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#43 姿勢とバランス感覚

姿勢改善パーソナルトレーニングジムの宮谷です。

よく耳にする“バランス”って、どんなことにも大切ですね。
「生活のバランスを整える」「栄養のバランスがとれた食事」「ワークライフバランスを見つける」など、「調和」や「均衡」を表すバランスという言葉は様々な場面で使われています。

正しい姿勢を維持するにも「バランス感覚」はとても重要です。
今回はそんな「バランス感覚」についてお話しします。


バランス感覚とは?

Image by Raphael Renter | @raphi_rawr from Unsplash

「バランス感覚」とは、カラダの姿勢や動きを維持して安定させるための感覚で、内耳の前庭器官や視覚、そして筋肉や関節などの感覚器官が連携して行われます。
立っているときや歩いているとき、足裏が地面から受ける力によってもバランス感覚は影響を受けます。

バランス感覚は、姿勢に直接大きな影響を与える重要な要素です。
バランス感覚が正常に機能しているとき、人は立っている、歩行している、または動いているとき、バランス感覚の4つの働きによって適切な姿勢を維持するのに役立っています。

①姿勢の安定性

バランス感覚には、身体の位置や動きを正確に把握する能力があります。
正確な情報を受け取った脳は、適切な筋肉の収縮を調整して、姿勢を維持するのに必要な支援をします。これによって安定した姿勢を保つことができます。

②姿勢の調整

バランス感覚が働くことで、環境や身体の動きに応じて姿勢を調整することができます。
例えば、地面が傾いている場所で立つときや風や他人との接触によって姿勢が変化する場合、バランス感覚は自動的に身体の調整を行います。

③バランスの保持

バランス感覚が正常に機能していると、突然のバランスを崩すような外部の刺激に対しても適切に反応できます。例えば、転んだり衝突したりすることを防ぎ、安定した姿勢を維持することができます。

④姿勢の効率性

バランス感覚が良好な状態にあると、姿勢がより効率的になります。
身体の重心が適切に配置され、筋肉の負担が均等に分散されるため、疲労や筋肉の緊張が軽減されます。


バランス感覚が乱れると、身体の安定性が低下し、転倒や怪我のリスクが高まる可能性があります。バランス感覚が乱れる原因は、以下のようなことが考えられます。

1.運動不足 : 運動不足による筋力の低下、関節の柔軟性の減少、筋肉の不均衡などはバランス感覚の乱れの主な原因となります。
2.視覚の問題 : 視覚はバランス感覚に重要な役割を果たします。視覚障害や視覚の不良は、バランス感覚の乱れを引き起こす可能性があります。
3.内耳の問題 : 内耳は、身体の姿勢や動きを感知するための重要な器官です。内耳の問題、特に前庭器官の損傷や疾患(前庭神経炎やメニエール病など)は、バランス感覚の乱れの主な原因となります。
4.神経障害 : 中枢神経系や末梢神経系の障害や疾患(脳卒中、パーキンソン病、多発性硬化症など)は、バランス感覚に影響を与える可能性があります。
5.加齢 : 加齢によってバランス感覚は自然と低下する傾向があります。筋力や関節の柔軟性が減少し、内耳の機能も衰えることが原因です。
6.疾患や薬物の副作用 : 特定の疾患(例えば、糖尿病や高血圧)や薬物(抗不安薬や抗うつ薬など)の副作用は、バランス感覚に影響を与える可能性があります。
7.ストレスや不安 : ストレスや不安は、バランス感覚に影響を与えることがあります。これは、身体の筋肉の緊張や姿勢の変化を引き起こすためです。

また、バランス感覚の乱れは、脳の中の“カラダの地図”である「ボディスキーマ」に悪い影響を及ぼしてしまいます。
この悪い影響が正しい姿勢から不良姿勢になる原因を作っています。


ボディスキーマ(身体図式)とは?

「ボディスキーマ(身体図式)」とは、「身体の部位がどこに位置しているか」「どのように動いているか」を空間で無意識かつ自動的にイメージ化する認知機能のことです。
これは荷重刺激(重力)・触覚刺激・視覚刺激などの外部刺激によって作られます。

人間は産まれたての赤ちゃんの頃は、手足の存在を知りません。
自分のカラダや周りの環境にある色んなものに興味を持ち、カラダを動かし目で見て手で触れ、さまざまなものを認知していきます。
また成長に伴い、膝立ちやつかまり立ちができるようになることで、膝や足の裏で体重を感じ、自分には足があることを徐々に認知していきます。
このように、多くの情報が脳に記憶されていくことで、ボディスキーマは作られて行くのです。

Image by Keith Johnston from Pixabay

ボディスキーマが正常であれば、身体の部位の位置や動きを正確に感知し、それに応じて適切に反応することができます。

たとえば、キャッチボールをしているとき、ボールが飛んでくる位置を目で見て予測し、その位置に合わせて手を構えますね。
このとき目はボールを追っかけていますので、自分の手の位置は視覚ではなく無意識に運んでキャッチしています。
飛んでくるボールと構える手を視覚で捉え、手の位置や関節の角度を気にしていたらボールを取ることは難しくなるでしょう。

ボールをキャッチするのが上手下手には、経験による熟練度や運動神経も関係しますが、ボディスキーマの空間における認知機能も影響を及ぼしていると言えます。


バランス感覚とボディスキーマの関連性

Image by Wesley Tingey from Unsplash

バランス感覚とボディスキーマは、お互いに密接に関連しています。
まずは「バランス感覚」と「ボディスキーマ 」の概念の違いについて比べてみましょう。

【バランス感覚】
⚫︎バランス感覚は、身体がどの程度安定しているか、身体が重力に対してどのように位置しているかを無意識に把握する能力です。
⚫︎主に内耳の前庭器官、視覚、体性感覚(皮膚や筋肉からの感覚)など、複数の感覚からの情報を統合して形成されます。
⚫︎バランス感覚は、身体の姿勢制御や運動の安定性に影響を与えます。

【ボディスキーマ】
⚫︎ボディスキーマは、身体の構造や部位の配置に関する内的な認識であり、身体の一部がどこに位置しているか、どのように動いているかを無意識に把握する能力です。
⚫︎脳内のさまざまな領域で処理され、身体の位置や姿勢に関する感覚的な情報を形成します。
⚫︎ボディスキーマは、運動や日常生活の中で身体を制御し、調整するための内的なマップとして機能します。

バランス感覚が“カラダ全体”の安定感や位置の把握能力なのに対し、ボディスキーマ は“カラダの一部”の動作や位置の把握能力のことを指します。
どちらも無意識または自動的なプロセスであり、日常生活のさまざまな習慣によって無意識に変化します。

たとえば、長時間座りっぱなしで前屈みになってのデスクワークや、スマホに顔を近づけて長時間操作するなどです。
毎日、長時間このような姿勢で過ごすことで、一部の筋肉に過剰なストレスがかかって硬直してしまい、猫背や巻肩、ストレートネックなどの不良姿勢へと知らない間に変わってしまいます。
人間はどんなにカラダが歪んでいても、頭部は視界を水平に保とうと無意識に位置を修正するため、どんな不良姿勢になっていてもそれを真っ直ぐだと認識してしまいます。

こうして姿勢が歪むことでバランス感覚は乱れ、真っ直ぐを誤認識した状態でボディスキーマは書き換えられるので、本来の正しい姿勢に戻せなくなってしまうのです。


バランス感覚は鍛えられる

Image by FineGraphics from photoAC

バランス感覚の多くは無意識または自動的なプロセスですが、一部は意識的に感じることができます。
たとえば、目を閉じて一本足立ちをすると、バランス感覚が意識的に必要とされるでしょう。また、バランスを崩しやすい場所や高所にいるとき、スポーツやダンスなどの動的な活動を行うときなどもバランス感覚がより意識的になります。

バランス感覚を向上させるトレーニングには、「プロプリオセプティブトレーニング」が有効です。

「プロプリオセプティブトレーニング」とは?
身体の位置や動きに関する感覚、つまりはプロプリオセプション(固有受容)を改善するためのトレーニング方法です。

※プロプリオセプション(固有受容) = 筋肉、腱、関節およびその他の身体組織に存在する受容器(レセプター)が、身体の各部位の位置や動きに関する情報を感知する無意識な感覚であり、内耳や視覚、体性感覚とは異なる独自の感覚です。

プロプリオセプティブトレーニングでは、バランスボードやバランスボール、クッションなどを用いてわざと不安定な状態を作り、片足立ちやスクワットなどのエクササイズを行います。
これにより、身体の安定性を保つために筋肉の調整が必要とされ、プロプリオセプションが強化されます。
目を閉じてバランスを保つことも、視覚情報を排除して身体の他の感覚(内耳や体性感覚)に頼ることで、プロプリオセプションがより強化されると言われています。

多くのスポーツ選手は、このプロプリオセプションを意識的に活用することで、より高度な動きや姿勢の制御を行えているのです。


このバランス感覚向上トレーニングは家でも簡単にできますが、過度に姿勢が歪んでしまっている人にはなかなか難しいトレーニングになるでしょう。

不良姿勢が慢性化している人は、まずはストレッチで固まっている筋肉をほぐしてあげる必要があります。

また、運動不足で筋力が低下してしまっている人は、筋力トレーニングを組み合わせることも効果的です。特に体幹や足部の筋肉の強化が重要です。


美しく正しい姿勢になるためには?

Image by clem onojeghuo from Unsplash

バランス感覚が、正しい姿勢を維持するために重要なことはお分かりいただけたでしょうか?
ただバランス感覚を鍛えるだけでは、美しく正しい姿勢を作ることはできません。

最後に、美しく正しい姿勢を作るために必要な取り組みについてお伝えします。

①背面の筋肉を強化するエクササイズ

背面の筋肉を強化することで、正しい姿勢を維持しやすくなります。
背面の筋肉とは、体幹を安定させる背骨周りの筋肉、肩甲骨周りの筋肉、お尻やハムストリング(太腿裏)、ふくらはぎの筋肉のことです。

②コアを鍛えるエクササイズ

コア(腹部と背中の筋肉)を強化することも重要です。
特に骨で守られていない腹部にある腹筋のインナーマッスル強化は、姿勢をサポートし、美しい姿勢を作るのに大切です。

③ストレッチと柔軟性を向上させるエクササイズ

筋肉の柔軟性を高めることで姿勢は改善されます。
ヨガやピラティスのポーズにチャレンジしたり、ストレッチを毎日の生活のルーチンに取り入れることで、カラダ全体の柔軟性を向上させましょう。

④バランスを改善するエクササイズ

バランスを改善することで姿勢を安定させることができます。
片足立ちや不安定な状態でのエクササイズなど、バランスを鍛えるトレーニングを取り入れましょう。

⑤姿勢改善の日常生活への取り組み

日常生活の中で姿勢を意識して、正しい姿勢を維持することも重要です。
歩行や立ち仕事、座っている時間など、日常の動作を意識して正しい姿勢を心がけましょう。


姿勢でお困りの方は、ぜひSISEIにご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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