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三浦豪太の探検学校

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冒険心や探究心溢れる三浦豪太が世の中について語った日本経済新聞の連載記事「三浦豪太の探検学校」(2019年3月に最終章)の、リバイバル版。わずか11歳でキリマンジャロを登頂。フリ…
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2022年8月の記事一覧

スノーシューの魅力

2015年2月28日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  スノーシューは日本でいうカンジキと似ている。冬用の長靴にスノーシューを取り付けることで接地面積を増やし、雪上での浮力が増す。カンジキと違うのはかかとが浮くので歩きやすく、足の下にはアイゼンがついているのでしっかりとグリップする。そのため足を踏み入れることができなかった雪原や雪山に容易に入ることができるようになった。  10年前、スノーシューを広げようと活動を始めたのは技術的なハードルが低く、多くの人にも冬山の楽しさを

命を守る地元の情報

2015年2月21日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  僕はバックカントリー(管理されていない山岳地帯)スキーが大好きである。目の前に広がる手付かずの斜面、そこを滑る浮遊感、斜面や雪質の変化を滑り切る奥深さ。スキーが自然スポーツとして内在する、あらゆる難しさと素晴らしさを備えている。  同時にバックカントリーはむき出しの自然と相対するため多くのリスクが存在する。雪崩、道迷い、遭難、単純に移動手段であるスキーが壊れただけで取り残される危険性もある。  こうしたリスクから身を

山岳地帯の農耕民族

2015年2月14日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  昨年末、テレビ番組でインドネシアのジャワ島東部にあるブロモ山に行く機会があった。ブロモ山はカルデラ地形の火山が複数入り混じる壮大な景色で、巨大な火口は雨季に朝霧が立ちこめ、その様子は「神々が舞う天空の庭園」といわれる。  この絶景を見に行くのが番組の主旨であったが、そこにたどり着く過程で、山岳地帯の急峻な勾配に多くの農耕地を見かけた。  ブロモ山付近に住むテンガル族は、それぞれの家族が農地を持っている。畑を耕すときは

空中で体ひねる動作

2015年1月24日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  現在、僕はスノーボード&フリースタイルスキー世界選手権の解説を行っている。序盤のフリースタイルスキーのハイライト、エアリアルの演技は圧巻だった。特に男子決勝で優勝した中国の斉広璞選手のダブルフル・フル・ダブルフル(縦3回転、横軸5回転ひねり)は現在、エアリアルで行われる最高難度の技で、空中の演技から着地までコントロールしている姿に鳥肌が立った。  スキー・エアリアル競技はスポーツの中でもっとも回転数が多い競技で知ら

できぬ理由考えるより・・・

2015年1月17日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  フリースタイルスキー世界選手権は2年に1度、モーグルなどの世界王者を決める大会だ。選手には五輪選考同様に大きなプレッシャーがかかる。  こうした状況を見ていると、僕が出場できたリレハンメル五輪の代表選考会の時のことを思い出す。  当時、北米で行われた予備予選を勝ち抜いた僕は残りの1枠をかけた3人の中に残っていた。  五輪はカナダと米国で行われるワールドカップの成績で選出される。そのため少しでもいい成績を残そうと力ん

変化の時代を生き抜く

2014年12月20日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  先日、東京ビッグサイトで行われた「エコプロダクツ2014」で、スポーツと環境を考えるNPO法人グローバル・スポーツ・アライアンスのナビゲーターとして、地球温暖化について僕の経験を話す機会があった。  父が75歳でエベレストに登頂した2年後、環境活動のためエベレストのキャンプ2まで行ったことがあった。この時の活動の中心はゴミ拾いだったが、現在、サガルマタ環境管理委員会(SPCC)によって厳密に管理されているため最近

スキー もっと広めたい

 先日、資料を整理していたとき、5年前に全日本スキー連盟(SAJ)に提出した「これからのスキーの発展性について」と言う文章を見つけた。  スキー人口は1990年代以降右肩下がりになっている。スキーに携わる僕たちにとってこれは大きな問題だ。僕はこれからのスキーの展望について3つの方向性を文書にしていた。当時の自分の考えと、現在の活動のあり方について考えさせられたので、それをここに紹介したい。  第1に「スキー競技からの発展」である。どんなスポーツでもヒーロー、ヒロインの存在は

四股で膝のケガ防止

2014年12月6日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  相撲に詳しい友人と今年の秋場所を見て以来、相撲に興味を持つようになった。それぞれの力士の取組前の癖、立合いの呼吸、迫力のあるぶつかり合いや技を見ているうちにその奥深さに魅了された。  中でも横綱・白鵬の土俵入りの見事さに思わず息をのんだ。大きく高く足を上げて四股を踏む。これは柔軟性、バランス、強さの三拍子がそろっていないとできない。  相撲部屋に入門するとまず最初にケガ防止のために股関節を柔らかくする股割りを行うと

守りと攻めの健康法

2014年11月22日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  父、三浦雄一郎は、昨年「いきいき健康大使」に任命された。厚生労働省が目的とする「国民の健康寿命の延伸」を広く知らせるため、各年齢層のオピニオンリーダーを選んだそうだ。  82歳の父が選ばれたのは七大陸最高峰からのスキー滑降に加え、70歳から80歳に至るまでエベレストに3回登頂し、驚異的な健康寿命を実践しているところによる。その父の健康法の持論に「守りの健康法」と「攻めの健康法」がある。  「守りの健康法」とはラジ

父を撮り続けた心友

2014年11月15日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  大滝勝さんは日本の草分け的な冒険カメラマンだ。「東京映像社」を立ち上げ、数々の山岳冒険、海洋冒険、モータースポーツ映像を撮影、企画した。  三浦家とは40年来の家族ぐるみの付き合いで、これまで父が行った7大陸最高峰滑降を含め最近のエベレスト登山もすべて一緒に取り組んだ。その大滝さんが今年9月に亡くなり、先日多くの日本を代表する冒険家が集まり偲ぶ会で別れを惜しんだ。  大滝さんはいつも遊び心を忘れない反面、仕事にと

父の挑戦支えた山岳医

2014年11月8日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  先日、父の80歳エベレスト挑戦をサポートしてくれた国際山岳医大城和恵先生が「三浦雄一郎の肉体と心」という本を出版した。  その本は「病気」「挑戦」「人生「家族」「食」「セックス」「寿命」と言う章に分かれていて、それぞれ国際山岳医としての視点や女性から見たエベレスト挑戦が描かれていて興味深い。  父は「心房頻拍」と言う持病を持ってのエベレスト挑戦だった。大城先生は普段、心臓血管センター北海道大野病院の医師であり、心臓

学力の土台は体力

2014年11月1日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  脳由来神経栄養因子(BDNF)は脳の神経細胞の発生や成長、維持、修復に働き、学習や記憶等の脳力に影響を与える脳細胞にとっての重要な栄養分である。近年、BDNFの分泌に最も影響を与えるのは運動であることが分かってきた。  「脳を鍛えるには運動しかない」の著者、ジョン・J・レイティはその著書のなかでイリノイ州、ネーパーヴィル・セントラル高校にて行われた「0時限」の授業について紹介している。生徒は授業が始まる前に学校のグ

運動という処方箋

2014年10月25日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  僕が米国・ユタ大学在籍中、運動生理学の最初の授業で先生はこう話した。「運動生理学とは運動している時に体に何が起きているかということを研究する学問で、そのため『運動』に限らず、あらゆる医学の分野とかかわる学問である」と。それまで運動生理学とはスポーツ選手の競技性を高める認識しかなかった僕にとって目の覚めるような話であった。  運動は幅広い病気に対し予防や改善効果が複数の研究機関から認められている。鬱、認知症、2型糖