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息子氏、青く光るゲーミングPCを手に入れる。

 昨年末に、貯めこんだお年玉や高校入学祝いを元手に息子が手に入れたのは、所謂ゲーミングPCというやつで、サイズ的にはミドルタワーということだけれど、配送されてきたダンボール箱は人が入れそうなサイズ。あまりの大きさにのけぞった。

 私にはとても二階の部屋まで持ち運べない重さ大きさ。息子も一人では自信がなかったようで、仕方なく親子二人して、激重精密機械やたらでかいPCの入った箱の上と下で持ち、狭い階段を「危な落とすやばいマジやばい、足にのってる痛い痛いたいったいっ💢」と大騒ぎしながらようやく運びあげた。

 息子部屋の机の脇に、どどーーーん、と君臨したゲーミングPC。起動させると、前面のふちがぼわんと青く光る。うっ。ものすごい存在感。さらに、高校の友達と一緒にアキバで買ってきたというゲーミングキーボードも、キーがしゃらしゃらっと虹色に光る。虹色て…。イヤホンは緑に。さすがにマウスは光らなかったが(でも色がパープル)。

 うわお……。

 なんというか、私の知っている”スタイリッシュ”という言葉からちょっとばかし遠いとこにある気がするきらびやかなこれらのブツは、自分の購入選択肢には無いなあと思った。だって私の愛機はMac book proだもん。


 でも、息子はこのゲーミングPCで毎日ああだこうだ言いながら様々なオンラインゲームを楽しんでる。相手は、小中の同級生だったり高校からの友達だったり、時にはゲームだけの繋がりの赤の他人でもあるようだ。とにかく、こんなご時世、なかなか人に会えなくても、ゲーム(のボイチャアプリ)をとおして、たくさん人と喋っている。
 
 同じ頃、時たま友達と出かけた各所で手に入れたらしきあれやこれやが、ぽろぽろ部屋に出現するようになった。

 それは某Vtuberアイドルプロダクションのグッズで、アクリルスタンドやらタペストリーやら。そういえば高校入学前までは赤血球さんだった息子のLINEプロフィール画面もその某Vtuberアイドルの一人になって、なんだーい、いつのまにハマってたんかーい。というか、コロナでオンライン授業だとか吹部コンクール辞退だとか、せっかく高校生になってもいろんな行事も中止になるし不自由だし、新しい友達ともなかなか交流できず、良いことがあんまり無いようにみえる中で、こんな楽しそうなのの、”推しごとオタ活”に勤しんでいたのか。しかも高校で出会えた友達と一緒に。

 私は心の底からホッとしてしまった、親として。

 息子が、好きなものがあるとうれしい。そしてそれをちゃんと声に出してくれるともっともっとうれしい。三歳の頃「プリキュアが好き」「プリキュアのパジャマがほしい」と言ってくれたように。だって、それは息子を守ってくれるから。しかも、今は仲間もいる。

 理解してもらえないと警戒していたのか羞恥心があったのか。まあ親に自分の”嗜好”をばらすのは恥ずかしいという気持ちはとてもわかる。でも、せっかく買った推しのグッズなのだから「えー、もったいない飾ればいいじゃん」などと言って、適当に壁に飾ったりしていたら、そのうち息子もコンビニの推しグッズタイアップ商品販売のことだとか、イベントの抽選に申し込んだけど外れただとか幕張に行くんだとかあれこれ話してくれるようになった。

 それまでも漫画はほぼ全部共有で読んでいたけれど、友達におすすめされ買って読んだというラノベ『たんもし』『連れカノ』なんてのも親に貸してくれる。結構面白い。(これ『連れカノ』が平気なら離婚再婚とかきっと大丈夫ね、なんてwww)

 今となっては、自分の価値観や世界観では手に取ることが難しいようなものが、息子のおかげで手することができ、楽しめる。こんな幸せなことって無い。自分の好きな人の好きなものは、いくらでも教えてほしい。世界は一人じゃ広げられない。

 私は自分の様々な趣味嗜好を親と、特に母親と共有することは、中高生以降ほとんどなかった。それは、自分の性癖を知られてしまうような羞恥心、あとは、どうせ若者の文化なんてわかってもらえないでしょうという勝手な思い込みのせいだったと思う。多分親を見くびってた。今になって思えば、母は本と漫画が好きだったし、父はさらに音楽とスポーツ観戦も好きだったのだから、私の世代の自分と違う感覚のものも、絶対に拒絶しないどころか、むしろ、喜んで一緒に楽しめたはずなのに。

 「好きなもの」は、自分の心を救う。生き方を教えてくれる。私は、息子が「これ好きなの」って言えてるものがある限り、なんとなく、ああ、彼は大丈夫だな、って思える。

 それだけで、安心なのだけれど、でも、その中身を少しでも共有してもらえている私は、とっても幸せだと思う。だから、まったく自分の好みじゃない青く光るバカでかいPCまでもが愛おしい。

 ま、でも隠し事もあってもいいと思うよ。お互いね(笑)


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