マガジンのカバー画像

三浦豪太の探検学校

312
冒険心や探究心溢れる三浦豪太が世の中について語った日本経済新聞の連載記事「三浦豪太の探検学校」(2019年3月に最終章)の、リバイバル版。わずか11歳でキリマンジャロを登頂。フリ…
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

ハチを侮り痛い目に

2011年9月24日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  先日、家族や友人と逗子の里山をハイキング中、スズメバチの大群に襲われた。 そこは普段からマウンテンバイクのトレイル(山道)として遊んでいるなじみの場所であり、森が深く木漏れ日を楽しみながら歩くにはとてもいい。東京の友達を案内しようと思い、今回は下見を兼ねていた。最近、近辺でスズメバチが出るとのうわさを聞いていたのは気がかりだったが、その確認の意味も含めて家族と友人を引き連れて山の中に入ったのだ。  通常、スズメバチ

「ときめき」若さ保つ

2011年9月17日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  三浦雄一郎(78)のトレーニングといえば、重いザックにアンクルウエートの姿を思い浮かべるが、最近の父は自転車にはまっている。「歩くと行く場所が限られるが、自電車だとすいすいどこへでも行ける」と、朝早くから自転車とともに姿を消す。  東京にいるときは事務所がある代々木からスタートする。最初のころは赤坂、築地、浅草などの東京近辺だったが、そのうち多摩川の上流探索や八王子、高尾山にまで足を延ばし、さらにはその高尾山をはじ

心の絆 力に

2011年9月10日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  世界で活躍する日本人スポーツ選手のニュースが増えてきた。女子サッカーの日本代表「なでしこジャパン」の快進撃のほか、世界陸上ではハンマー投げの室伏広治選手が金メダルに輝いた。陸上競技で日本人で初めて五輪と世界選手権を制した。  かられに共通しているのは被災地復興という強い思いだろう。震災後、様々なジャンルの選手たちが東北地方を訪れ、津波などで壊滅状態に陥った地域の支援活動を行ってきた。僕も父・雄一郎も登山活動を多くの方

リーダーたちの成長

2011年9月3日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  今年も瀬戸内海の余島で子供たちのアドベンチャーキャンプを行った。余島は小豆島の南西にある小さな島で、神戸YMCAは60年間にわたりここを野外活動の場として活用している。4年前から僕らはサントリーの依頼で神戸YMCAに協力して冒険的要素の高いキャンプを開催してきた。  過去3回は、有人島である豊島の浜辺をベースにしていたが、さらに冒険的にしようと、今年は子供たち28名と余島から北にある無人島、葛島にカナディアンカヌーを漕

自然エネルギーと闇

2011年8月6日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  世界遺産の屋久島の電力はすべて屋久島電工という企業がまかない、日本で唯一、日本にある10電力会社の独占供給に頼らない島だ。  一年を通じて降雨量が多い豊富な水量を生かした3基の水力発電所により島の電力のすべてが作られ、農協などの各組合が手分けして配電を行っている。電力については完全に自給自足している島で、原発とは無縁の電力エネルギーを利用している。  ただ不具合もある。台風や防風などによる停電は多く、普段でも電力供給が

大自然で体力づくり

2011年7月30日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  僕たち三浦家の面々は2003年のエベレスト登頂後、幾度となく鹿児島県の屋久島を訪れている。日本で初めて世界遺産に指定されたこの島は、あの縄文杉だけではなく、素晴らしい大自然に満ちた山や海とスケールの大きなフィールドで、理想的なトレーニングベースだ。  屋久島には九州最高の宮之浦岳(1936㍍)を筆頭に多くの高山が連なっている。こうした地域性から島には古くから山岳信仰があり「岳参り」という儀式がある。人々が住む島の海辺

笑顔が生むパワー

2011年7月23日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  サッカー女子ワールドカップ(W杯)の優勝をかけたPK戦。一度も勝ったことのなかった格上の米国を相手に、日本代表「なでしこジャパン」ならではの粘り強さがもたらした決着の付け方だった。  見ている僕らが手に汗を握る。その緊張をよそに、円陣を組んだ佐々木則夫監督と選手たちは笑顔にあふれていた。監督は「ここまで来ただけでもうけものや」と言って、その場の雰囲気を和ませ、選手をフィールドに送り出したという。  対照的に米国チーム

一工夫で遊び場作り

2011年7月16日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  被災地では急ピッチで仮設住宅が作られているが、多くは学校の校庭や公園の中であるため子供たちの遊び場が減少している。  この状況を憂えた、スポーツと環境を考える特定非営利活動法人(NPO法人)、グローバルスポーツアライアンス(GSA)副理事長である岡田尚子さんは、狭いスペースでも楽しめるスポーツレクリエーションを提供する「スポレクやっぺし」というイベントを岩手県大船渡市で先週、開催した。  開催場所は2㌔ほど内陸に入

裸足とアンチエイジング

2011年7月9日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  クリストファー・マクドゥーガル著「Born to Run」に刺激され、一年以上も底の薄い靴または裸足でランニングしている。いつも痛めている足首や膝は一度も痛まなかった。  ランニングが歩行と大きく異なるのは、体が地面から離れ、着地時に大きな衝撃を受けることだ。ハーバード大学の「裸足のプロフェッサー」ことダニエル・リーバーマン教授は、アメリカ人とケニア人の中から靴を履く習慣がある人と無い人を選び、走り方を調べた。すると、

スキー仲間と炊き出し

2011年7月2日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  宮城県塩釜からフェリーに乗り、松島湾の中にある桂島に仲間のスキーヤーと炊き出しに行った。  今回の支援炊き出しを呼びかけたのは、2003年初代スキークロスワールドカップ(W杯)王者の滝沢宏臣選手、トリノ・バンクーバー五輪アルペン日本代表選手である佐々木明選手ら。僕らの仲間でもあるモーグル・スキーハーフパイプ日本代表の畑中みゆき選手が普段から復興支援を手伝っている彼女の地元塩釜の桂島に行くことになった。  さらに基礎スキ