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心の絆 力に

2011年9月10日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 世界で活躍する日本人スポーツ選手のニュースが増えてきた。女子サッカーの日本代表「なでしこジャパン」の快進撃のほか、世界陸上ではハンマー投げの室伏広治選手が金メダルに輝いた。陸上競技で日本人で初めて五輪と世界選手権を制した。
 かられに共通しているのは被災地復興という強い思いだろう。震災後、様々なジャンルの選手たちが東北地方を訪れ、津波などで壊滅状態に陥った地域の支援活動を行ってきた。僕も父・雄一郎も登山活動を多くの方々に支えてもらってきた。だからこそ、そのありがたさ、気持ちの大切さを少しでも返していきたいと思っている。

 日本は世界有数の地震列島だ。異なった大陸プレートが4つも連なっている国も珍しく、活断層がいたる所にある。国土は地球の陸地面積全体の0.25%しかないが、そこに世界の1割の地震が集中している。また四季の移り変わりがはっきりとして自然の恵みを享受している反面、自然災害も多い。先日の台風12号も異例の遅いスピードで四国中部を抜け、豪雨により大きな土砂災害をもたらした。
 しかし、同時に今の日本があるのは災害の度に力を合わせて復興し、困難に立ち向かたからだともいえる。日本人特有の勤勉さ、粘り強さ、奉仕の精神、そして逆境の中で強い団結力を発揮するのが我が国の特徴ともいえる。

 昨年、南アフリカで行われたサッカーのワールドカップ終了後に元日本代表監督、岡田武史氏とお会いした時「最近の日本の若者が持っているメンタリティー、武士道、自己犠牲をいとわない全体への奉仕精神というのは彼らの中に脈々と受け継がれているもの。これは日本が世界に誇れるものではないか」と話されていた。
 これまで日本人選手は個々のメンタル面での弱さを指摘されていたが、最近の彼らの活躍を見ると、最後まで集中力を途切らせることなく戦い抜いている姿が印象的だ。

 これは一人で戦うのではなく日本という大きなチームとして戦っているからこそではないかと思う。選手は被災地を訪れた際、子供と触れ合い、夢を託されフィールドへ戻る。つながるからこそ強くなれる、それが日本選手の活躍の秘密であると思うようになった。


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