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一工夫で遊び場作り

2011年7月16日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 被災地では急ピッチで仮設住宅が作られているが、多くは学校の校庭や公園の中であるため子供たちの遊び場が減少している。
 この状況を憂えた、スポーツと環境を考える特定非営利活動法人(NPO法人)、グローバルスポーツアライアンス(GSA)副理事長である岡田尚子さんは、狭いスペースでも楽しめるスポーツレクリエーションを提供する「スポレクやっぺし」というイベントを岩手県大船渡市で先週、開催した。

 開催場所は2㌔ほど内陸に入った盛川の河川敷。そこに所狭しと、テントやスポーツレクリエーションのワークショップが設営された。ボールの的あて、ケンダマ、輪投げ、ミニ卓球、テーブルサッカーなど場所をとらない工夫したスポーツで、子供たちは梅雨が明けたばかりの暑い日差しの中、夢中になって遊んでいた。
 メーンステージではJリーグ、名古屋グランパスでプレーした清野乙彦さんがサッカーボールを使い、音楽に合わせてその場で多彩なリフティングやトリックを行う「アートフットボール」を披露、子供たちのそのコツを教えた。
 またプロマジシャンの菅原英基さんは子供たちのために不思議なマジックの数々を披露し、その後誰にでもできるマジックのワークショップを行った。ぼくは仲間の基礎スキー・デモンストレーター、竹鼻健さんと河川敷の木々にスラックラインをいうロープを張り綱渡りを披露、一緒に子供たちの手を取って遊んだ。綱渡りは僕が現役時代からやっているスキーのトレーニングを兼ねた遊びで、支柱となる木々や電柱等があればどこでもできる。大人も子供も空中歩行さながら冒険心いっぱいに楽しんだ。

 イベントが終わった後、サッカーボールで清野さんが行っていたトリックを一生懸命練習している子供たちがいた。彼らが所属する地元の少年サッカーチームの練習場はこの盛川の下流にあり、津波で流された。でも「アートフットボールだったらどこでも練習できる」と目を輝かせながらボールを蹴っていた。
 今回集まったゲストは子供の心を持ったまま大人になり、その技術を磨いた人たちばかりだ。「どんな環境でも工夫次第で遊びも練習もできる」というつたえたいメッセージは届いたと思う。きっとここから将来のスター選手が生まれることを信じている。

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