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1-3.最初の「大学生版書く力をつけるプログラム」2

今回のプログラムの狙いは、
「”書くこと”を理解することで、自分自身を知るきっかけをつかんでほしい」だった。

自分のことって、自分がよく知っているようで、
実は知らないことも多いもの。
「自己表現」を文章で書く場合には、自分自身が題材となるため、
自分を知り、そこから素材を作ることが必須だ。

自分を知ることから始まる。
何をしたいか、どうしたいか、どう生きたいか。
「書くこと」はそんな自分がやりたいこと、どう生きたいか、
どう考えているかを表現する「手法」だ。

今回「書く」ことの意味と「書くこと」自体の特性を知り、
自分が文を書く、その目的にあわせ、自分の意図に沿って
自分らしく運ぶための手段にしてほしい。
そして、その前段階で、自分らしさを知るということを意識してほしい。
それを狙いとした。

学生の中には、就活を控えた3年生も多く居て、神妙に話を聞いている。

さて、いよいよ本ワークだ。
今回は、最終的にアウトプットとして、自己紹介の作文を書いてもらうこととした。
その材料出しをするために、2人一組でインタビューワークをおこなう。
2人のうちの一人がインタビュアー(質問者)、もう一人がインタビュイー(質問を受ける側)。

今ではド定番のインタビューワークだが、
これは意図を込めると非常に使えるワークなので、私はよく使う。
自分で自分を掘り下げることのコツがつかめていない子は、
まず他者から質問してもらったことに答えるやり方の方が、
自然と考えることができる。
そして答えたことに対して、また他者が質問し、答えるという繰り返しで、その子の思いや考えを掘り下げることができるのだ。

これを書くP的には「掘る」という言い方をし、この「掘る」ことは、
その後大学生が小、中、高校に入って子どもたちの思いを掘り下げる時に使うベースのやり方となっている。

さて、今回のインタビューワークでは、インタビュアーに事前に
あるイメージをしてもらった。
「インタビュアーに決まった人集まって~」と声をかけ、
クラスの半数を部屋の隅っこに呼ぶ。

インタビューをする時には、その対象者がどんな思いを持っているのかを
意識して質問を考える必要がある。

トップの画像が、その目標の図だ。
山田ズーニーさんの「考えるシート」講談社+α文庫のインタビューシートAを使わせてもらった。

これをインタビュアーの子たちに配布し、
”この人は、これまでどんな思いで生きてきて、今何を思い、
これからの未来に向けてどうしたいという意志を思っているのか。”
それをできるだけ明らかにするための質問をしてほしい。

過去→現在→未来という時間軸と、
身の回り→社会→世界という空間軸に問いを立てながら、
この人の主旋律を引き出すことを目指してください。

と伝えた。

「???」が頭に浮かんでそうな顔をしている子たち。

自己紹介と言えば、定番なのがこのパターン。
「たなかあきこです。○○大学商学部商学科の2年です。A型です。
×××というダンスサークルに入っていてロックダンスをやってます。
出身は○○県です。よろしくお願いします」

彼らに「自己紹介をして」と言うと、ほとんどがこういう自己紹介をする。
プロフィール帳の上段に書かれるような、基本項目ばかりの羅列だ。
これではその人の所属や出身地はわかるが、
その人がどんな人なのかはつかめない。
慮って「A型なら几帳面なのかなぁ」くらいの、
血液型のパターンで性格を予測するくらいしかできない。

なので、単純に「インタビューワークして」とだけ伝えたら、
質問者は「名前、所属、血液型、部活、出身」を聞くだろう。
もっと時間があれば「好きなこと、ハマっていること、好きな有名人、
好きなお菓子、趣味」などを聞くだろう。
それはその人を知る手段として正しくないわけではないが、
ただ、そのやり方では、広くその人の表面をなぞるだけになりがちで、
その人が持っている思いや考えや価値観やらはあぶりだせない。
そこに気づいてもらうために、
あえて引き出す目標のイメージを提示した。
質問はシートに15問ほどあり、それを使いながら各自どう掘り下げるのか考えながら進める。

それぞれに教室に散った彼らは、インタビューワークをはじめていった。
時間は30分。

各所から「それはどんなものですか?」「どうしてそれが好きなの?」
という声が聞こえ始めた。いいぞ。その調子。

インタビュアー役も、自分が質問を考えることで、
後でそれは自分に問うものとなる。
楽しそうに、たまにはうーんと悩むような顔をしたりしながら、
わきあいあいと時間は過ぎて行った。

〆は、インタビュアーが、聞きだし書いたメモをみながら
インタビューイーに「あなたはこう言う人ですね」と、
一言でまとめていう作業。
やりっぱなしにせず、一言でまとめると、話した方も聞いた方も思考がまとまる作用がある。

前段をできるだけ短くといいながら、1時間弱つかってしまったので、この日初回のインタビュワークは片方しかできない。
なので、インタビュアー役は、自分がした質問を思い出しながら導いた答えを書いてくることを、インタビューイーには、インタビュアーからのメモをもらい、自分が答えたことを思い出しながら、さらに深めることを宿題としてこの日は終了した。

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