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じわじわと秋に染まる今日のはなし。

買い出しの帰り道。バス停から降りて家まで歩く。排気ガス、雨のアスファルトの匂いに混ざって、ほのかに香る甘い匂い。目が悪いのを補填するように鼻はよく利く。金木犀だ。

金木犀は私を見ていてくれる、何代も前のご先祖さまのような植物だ、と勝手に思っている。実家の庭の端っこに大きな金木犀の木があった。今もあるけれど、数年前まだ元気だったじいちゃんがばっさり切ったから、今はだいぶこじんまりしている。

今、私は職場が所有しているアパートに住んでいる。そこにも偶然あった。実家の金木犀より若い木がベランダのすぐ目の前にある。金木犀の存在に気がついた入社1年目の秋は、なんだか味方ができたように思えて、ほっとした。

金木犀の匂いは切なくなる。もう秋だな、今年もあと少しだな、と思うから。

今日は文庫本を4冊まとめ買いした。最近無性に読書がしたい。読書の秋。

さっき、さつまいもを刻んだ。固いさつまいもに少々苦戦しながら、猿のことを思い出した。

地元に猿にえさをあげられる施設があって、小さい頃よく父に連れられて行った。猿は天敵のはずだけど(兼業農家だから)、父はこの施設がお気に入りだった。だからよく連れて行かれた。猿のえさ(小さい袋に山盛りで100円のひと口サイズの生のさつまいも)を、手渡しで金網越しにあげる。金網から手を出して「早くくれよ!」とキィキィ言っているおさる達は迫力があった。幼い私にはその圧が怖かった。途中で心が折れて、わたし用のさつまいもの半分以上はいつも父が代わりにあげていた。生のさつまいもをぼりぼり食べる猿を見ながら、「おいしいのかな?」と思っていた。生のさつまいもって、とても固いし。

猿のことを思いながら刻んださつまいもは炊き込みご飯にした。塩昆布と炊き込むのがこだわり。今、ピーピーピーと炊飯器が鳴った。さつまいものいいにおい。食欲の秋。

"当たり前"って変わっていくと思い知ったから、当たり前に次の季節が来ることがうれしいなぁと思った今日のはなし。



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春瀬 蒼

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