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盲目の白昼夢は

あまりに長く、長く
自分を騙し続けて、盾として、甲冑として
あの日のあなたは私に覆いかぶさるように
いつ降りかかるかもわからない毒矢から
ずっとずっと怯えながら
守り続けていてくれていたのね、いまも、たぶん

宙ぶらりんの、ほとんどが空っぽの、死んでいないだけの、
20数年生きてきた割には枯渇しすぎている何か
蓋を開けてあったのはクッキーの残りかすだけ
青い血管が浮き出しているわたしの手首に巻き付けた風船ごと、
この花嵐に奪われるほどに
落下、落下、落下

ずっと内側を見ていたはずだった
見ていたのは殻を通した外側
本当にあったのは伸び切った爪と枝毛だらけで不揃いの髪
丸い形のフォントで出来上がった愛とやらで満たすはずだった身体は
どうやら内臓くらいしか入っていないらしいよ
かなしい、とかいう4文字の言葉
この言葉の意味にわたしの感情は全て乗せられているでしょうか

すりガラス越しの顔みたいに
解像度の低いきみの表情に
頬ずりをして
小指同士でもいいから繋がっていられたなら
そうならよかったのにって振り返ったら
真っ白なツツジがこちらに手のひらを差し出していました

不自由で薄情で未完成で無責任な
まるで言葉は水槽のようで、
水槽の中で浮かんで 沈んで 泡ぶくを吐き出して
水草の陰に隠れて 水は透明なのに霞んで前は見えなくて
ようやく壁にぶつかって 壁を避けて
心許ない小さなヒレだけで また泳ぎだして

この白昼夢から覚めたら
苦しさまるごとを愛したいと
綺麗ごとをまた、そうやって

わたしは携帯の液晶に反射した雲をいまだ見つめている。








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