超常異能の改変作家 第16話

  *

 究極の概念者《コンセプター》……だと?

「なんなんだ、それは?」

「そこの幼女を見ろ」

 幼女?

 幼方夢莉《ウブカタ・ユーリ》のことか?

「確かに彼女は幼女っぽく見えるけど、それがなにか?」

「そんなことも知らずにハーティア異能覚醒学院《いのうかくせいがくいん》へ来たのか? 常識だろ?」

「……なんのことだ?」

「概念者《コンセプター》は、その概念そのものであることの証左だ。つまり、その概念になればなるほど強くなる。その概念に対応した究極の異能者になれる、ということさ」

「……よく、わからない。それが、なんでキミの暴力につながるんだ?」

「俺が『不良』だから、だよ」

「どうしても『不良』にならなきゃいけないのか?」

「そう、そうならなければいけないんだ……俺は『不良』だから」

「そう、なのか」

 つまり、彼が幼方夢莉《ウブカタ・ユーリ》を見ろと言ったのは、存在そのものが「幼女」である……だから、強い……と言っているようなものか。

「でも、限度ってものがあるだろ? 実際、好きで『不良』をやっているのだろ? この世界を救おうなんて思ってないだろ?」

「どう、だかな……条件は、合ってる……と思うがな」

「不入《フニュー》くんは、なにになりたいんだ?」

「なににって『不良』だよ」

「その先に、なにがある?」

「ただ、不良である、だけさ」

「僕はキミに『不良』はやめてほしいと思ってる」

「でも、俺は『不良』をやめない……それが『強い』ってことだから」

「……先生《センジョー》先生」

「なにかな? 羅円大公《ラエン・タイコー》くん」

「僕は、どうしても不入《フニュー》くんを受けいれることができない」

「どうして?」

「どうしても、彼は……この一年A組の生徒として所属するべきではないと思うのです」

「しょうがないよ。だって彼……『不良』でしょ?」

「物事には限度、というものがある」

「なにが言いたいんだ? 羅円大公《ラエン・タイコー》」

「これ以上、キミに暴力を振るわせるわけにはいかない。たとえ、どんなに強くなったとしても危害を加えるなら、僕は、ある権利を実行する」

「なにをしたい?」

「キミに決闘を申し込む」

「なぜ?」

「僕が勝ったら、キミは一年A組の生徒たちに暴力を振るうのはやめてもらう。モノを壊すのもやめろ。この決闘に僕が勝っても暴力を振るい続けるようなら、ハーティア異能覚醒学院《いのうかくせいがくいん》を退学してもらう」

「ほう、なら俺の条件も似たようなものだ。俺が勝ったら一年A組の事情に口出しするのをやめろ。もし、それができないなら退学しろ。わかったな?」

「……わかったよ」

「では、合意と見なしてよろしいですね? 羅円大公《ラエン・タイコー》くんVS不入良太《フニュー・リョータ》くん。ふたりの決闘が世界の未来を切り開かんことを」

 もう、やるしかない……だけど、あの能力は使えない。

 なんとかして、勝たなければ――。

  *

 ――そもそも、なぜ、こんなことになっているのだろうか?

 能力なしで彼に勝つには、どうしたらいいのだろうか?

 とりあえず、長剣を装備してみる……か?

 そんな危ないものを装備して、彼になにかあったら、どうすればいいだろうか?

 なぜ、こんなにいっぱい疑問が出てくるのだろうか?

 それは僕が危機的状況だから、だろう。

 僕は、どうしても……彼を止めなければならない。

 彼は間違いなく、いけないことをしている。

 僕が止めなくては。

 僕が止めなきゃ、彼は一生……「不良」のままだ。

 だから、僕は彼を倒さなきゃいけないんだ――。

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