作品タイトル : ダブルス! 作品概要 バドミントンを題材にした青春スポーツ漫画。 才能はあるが努力の苦手な少年と、運動音痴だが努力家の少女。主人公二人の成長や恋、ライバルたちとの戦いを描く。また、王道スポーツ漫画らしく、超能力的大技なども段階を経て登場する。 少年漫画の激しいアクションと少女漫画の繊細な恋愛模様を混ぜ合わせた作品という意味も込め、タイトルを『ダブルス!』とした。 作品のテーマ 本作主題は『才能や努力の限界も、組み合わせによって無限大の可能性を得る』 タイ
【冬】 叶うなら 忘れないでと 言いかけて 涙さえ 冷たい風に 凍る冬 【春】 桜舞う 陽気な風に 靡く花 爛漫に咲く 春の若者 【四季】 言えないよ 季節が変わって 離れても 忘れられない 君が好きだよ
おめでとう と、心から伝えた それしかできなかった 祝福に見返りはない あたしは嬉しかったのかもしれない だけど、そんな気持ち、一瞬で消える 残るのは燃え滓のような灰色の孤独感だけ 一年待ってようやく来た連絡が、これだ あたしはふらふら歩きたくなった どこまでも歩きたくなった 知らない道でもよかった それを望んでいた 不気味なほど鮮やかな、ピンクと紫とオレンジの空の下、迷宮のような住宅街を地図もなく歩いた 4年間願い続けたものは叶わなかった いや、まだ、なんて希望持ってみる?
「なんでそんなことも分からないんだ!」 理性を失った教師は、クリップボードで航平を何度も叩いた。航平は黙ったまま、困った顔したまま、特に何も言わなかった。 教師は言った、 「どうだ、何か感じたか? 思った事を言ってみろ、さあ言ってみろ!」 航平は黙っていた。 「いいから思ったことを言ってみろ!」 教師はもう一度クリップボードで航平を叩いた。 航平はなんとか言葉を捻り出そうとして、 「早く帰りたいと思っていました」 と、答えた。教師は顔を真っ赤にしてクリップボード
大好きなコウ君。 今日もずっと下を向いたまま、 どうしたの? あたしは、コウ君の機嫌を探る。 怒ってる? 嫌な事あった? つまならない? それとも、ただ疲れただけ? コウ君のこと、ずっと見てる。 飽きもせず、よく見ていられるね、って友達には言われる。不思議ちゃん、と嘲られるあたしだ。 自分でも不思議。 彼のこと、ずっと、ずっと瞳の中に据えられる。 コウ君は動かない。 そんなところも好きだ。 眠っているわけではない。 目は、はっきりと開いているのだもの。 何を見つめている
両手、両足を縛られたまま、口の中に銃口を差し込まれた。亘は涙目になりがらも必死に抵抗した。抵抗といっても、縛られた両足をばたつかせることくらいしかできなかった。 叫ぶこともできず、ただ相手の意向に従うしかない。目の前にいる日本人スパイ、日野智子が引き金を引かないことを祈るしかない。 運命は変えられない。ただ相手に委ねるしかない。相手の気分や思考、価値観や信念によって、自分の生き死にが決まる。なんの抵抗も意味を為さなかった。日野智子が引き金を弾けば、死ぬ。それだけだ。
アリスが見た亘の未来。 その話が記憶に残らないほど、アリスが見せてくれた赤い石の話は強烈だった。 赤い水晶状の《時の欠片》と呼ばれる石。この石には1000年以上前から、アボリジニ達に伝わる伝説があるという。『この石には時の力が込められていて、力が満ちれば過去にも未来にも別宇宙にも自由に行き来できる』という伝説だ。 この話をアリスから聞いたボブは、アボリジニ達に別宇宙という概念があったことに驚いたという。亘は別に、そこには驚かなかった。それよりも、元の世界に戻れる可能性
『2023年が、戦前?』 俺は現代、戦後の世界にいる、そんな認識しかなかった。戦争は過去に終わったもの、だった。ロシアがウクライナに侵攻するという戦争は起きていた。でも、それは外国で起こった事……対岸の火事……そんな認識だった。 『僕のいた世界では、2030年に世界中の国々を巻き込む巨大な戦争が勃発する。僕たちはそれをAI戦争と呼んでいた』 『AI戦争!?』 『ああ、AI戦争はその名の通り、AIによって引き起こされ、AIによって拡大した戦争だ。それは国家間の戦争であ
ボブ•ホワイトを探して3日が過ぎた。 ブリスベンのバックパッカーズ•ホテルに滞在しながら、ボブの所在を追う。 与えられた費用は200ドル。1泊およそ15ドルだから、もう半分の100ドルしか残っていない。 初日にレストランに入ったのが痛かった。 ハンバーガー1つ20ドルは高すぎる。しかも、どうしてもビールが飲みたくなり、一杯飲んでしまった。それが8ドル。チャージ料金合わせて30ドルが初日の夜に消えたのだ。 そもそも酒に酔わなきゃこの世界に来なかったことを思えば、禁酒
夜も更けて、盛岡……でなく、奥北県は4月でも大分冷え込んできた。まだ桜も咲いていない。来週辺り咲いて、ゴールデンウィーク頃に満開となる。そういえば、ゴールデンウィークなる連休がこの世界にもあるのだろうか? それよりも、奥羽越列県同盟共和国、という名前は長過ぎて非常に不便だ。他の人はなんて呼んでるんだろうか? 亘は朝鮮民主主義人民共和国を思い出した。あの国の名も長く、日本では多くの人が『北朝鮮』と呼んでいた。北朝鮮の正式名称を言えない人もたくさんいるだろう。 話は戻っ
「オカルト界では有名な男でね、世間は彼を詐欺師とか妄想男、虚言癖だのと嘘つき呼ばわりしているが、きっと君の力になってくれるだろう」 斧寺さんが紹介してくれたのは、オーストラリアにいるボブ・ホワイトという男だ。彼は「異世界から来た」という論文を書いて一躍有名になったが、証拠不十分で学会を追放された変わり者だ、という。専門は異世界旅行。今はオーストリアでワーキングホリデーワーカー達の就労先を斡旋するブローカーになっているという。 亘は通訳も頼んだが、第十一師団はそこまでの
【冬】 叶うなら 忘れないでと 言いかけて 涙さえ 冷たい雪に 凍る冬 【春】 暖かな 花見の季節 密めた恋 春風散らす 雨、桜の木
斧寺さんが我更生(がさらき)小学校の受付に第11師団バッチを見せただけで、校長先生が駆けつけてきた。校長先生は何度も頭を下げると、すぐに亘達を校長室へと案内した。亘が訪ねた時とは明らかなる対応の差。やはり軍人というのはこの世界のヒエラルキーでも上位に位置する組織なのだろう。 面白くない顔して亘はスリッパを履いた。 音楽室から聞こえてくるピアニカとオルガン、子ども達の歌声。知っている歌もあれば知らない歌もある。と、いうことは、この世界は途中まで同じ歴史を辿り、どこかの分岐
「さあ、出ろ」 牢屋に入れられて2日が経った。時計のない部屋で、夜眠る時にも電気は消えない。ストレスで下痢が止まらない状態が続いていた。 気持ち悪い。何か、まともなご飯が食べたい。 胃がキリキリと痛む。奥歯も痛い。歯を食い縛りすぎた。 ここで殺される想像をしてしまう。眠れない。 この国の人間にとって亘は、幕末でいうところの新政府軍のスパイなのだ。相手が日本語を話せることにどこか安心していた。しかも故郷の東北じゃないか。そんな油断があった。どこか現実と違う気分でいた
西暦2023年から西暦1991年へ。 ここは夢の中なのか? それとも、並行宇宙/パラレルワールドと呼ばれる場所なのか? 彼は酔っ払って乗り込んだ総武線でウトウト眠りにつき、目が覚めると異世界に紛れ込んでいた哀れな男、古田間亘。 人生崖っぷちの39歳。まだ幼い子ども2人を抱える4人家族の大黒柱であるにも関わらず、転職を繰り返し、何も手に職がつかないまま適職を探し続ける哀れな中年男性だ。 その亘が今いる場所。 ここは日本語を主な言語とした日本文化型の社会でありなが
「日本って!? 日本国の、ことですか?」 亘に向けられた、青ざめた2人の顔。妖怪でも見るような顔をして、身を乗り出した。 「えっ!? あ、はい? ここ、日本じゃないんですか?」 よほど奇異な現象だったのだろうか、2人は顔を見合わせ、暗黙の了解を交わし合ったところ、駅員が席を立った。 警察の人の方が席に残り、亘の外見、身なりを見渡した。 「まあ、落ち着きましょう。ここにはあなたの敵はいませんからねぇ。先ず、落ち着きましょう。珈琲でも飲みますかい?」 何を恐れて