【詩のようなもの集】 夜の色
【夜の色】
夜の灯
耳鳴りを呼ぶノイズ音
何かが起こる予感
喉元過ぎるまで熱さも暑さも忘れ
開きかけたクローゼットの奥
何かがこっちを見ているような・・・
不安を呼ぶ心臓のリズム
夜の色
【続く夏の夜】
自分の痛みに鈍感で
人の痛みに敏感でいられたら
街の風は緩やかになると思ったのに
昨日より強い熱風が心へ吹き荒ぶ
夏はまだ終わらないよ
何も成し得てないから
昔書いたメモの一端から言葉を掬い
記念日でもなんでもないけど
今からでも遅くない夏の夜
室外機や換気扇が壊れるその日まで
自分に言い聞かせるように
涼しい風を呼ぶ詩のようなもの記していく
【川のような心】
静かな青空 窓越しの深謀
同じところに居られない僕の性格
要らない音 見えない景色
浅い川で寄り道 仇波が繰り返し
いつの間にか見逃してた
通り過ぎてしまった夢の扉
深い川は静かに流れて
季節の変わり目 ずっと ずっと
【どっちにしろ】
本当のところこういった訳で
今の結果になった
そう説明したところで君はこう言う
「どっちにしろお前が悪いんだ」
その通りだけどそうじゃない
どっちにしろ無駄に終わる言い訳で
余地の無い弁明に過ぎないか
理屈と感情は無関心なフィルターに
どうやっても今は貫通しない
分かってて繰り返す距離の詰め合い
ほんの少しのニュアンス違いが
意図しない誘因を起こし
どっちにしろ抱えてた感情を爆発させる
本当のところこういった訳で
今の結果になった
そう説明したところで最後は慰め合い
「どっちにしろこうなる運命だった」
通りすがりの野次が真実になって
燻ったまま消えていく僕の中の真実
【迷彩】
空足を踏んでは生まれる迷彩色
悩みの坩堝を避けて
愛や恋を日常に取り入れる
それを普通にしている鮮やかな四季彩
悩むこと自体を贅沢だと誰かが言う
二の足踏んで他人の轍眺めて
登ることない青天井眺めて
自分の過ちは挿さったまま
空足を踏んでは生まれる迷彩色
【センチな日】
もう終わっていいよな
空に呟いた言葉はそのまま遠く
何を見ても聞いてもカラッポ
今の自分に足りないのは
明日を掴む方法論なのか?
齧った雑学を試して何も起きなくて
空想だけが頼りでやるせなさは広がって
伸びしろも依りしろも
ないものねだりに過ぎず
「もう少し若けりゃなぁ」
その口癖が身を包むように
老いを加速させて心の動きを固める
付けられた刀の生傷も薄くなり
文透(もんすかし)の装飾に拘り
戒めを傍らに携えたまま
何処にも行かない日々
ただただ退屈だから
今の僕でも僕でいられる方法で
身を寄せて早めの就寝
【幻想的現実】
夢は逆夢
背に蜘蛛
凛気を勇気と言い換え
裏にライオン
理非を問わない絶望
影に蜜蜂
言葉を掬って救う
ファミレスの裏の犬
空を飛ぶ自由の翼
幻想的な未来の自分
【エンドロールの途中】
エンドロールの途中に寄り道
喜雨を浴びて道草伸びて
小さなノスタルジーの芽が出て
本を書くように活字を並べるも
溶けた意識を思い出せないまま
大事な言葉は胸の中を通り過ぎて
引力のような星の導きを待ち
震える脚は運命を跨ぐ眠れない夜
終わりかけの物語は影に雨が降る
エンドロールの続きを表参道で彷徨う
【来し方行く末】
来し方行く末 未知の道
幾つもの分岐点 右往左往
結果より過程に重きを置き
死んでいく少し前の走馬灯が
出来ることなら愛で満ちるように
この先僕らの道が交わることがあるなら
その瞬間に至るまでの全てを分け合おう
【夏のおはよう】
夕暮れ時
蝉の声が止み
にわか雨
目が開いて
雷の音に消される
夏のおはよう
最後まで読んでくれてありがとうございました。
良かったら他の詩のようなものもぜひ。
水宮 青