ブラコン妹とシスコン兄ちゃんと甘ったるくて苦ったらしい液体(短編小説・後編)

「なあ、俺昨日何してたっけ?」
「覚えてないの?」
「すまん……さっぱりだ」
「ふーん」
「え、えっとですね……できればでいいんですけど、教えてくれませんかね……?」
「どうしようかなー」
「そこをなんとか……! お願いします! なんでもしますから!」
「ほんとに?」
「ほんとほんと! 嘘つかない!」
「じゃあいいよ」
「ありがとうございます! ではさっそく教えてくださいな!」
妹は少し間を空けてから話し始めた。
「お兄ちゃん、昨日の夜わたしに告白してくれたんだよ?」
「へ、へぇーそうだったんですかぁー」
「それでわたしがOKしたら倒れちゃったんだよね」
「そ、そうなのかぁ〜いやぁ驚いたなぁ〜まさかそんなことがあったとはねぇ〜! あははっ! はぁ……」
「どうしたの?」
「い、いやなんでもないぞ? 大丈夫大丈夫全然なんとも思ってないから」
いやマジでびっくりだわ。
まさかあの会話の後にそんなことになってたなんて誰も思わないだろ普通。
しかも倒れたってなんだよそれ完全に事後じゃん。
え、待ってこれもしかして俺たち一線超えちゃってたりする感じですか……?
いやいやいやそれはまずいですよさすがに倫理的にアウトですって!!
ていうかそもそも兄妹だから無理ですし!?
あ、でも今の世の中なら近親婚も認められてるのかな……?
だとしたらワンチャンあるかもしれない……?
でもやっぱりダメですよねはいわかってますごめんなさい許してくださいなんでもしますから!!
だからどうかお許しをぉぉぉぉ!!
神様仏様キリスト様ぁぁぁぁぁぁぁ!!
よし、とりあえず心の中で叫んでみたものの、状況はなにも変わらないな。
さてどうしたものか……と考えていると妹が言った。
「ねえお兄ちゃん」
「なんだ?」
「キスしたい」
「えっ!?」
突然のことに思わず変な声が出てしまった。
というかお前本当にどうしたんだよ!?
頭でも打ったんじゃないのか!?
病院行くか!?
いや待て落ち着くんだ俺よ。
相手は妹だぞ?
血の繋がった実の妹だぞ?
それなのにキスだなんてそんな破廉恥な行為ができるわけないじゃないか!
ましてやキスしたなんてことが親にバレたらどうなると思う?
間違いなく殺されてしまうだろう。
それだけは絶対に避けなければならない!
となると残された道はただ一つしかないだろう。
そう、逃げることだ!
幸いにも拘束されているわけではないので逃げ出すことは可能だろう。
そうと決まれば善は急げだ!
さあ行くぞ!
今すぐここから出ようじゃないか!
そして全て忘れてしまおう!
それが一番平和的解決方法なのだ!
そうと決まれば話は早い。
さっさと立ち上がって走り出そうじゃないか!
そう思った時だった。
突然目の前が真っ暗になったかと思うと、唇に柔らかい感触が伝わってきた。
そして次の瞬間には口の中に何か温かいものが流れ込んできたのだった。
そして数秒ほど経ってから口を離された俺は、何が起こったのかわからず混乱していた。
「え……なに……これ……?」
「ぷはっ……どう?」
「ど、どうって言われても……」
正直言って全く状況が理解できないんだが……いったいどうなってるんだ……?
それに今さっき何を飲まされたんだ……?
甘いような苦いような味だったがあれは一体なんだったのだろう……?
まあ考えても仕方ないか。
それよりもまずは現状確認だ。
えーと、確か俺は逃げようとして立ち上がったんだよな?
そしたら突然目の前が真っ暗になって目の前に妹がいて口に何か流し込まれたんだったよな?
ふむ、なるほどわからん。
これはもう一度考え直す必要がありそうだ。
えーっと確か俺は逃げようとしたはずだよな?
なのになんでまた座ってるんだ?
なぜ拘束されてないはずなのに動けないんだ?
それにさっきから体が熱いような気がするのは気のせいだろうか?
なんか呼吸も荒くなってるし……ってあれ……?
なんかだんだん意識が遠のいていくような気が……するんだけど……やばいこのままだと死ぬかもしんない……助けて誰か……誰でもいいから助けてくれぇぇぇ!!

あれからどれくらい経ったのだろう。
ふと目を覚ますと妹が心配そうな顔でこちらを見ていた。
どうやら膝枕をしてくれていたらしい。
なんかデジャヴを感じるけどまあいいや。
そんなことより気になることがあるので聞いてみようと思う。
というわけで早速質問をしてみることにする。
「おい、ちょっといいか?」
「あ、起きたんだねお兄ちゃん!」
「おう、ついさっき目が覚めたところだ」
「そっかそっか、それはよかったよ!」
「ああ、心配してくれてありがとうな」
「えへへ……」
「それでさ、一つ聞きたいんだけどいいか?」
「ん? 何?」
「なんで俺縛られてるんだ?」
そう、なぜか俺は縄でぐるぐる巻きにされていたのだ。
意味がわからん。
どうしてこうなったんだろう?
もしかして俺が寝てる間に何かあったのだろうか?
そう思って聞いてみたのだが返ってきた答えは意外なものだった。
「だってこうでもしないとお兄ちゃんどっか行っちゃうでしょ?」
「えっ? どういうこと?」
「そのままの意味だよ」
「どこにも行かないよ? だってここが俺の家だしな」
「そういう意味じゃなくて……」
「ん? 違うのか?」
「もういいよ」
「え、ちょ、ちょっと待ってくれよ妹ちゃん! 俺を置いていかないでぇ!!」
結局何もわからないまま終わってしまったようだ。
一体どういうことなんだろうか……?
やはり俺には妹が何を考えているのかを理解することができないようだ。
残念無念である。
しかしまあ、こうして普通に話せているということはそこまで深刻な問題ではないということなのだろう。
きっとそのうちわかる日が来るはずだ。
気長に待つとしよう。
そういえば、まだ大事なことを聞いていなかったことを思い出した。
ちょうどいい機会なので今のうちに聞いておこうかな。
そう思い質問を投げかける。
「なあ、俺のこと好きか?」
すると妹は笑顔で答えた。
「もちろん大好きだよ!」
そんな妹の笑顔を見て、俺も自然と笑みがこぼれる。
ああ、やっぱりこいつ可愛いなぁ……。
そんなことを思いながら妹の顔を見ると、妹は照れたような表情を見せた。そして言う。
「そ、そんなに見ないでよ恥ずかしいから……」
そう言って顔を赤くしながら俯いた。
そんな姿もまた可愛くて仕方がないわけで……ああダメだ……ニヤニヤが止まらない……。
それにしても可愛いなぁ……。
おっといけないいかんいかん……つい見とれてしまっていた……。
あぶないあぶない……危うく道を踏み外すところだったぜ……。
ふぅ……危ない危ない……もう少しで理性を失うところだったぜ……危ない危ない……。
だが安心してほしい……大丈夫だ……問題ない……ちゃんとセーブできたからな……ギリギリだったけど……ギリッギリセーフだったぜ……多分……おそらく……めいびー……。
よし、これでひとまず安心だな! というわけで改めて妹に聞いてみることにしよう。
「あのさ」
「どうしたの?」
「俺のこと好きか?」
「……う〜ん……す、好きだよ……」
「…………」(やっぱ可愛いなこいつ)
「……ねぇお兄ちゃん」
「なんだ?」
「わ、わたしのことどう思ってる……?」
「え? いやそりゃもちろん好きだぞ?」
「ほんとに……?」
「ほんとほんと」
「じゃあさ」
「ん?」
「ずっと、そのままでいてね」
「ずっとって、いつまでだ?」
「うーん、わかんない」
「そうか」
「でも、ずっと激しく結ばれて、一緒にできる運動を永遠にしようね」
「ずっと激しく結ばれて、一緒にできる運動を永遠に……?」
「だから、もう大丈夫だよ」
そう言うと妹は俺の頭を優しく撫でてくれた。その心地良さに身を委ねていると次第に眠くなってきた。
体は、いつまでも拘束されたままで、甘ったるくて苦ったらしい液体を口移しで妹に飲まされる。
そんな毎日だけが永遠に続き、俺と妹は愛を確かめ合う。そんな日々がこれからもずっと続いていくのだと信じて疑わなかった。
だから俺は、今日も明日も明後日も、ずっとずっとこの日常が続くことを願うばかりだった。

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