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チャネラー?で共感覚者ならではの巧みな日本語がキラキラ光ってます。

デビュー作『心象スケッチ・春と修羅』は全く売れず大惨敗したにもかかわらず八ヶ月後の大正13年(1924年)12月1日に初の童話集『イーハトーヴ童話 注文の多い料理店』が発売されました。

【きっかけ屋☆映画・音楽・本ときどき猫も 第59回】

発行所:東京光原社

初版:1,000部

装丁・挿絵:菊池武雄

四六判194頁

定価:一円六十銭

賢治は印税代わりに100部受け取ってます。


【収録された9編の童話】


・どんぐりと山猫


・狼森と笊森と盗森


・烏の北斗七星


・注文の多い料理店


・水仙月の四日


・山男の四月


・かしはばやしの夜


・月夜のでんしんばしら


・鹿踊りのはじまり


この本も全く売れず出版社が困り果てていたのを見かねた賢治は父から300円借金して200部買いとりました。

ことほどさように賢治さんは優しさあふれる自己犠牲の人なのです。

注文の多い料理店の序文にも驚愕することが書かれています。

これらの物語は自分が書いたのではなく林や野原を散歩した時に林や月の光が語りかけてくれたことを自分は書き写しただけですから自分にもワケの分からないお話なのですと書いています。

宮沢賢治はチャネラーだったのでしょうか?

しかも賢治は共感覚の持ち主です。

共感覚者は音を聴くと色が見える、文字を見ると色が見える、痛みを感じると色が見える、何かを味わうと手に形を感じるなど五感が混ざり合って認識してしまいます。

海外の研究では2,000人に一人の割合で共感覚者がいると言われています。

賢治のオノマトペの特異さもそれを現しています。

ゆれるゆれる言葉がゆれる、揺れて響く賢治のオノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)をご紹介します。


「クラムボンはわらったよ」
「クラムボンはかぷかぷわらったよ」

『やまなし』より。


ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったやうに思ひました。
『銀河鉄道の夜』より。


一本のぶなの木のしたに、たくさんの白いきのこが、どってこどってこどってこと、変な楽隊をやってゐました。
『どんぐりと山猫』より。


トパァスはツァラツァランとこぼれて下のすゞらんの葉に落ちそれからきらきらころがって草の底へもぐって行きました。
『十力の金剛石』より。


間もなく地面はぐらぐらとゆられ、そこらはばしゃばしゃくらくなり、象はやしきをとりまいた。
『オッペルと象』より。


たうもろこしの影法師を二千六百寸も遠くへ投げ出すころからさっぱりした空気をすぱすぱ吸って働き出し・・・
『カイロ団長』より。


「てめいみたいな、ぐにゃぐにゃした、男らしくもねいやつは、つらも見たくねい。」
『「ツェ」ねずみ』より。


土神は今度はまるでべらべらした桃いろの火でからだ中燃されてゐるやうにおもひました。
『土神ときつね』より。


鹿は大きな環をつくって、ぐるくるぐるくる廻ってゐましたが、よく見るとどの鹿も環のまんなかの方に気がとられてゐるやうでした。
『鹿踊りのはじまり』より。


宮沢賢治は奔放な日本語の使い手でした。

言葉独特の響きに浸りながら宮沢賢治の物語の世界を音で浴びてください。

「注文の多い料理店」

20分程です。

ゆったりした時間を過ごせる時にお楽しみ下さい。

いかがでしたでしょうか宮沢賢治ワールドは。

この続きはまた明日。

明日もお寄り頂ければ嬉しいです。

連載はここから始まりました。

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2002年に書き始めたブログ「万歩計日和」です。


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