届き始めた。「音楽は孤りだと完成しない」という紛れもない事実を今一度改めて体現するために、「miss you」のストーリーは始まったのかもかもしれない。これらネット上に放たれた映像も含めて、アルバムの全体像はようやく見えてくるだろう。

とすると、ホールツアーからアリーナツアーへ
この思いはどう昇華されていくのか。
より多くのオーディエンスの前で
どのように「人恋しさ」は体現されていくのか。

ただただ、今は期待しかない。
続報を待つばかりである。



おしまい。



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