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守りと攻めの健康法

2014年11月22日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 父、三浦雄一郎は、昨年「いきいき健康大使」に任命された。厚生労働省が目的とする「国民の健康寿命の延伸」を広く知らせるため、各年齢層のオピニオンリーダーを選んだそうだ。
 82歳の父が選ばれたのは七大陸最高峰からのスキー滑降に加え、70歳から80歳に至るまでエベレストに3回登頂し、驚異的な健康寿命を実践しているところによる。その父の健康法の持論に「守りの健康法」と「攻めの健康法」がある。

 「守りの健康法」とはラジオ体操、ウォーキング、生活習慣の改善など主に病気の予防を目的とした健康法である。これは健康保持には重要だが、父いわく「これだけだと健康に年をとってしまう」。
 これに対し、「攻めの健康法」というのは目標を掲げて、その目標に見合う体力を年齢を問わず作っていく。例えばエベレストに登ると20歳の人でも有酸素能力的には100歳となる。80歳の父の場合、エベレストの山頂に立つと、それが150歳以上となる。こうしたことに挑む姿勢はおのずと健康を保つための体力づくりとは根本的に違ってくる。
 父の場合、片足5キロの重さの靴やアンクルウエートをぶらさげ、背中には30キロもの荷物を背負いながら「これくらいの感覚がちょうどエベレストの山頂で歩くようなものだ」といって日常的にこの姿で全国各地の講演に出かけている。
 さらに父の場合、70歳から80歳になるまで6度にわたる不整脈の手術、再起不能といわれるほどの骨盤骨折――どれをとっても普通に生活することも難しくなるようなケガや病気をしている。しかし、父はエベレスト登頂を目標に掲げることによってトレーニングを続け、80歳のエベレスト前には40歳代の筋力、20歳代の骨密度で、むしろケガの前よりも体力的には若返っていた。

 先日「第3回健康寿命をのばそう!アワード」の表彰式に参加した。厚労省が主催するこの表彰式では全国自治体・企業が行っている健康寿命延伸を目的とした取り組みを評価し表彰した。
 この時、父は最後のあいさつで「それぞれの取り組みはとてもいいのだが、『地域全員で富士山に登ろう』など具体的な目標を持って活動したらいいのでは」と提案した。自身は85歳でチョオユー(8201㍍)からのスキー滑走を目標にすると宣言した。

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