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-映画紹介-『西部開拓史』 巨大で美しい画面に血塗られた歴史が語られます!

《乱れ撃ちシネnote Vol.15》

番外編-60年前のノートより-

『西部開拓史』 ヘンリーハサウェイ監督、ジョン・フォード監督、ジョージ・マーシャル監督


【Introduction】

一昨日書いた『ニュールンベルグ裁判』は重厚な作品だったけれどこの年年最後に観た作品も超弩級でした。
ライフ誌に連載された絵物語をヒントに脚本家のジェームズ・R・ウェッブが195冊の歴史書をもとに脚本を書き1962年に公開された作品です。

1830年代末からある家族の三代に渡る50年間の軌跡を軸にした全5話で語られるアメリカ開拓史。西部劇映画の集大成とも言える作品で多くの西部劇スターが共演しているこの作品は3人の監督が演出しています。

第一話 河(1830年代末)
ヘンリー・ハサウェイ

第二話 平原(1850年代)
ヘンリーハサウェイ  

第三話 南北戦争(1861年〜1865年)
ジョン・フォード

第四話 鉄道(1868年)
ジョージ・マーシャル

第五話 無法者(188年代末)
ヘンリーハサウェイ

主な出演者。
ジェームズ・スチュアート、デビー・レイノルズ、グレゴリー・ペック、ジョージ・ペパード、ジョン・ウエイン、リチャード・ウィドマーク、ヘンリー・フォンダ。

ナレーター:スペンサー・トレイシー

【Prologue】
インディアンと白人との戦いの絵をバックにして流れる4分半の序曲はまるでオペラの開幕のようです。
今どきのサブスク映画ファンはおそらくこの部分を早送りするでしょうね。
この仰々しい序曲を耐え忍んでこそインターミッションを挟んだ162分の長編叙事詩のような長大な西部劇の楽しみが増すというもの。
な〜んて思うのは年寄りだけかな。

1830年代末になると、
インディアンと仲良く共存しながらひっそり狩猟生活を営むわずかな白人しかいなかった北米大陸西部に徐々に東部から西部開拓の夢を追ってオハイオ川を下る白人たちが出てきました。

主人公プレスコット一家も一攫千金を夢見て全財産をはたいてイカダでオハイオ川を下り始めたのです。
この一家の三代にわたる波乱万丈な生涯を描いたのが『西部開拓史』です。

白人たちが先住民たちの土地に開発の手を広げたことにより様々な戦いが始まります。
・東部の都会人と西部の田舎者との争い。

・2大鉄道会社の開発競争。
セントラルパシフィック鉄道とユニオン・パシフィック鉄道は協定を破りインディアンの土地を侵略し始める=白人は嘘つき=約束を守らない。

・羊飼いと牛飼いとの争い。

・無法者と法律との争い。

・開拓民と彼らの金品を狙う盗賊団との争い。

・金を巡る戦い。
カリフォルニアで金鉱が発見されたことによりゴールドラッシュが起こり一攫千金を狙った者たちの血なまぐさい争い。

・西部を目指す幌馬車隊とそれを阻止する原住民との戦い。

・南北戦争の勃発。

開拓者精神という美名の裏で無数の人々の血が流されたのがアメリカ開拓の歴史なのです。

【Trivia & Topics】
✻都内唯一のシネラマ上映館。
シネラマ劇場映画第一弾のこの映画をぼくが観たのは1962年12月29日(土)。
14歳(中学3年)の冬休みでした。
劇場は銀座一丁目にあった今はなきテアトル東京です。

1981年10月31日 テアトル東京最後の日です。

✻画面の美しさについて。
「シネラマ」とは3本に分割された70mmフィルムを同時に再生してひとつの映像として繋げ、アスペクト比2.88:1という超横長サイズのワイドスクリーンで上映する特殊規格のことです。
撮影には3つのレンズとフィルム・カートリッジを備えた巨大な専用カメラを使用し、劇場で上映する際にも3カ所の映写室から別々のフィルムを同時に専用スクリーンへ投影します。
専用スクリーンも縦9m、横30mという巨大サイズ。しかも観客席を包み込むようにして146度にカーブしていました。

さらに、サウンドトラックは7チャンネルのステレオ・サラウンドを採用。
各映画館には専門の音響エンジニアが配置され、劇場の広さや観客数などを考慮しながらサウンド調整をしていました。

まるで観客自身が映画の中に迷い込んでしまったような臨場感を体験できるいわば現在のIMAXのご先祖様みたいなシステムで、この正式な企画で制作されたシネラマ映画は『西部開拓史』『不思議な世界の物語』の2本だけです。

✻フィルム同調のずれ。
この作品の前に公開された『これがシネラマだ』(1952年)を観に行った時には三本のフィルムの同調がずれるというハプニングがありました。
ちなみに本作品も画面の横三分の一の部分2箇所をよく見てください。
人間が横切る時などほんの少し映像が歪むのが感じられます。

✻全て手縫いの衣装!
「シネラマ」方式はカメラの手前から数キロ先の背景まで焦点がブレず解像度が高いので通常の35mm映画であれば潰れてしまうようなディテールまできめ細かく再現できます。

そのため最初に用意した衣装はミシン目が確認出来たので全て手縫いで作り直しました。西部開拓時代にミシンは存在しませんので誤魔化しが利かないというのはスタッフにとって相当なプレッシャーだったはずです。

✻インフラが完備されたことにより古き良き西部は失われました。
鉄道が登場し電線網が敷かれ郵便(電報)が登場するなどインフラの完備が暮らしや文化を大きく変え古き良き西部は失われていきました。

✻第36回アカデミー賞 脚本賞、音響賞、編集賞受賞。

本作はシネラマ方式を思う存分楽しめる最高のエンタテイメント作品です。
初めて新宿のアイマックスシアターでアイマックス方式の映画を観た時の迫力にも負けていません。
スマホでは分かりませんが我が家の48インチのプラズマ・ディスプレイでも画面の美しさはまったく損なわれていませんでした。
ワイド感と遠近感とが織りなす西部が本当に美しい。

【6 star rating】
☆☆☆☆

【reputation】
Filmarks:☆☆☆★(3.6)
Amazon :☆☆☆★
u-next    :☆☆☆★

さて、

1962年12月29日(土)
14歳(中学3年)の時の感想です。

主演:キャロル・ベイカー、カール・マンデイ、グレゴリー・ペック、ロバート・プレストン、ジェームス・スチュアート、ジョン・ウエイン、ジョージ・ペパード、リチャード・ウィドマーク、デビー・レイノルズ。

迫力のイチゴにつきる。普通の場面はあまり面白くないけれど、第一に開拓民がオハイオ川をイカダで下る場面、目がまわってしまった。
第二にレイノルズ、ペック達がインディアンに追いかけられる所。これがまた『駅馬車』のような迫力(シネラマと普通版じゃちがいすぎるけどネ)。南北戦争はあんまりスゴクなかった。
第三にバッファローのぼうどう、これもスゴかった。
ラストに列車の中での射ち合い。これが最高で手にアセニギルということばズバリその通り。とても筆では書けない。

しかしまだシネラマには改める所がある。
たとえばスクリーンのつぎめ、だいぶよくなったがまだ少し!それに画面が円形みたいになること。これももっと直せないものか。
でもラストのシーンで全部そんなこと忘れて手にアセがビッショリついていた。
批評:A中

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