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政府のプロパガンダ放送局に変質して国民を洗脳するNHKの危険な本質

「放送法の規定により設立された法人です。
いわゆる特殊法人とされていますが、NHKの行っている「公共放送」という仕事は、政府の仕事を代行しているわけではありません。「国営放送」でも、「半官半民」でもありません。」                 (NHKホームページより)


「NHKを壊すな!」

5月10日発売の月刊誌「文藝春秋」に掲載されたNHK職員有志による「前田会長よ、NHKを壊すな」という批判に対して、矢面に立たされた前田会長は「紅白の打ち切りは全くの虚偽であり、誠に遺憾であります。」とピントがずれた反論をしています。

しかし、現在のNHKが抱えている問題はそんな表面的な事ではなく、死の病とも言うべき程の深刻な問題なのです。

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政権寄り財界出身者の指定席となったNHK会長人事 

経営陣のトップである会長には戦後、「不偏不党」というNHKの理念から、新聞社出身者やNHK生え抜き役員が就任することが多く、官僚や財界出身者は稀でした。ところが、2008年頃から財界出身者が会長の椅子に座るようになり、現在の前田会長まで5代続けて財界出身者が会長になっています。

これは敗戦まで「大本営発表」をはじめとする一連のラジオ放送で戦争熱を煽りにあおった戦前の反省の下に、戦後、NHKが再出発して以来の異常事態と言えます。

新聞社出身やNHK生え抜きの会長なら程度の差こそあれ、それなりの節度を持って経営にあたったであろうし、現にその時代は現在のように存在の根幹そのものを揺るがすような深刻な問題は起きていません。NHKの報道姿勢も時に政権批判をすることもあり、概ね中立的で現在のような露骨に政権寄りという事はありませんでした。

しかし、第二次安倍政権発足後の2013年10月から小学校時代の安倍首相の家庭教師を務めたJT顧問の本田勝彦や「永遠の0」「カエルの楽園」を書いた極右作家百田尚樹、安部シンパの中島尚正などが次々とNHK経営委員に送り込まれるようになりました。

更に、2014年、安部友の籾井勝人(元三井物産取締役)が「アベノミクス」と軌を一にするように会長に就任するに及んで、NHKの右旋回は決定的となります。籾井は就任早々、「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」と言い放ち、政府への「従属宣言」ともとれる暴言を吐いています。

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この結果、番組制作部門でニュース報道を取り仕切る報道局は、小池英夫(報道局長を経て現在専務理事)や岩田明子に代表される安部シンパで政権べったりの政治部出身者が「虎の威を借る狐」よろしく権力をふるうようになり、ニュースの内容も次第に政権寄りに変質して行きました。

政権の意に沿わない番組潰しを狙った組織改編

それでも報道局と両輪で、ドラマやドキュメンタリーなどを作っていた制作局全体への安部友支配は、まだそれほど強いものではありませんでした。 これに業を煮やした経営陣は2019年にそれまで8部門制だった制作局を一旦全て廃止し、部局制ではない第1部から第6部までのジャンル別ユニット制に再編する組織改革に乗り出しました。

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これは人事面だけでなく組織面からも政権党の意向に沿った放送をするようNHKを根本的に作り変えてしまおうとする企てです。明らかに第一条で「不偏不党」を掲げた放送法違反であり、NHKを中国や北朝鮮のような政府のための国民洗脳放送局にすることを狙ったものです。

NHKはこのユニット制が実現すると、これまで各部に原則固定的に専属して番組を制作してきた局員をユニット長の判断で各ジャンルを跨いで横断的に配置換え出来るようになるのがメリットと説明しています。

硬直した縦割りから柔軟で流動的な人事制度へという触れ込みで表面的には聞こえはよいですが、実は制作現場に混乱や支障を来さないためにほとんどのユニットにはそれまでの同一部門が丸ごと横滑り式に入るので、当面は改変前とそう大きな違いはないのです。

ところが、この案では唯一「文化・福祉部」だけは完全に解体されて各ユニットに分割されることになっており、実はこの「文化・福祉部」解体こそが経営側の隠された意図であり、2019年の組織改編の大きな目的だったのです。

なぜなら「文化・福祉部」はこれまで、Eテレの『ETV特集』や『バリパラ』、『ハートネット』などで、時に政府を厳しく批判する番組を作って来たからです。

象徴的なのが『バリパラ』で、この番組では安倍首相が引き起こした「桜を見る会事件」を真正面から痛烈に風刺。元TBS記者山口敬之による性暴力被害者伊藤詩織さん、番組中の政治コントで「アブナイゾウ」や「不愛想太郎」などが登場する「バリパラ 桜を見る会」(2020)を放送。       圧力で直前になって再放送が別番組と差し替えになるという事件が起きています。

バリバラ桜を見る会~バリアフリーと多様性の宴~第1部        ※再生中画面右下の←→アイコンをクリックすると画面が拡大されます。


バリバラ桜を見る会~バリアフリーと多様性の宴~ 第2部

政府自民党には目障りな「終戦特集」番組 

また、その多くがEテレやNHKBSで放送されている毎年夏恒例の『終戦特集』のドキュメンタリー番組も経営陣には目の上の瘤であり、政府にとっては不愉快極まりない目障りな存在でした。

例えば組織再編案が提示された2019年の『終戦特集』が「戦争が出来る国」を目指してる政府にとってどれほど不都合なものであったかは、以下のラインナップを見ただけでも一目瞭然でしょう。(リストはその一部です。)

ドラマ『マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~』        

戦場となったルソン島北部の熱帯ジャングルに取り残された多数の現地邦人の悲惨な逃避行と飢餓地獄を描いた反戦ドラマ。ただし、日本軍の加害責任についての描写は極めて不十分という欠陥も。            

アニメ『あちこちのすずさん~戦争中の暮らしの記憶~』        

以下は、ドキュメンタリー。                      

『マンゴーの樹の下で〜こうして私は地獄を生きた〜』         

ドラマのドキュメンタリー版。ドラマ版ではカットされていた日本軍のフィリピンに対する「加害責任」や逃避行で重荷になった背中の我が子をジャングルに遺棄した母親の悲痛な証言など、ドラマ版よりも更に踏み込んでいました。

かくて自由は死せり~ある新聞と戦争への道~』 

戦前の右翼新聞「日本新聞」が、大日本帝国のファシズム化と開戦に果たした役割を検証。これは戦前だけの特殊事情ではなく「日本新聞」と現在、政権に大きな影響力を与えている極右団体「日本会議」や「統一教会」とが二重写しになって見えます。      

『全貌 二・二六事件 ~最高機密文書が明かす真実~ 』

『激闘ガダルカナル 悲劇の指揮官』

『忘れられた“ひろしま”~8万8千人が演じた“あの日”~』

多くの広島市民がエキストラとして参加、原爆の惨禍を初めて真正面から描いた反戦映画「ひろしま」が、幻の映画になってしまった謎を追う。 

『被爆者たちの”ラストメッセージ”~生まれ変わる 広島原爆資料館~』

『幻の巨大空母“信濃”~乗組員が語る 大和型“不沈艦”の悲劇~』

『少年兵が記した“戦争の真実”』                                      

この内、『『全貌 二・二六事件』『激闘ガダルカナル 悲劇の指揮官』については、こちらに詳しく書いています。

前年の2018年の放送リスト                                                                              ドラマ『夕凪(なぎ)の街 桜の国』(原作こうの史代)                                  

幼少期に被爆し原爆病の恐怖に怯えつつも、明日を信じてけなげに生きる若い女性の日常を描いた青春ドラマ。原作の二部構成をプロローグとエピローグの現代編の間にメインとなる「1950年代編」を嵌め込む三部構成=額縁構造に改変。

これによって、平和な現代と悲惨な過去を対比させ、戦争や原爆の残酷さをより強調することに成功しています。この他にも、淡々と描かれる日常生活の中に不意に挿入される原爆投下直後の怖ろしい悪夢が、主題を表現する上で大きな効果を上げています。さらに、主人公の体調の急激な悪化と唐突な死の瞬間が、本人自身の視点から描写される(しかも死の場面のみ白黒)ため、観る者を激しく戦慄させるのです。

その描写があまりにも生々しく衝撃的であるため、主人公に対する哀惜の情と同時に、原爆に対する強い憤りを観ている側に呼び起こすのは、計算され尽くした見事な演出と言う他ありません。

ドラマ『花へんろ特別編 春子の人形』(原案=早坂暁)          

原爆投下によって引き裂かれた若い男女の運命悲劇。                        

以下は、ドキュメンタリー。                    

『平和に生きる権利を求めて~恵庭・長沼事件と憲法~』                     

『ノモンハン 責任なき戦い』                     

事前の情報収集を軽視してソ連軍の作戦意図を誤認した結果、現地の実情を無視した無謀な作戦を立案強行した関東軍高級参謀辻政信。辻をはじめ陸軍上層部のエリート指揮官は誰も敗戦の責任を取らず、「日本は負けていない。」と強弁。その裏では、一方的に責任を現場指揮官に押し付けて自決を強要。日本陸軍の無能・無責任体制を厳しく糾弾した力作。

シリーズ データで読み解く戦争の時代 第1回『自由はこうして奪われた~10万人の記録でたどる治安維持法の軌跡~』

治安維持法は、「天皇制」という国体の変革、私有財産制の否認を目的とした結社を取り締まるため、大正末期の1925年「普通選挙法」と抱き合わせのような形で制定された史上最悪の治安立法。

当初は、共産主義者を弾圧することが目的とされましたが、特高警察による日本共産党の壊滅後は日本が戦時色を強める中で次第にその適用範囲が拡大し濫用されるようになります。

労働運動は勿論のこと、共産主義とは何の関係もない社会運動や農民運動、文化運動(生活綴り方や生活画運動、青年団活動等)、宗教団体、果ては単なる自由主義者までもがその標的となって次々と検挙されました。その数何と10万人以上!

最高刑も1928年の緊急勅令によって死刑に変更され、大日本帝国の戦争遂行のために邪魔になるとみなされた全ての団体、結社、集団、個人を根こそぎ弾圧していったのです。「隣組制度」による相互監視や密告が横行し、仕舞には少しでも厭戦的な事を言ったり、政府の悪口を言ったりしただけで特高に拘禁され、厳しい取り調べや激しい拷問を受けるまでにエスカレートして行きました。

基本的人権が全く保障されない全体主義国家大日本帝国は、まさしく「ディストピア」そのもの。これが安倍前元総理ら極右岩盤支持層が取り戻したいと願っている「美しい国」日本の正体です。

シリーズ データで読み解く戦争の時代 第2回『隠された日本兵のトラウマ~陸軍病院“戦時神経症”8000人の記録~  

日本軍の「三光作戦」(殺し尽くし・焼き尽くし・奪い尽くす)下、命令とは言え婦女子を含む民間中国人を自らの手で虐殺したトラウマ。軍隊内部の言語を絶する激しい暴力。凄惨で地獄のような戦場体験などによって多数の日本兵が戦時神経症にかかり、陸軍精神病院に送られていた事実は「無敵皇軍神話」を守るため長い間隠蔽されて来ました。
戦争に動員された日本兵は大日本帝国の被害者であり、同時に占領地域国民への加害者でもあったのです。

この問題は2021年の『クローズアップ現代~封印された心の傷 “戦争神経症”兵士の追跡調査』でも取り上げられています。(ダイジェスト版)

  『憲法と日本人~1949-64 知られざる攻防』

このドキュメンタリーには、私たち国民には憲法で保障された「平和に生きる権利」(「平和的生存権」)があるんだよという大切なメッセージが込められています。

『船乗りたちの戦争 ~海に消えた6万人の命~』          

攻撃一本鎗の日本海軍が日本の生命線ともいうべき輸送船団護衛を軽視したため、次々に撃沈されて行った民間徴用輸送船乗組員の悲劇を取り上げています。実は、大日本帝国の息の根を本当に止めたのは、派手なB29による日本本土爆撃より、主に潜水艦による日の丸輸送船団壊滅によるものだったのです。

詳細は、こちら。

『平和に生きる権利を求めて~恵庭・長沼事件と憲法~』

こちらで詳しく取り上げています。

『“祖父”が見た戦場~ルソン島の戦い 20万人の最期~』 

『“駅の子”の闘い~語り始めた戦争孤児~ 』     

なお、2017年には、沖縄那覇飛行場近くの米軍基地から核搭載ミサイル「ナイキ・ハーキュリーズ」が誤って発射され、那覇沖の海上に落下した重大事故 (安全装置が作動して幸いにも起爆せず、事故で米兵1名が死亡) をスクープした「スクープドキュメント 沖縄と核」「731部隊の真実~エリート医学者と人体実験~」「戦慄の記録 インパール」 などの超問題作が放送されています。

この内「731部隊」については、こちらに詳しく書いています。

以上のリストを見ても分かる通り、戦争を取り上げた番組すべてに共通しているのは「反戦」と「日本の戦争責任を問う」という確固としたポリシー。当然のことながらドラマも含めて戦争を肯定し、煽るような番組は一本もありません。

これらの作品群は、憲法九条を改悪して「戦争の出来る国」を目指す政府自民党にとっては極めて不都合で国民に絶対見せたくない番組であることは明らかです。

また、憲法や基本的人権を取り上げた番組も現行憲法を擁護し、国民に根付かせようとする極めて優れた内容の作品ばかり。                         「基本的人権」「国民主権」「平和主義」の憲法三原則を敵視する政府自民党にとっては、どれも我慢ならない番組のはずです。

番組潰しにとどまらず「電波を民間に開放する」との新自由主義政策を口実にNHKの良心ともいうべきEテレを廃止、または売却しようとする動きさえあるのです。

また、ユニット制にすれば、政府に睨まれるような良心的な番組を作ったスタッフを、「人事交流」を名目に他の畑違いのユニットに飛ばして干すことも簡単ですね。

その後、この組織再編案がどうなったのか続報が全く無いので不明ですが、いくら現場職員の反対(当時、72名のNHK職員が反対声明を出しています)があったとしても力関係から言って強行されてしまった可能性が高いと見るべきでしょう。

逆風の中でも良心的番組を作り続けるNHKスタッフの矜持 

こうした逆風の中、翌年以降の「終戦特集」が果たしてどうなるのか注視していましたが、昨年も一昨年も一応例年通り「終戦特集」は放送され、ひとまずは胸を撫でおろしました。

昨年の放送リスト                          ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』           遠藤周作の原作を元にした熊井啓監督の映画『海と毒薬』と同じ敗戦直前に起きた「九州大学B29搭乗員生体解剖事件」を取り上げた作品。                    以下は、ドキュメンタリー                      『特攻 知られざる真実』                     『マルレ~“特攻艇”隊員たちの戦争~』                 『銃後の女性たち~戦争にのめり込んだ“普通の人々”~』             『封印された心の傷 “戦争神経症”兵士の追跡調査』           『原爆初動調査 隠された真実』                    『ひまわりの子どもたち~長崎・戦争孤児の記憶~』          『”玉砕“の島を生きて~証言記録 サイパン・テニアン』

『銃後の女性たち』が取り上げたのは、国防婦人会。会員1000万人を擁し、白タスキとカッポウ着を会服とした草の根戦争協力ファシズム団体「大日本国防婦人会」は、朝ドラ『エール』でもその活動の実態が克明に描かれていました。

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「国防婦人会」について、こちらの記事で触れています。

ただ、東京五輪のあおりを受けたためか放送本数は16本と例年より少なく、また、『全貌 二・二六事件  』『平和に生きる権利を求めて』『自由はこうして奪われた』に匹敵するような衝撃的な作品はあまり見当たらず、質的にもやや物足りなさが感じられたのは否めません。東京五輪中継時間の確保のためという口実で、毎年恒例の地上波「原爆特集」も潰されています。

その穴埋めという事なのか分かりませんが、年末の12月8日(日米開戦の日)前後に香取慎吾主演の特集ドラマ『倫敦ノ山本五十六』」を目玉に、『新ドキュメント太平洋戦争』『昭和天皇が語る 開戦への道』など「太平洋戦争80年 関連番組」がアンコール作品も含めて集中的に放送されています。

この特集で放送された新作も加えると昨年全体の「終戦関連番組」総本数自体は例年とそれほど変わりなく、組織改悪の嵐の中でも良心的なNHK職員は圧力に屈せず頑張ってくれているのだなとエールを送りたくなります。

右傾化するニュース報道番組

しかし、この抵抗が現政権下でいつまで続けられるのか心もとない面があるのも事実です。例えば、長年、地上波で良心的番組を作り続けて来た伝統ある『NHKスペシャル』にもとうとう政権の毒素が回ったらしく、昨年後半あたりから明らかに番組内容がおかしくなり始め、政権寄りの番組が目立つようになってきました。(「『NHKスペシャル』よ、お前もか!」)

もっとひどいのは、昨年12月に放送したドキュメンタリー番組「BS1スペシャル・河瀬直美が見つめた東京五輪」。とうとうNHKが「事実」を捏造するところまで堕ちてしまった事実が表面化。番組に登場した男性の話とは違う「五輪反対デモにお金をもらって参加した」という虚偽の字幕をつけて放送し、大炎上するというNHK始まって以来の大不祥事です。

字幕は映画監督河瀬直美が制作中の『東京五輪公式記録映画』のスタッフが付けたものという一部報道もありますが、どちらにせよこれは公共の電波を使った東京五輪反対派に対する一方的な攻撃で、故意に反対派を貶めてイメージダウンさせることを狙った極めて悪質なものです。批判に対して放送したNHKは弁解に追われ一応謝罪しましたが、当の河瀬直美は無責任にも高みの見物を決め込んで何のコメントも出していません。

政治部が支配するニュース番組はこれらの事例よりずっと早く、安倍長期腐敗政権下で着実に右傾化が進み、現在では、完全に政府広報番組になっています。

特に「ウ・ロ戦争」が始まってから、NHKニュースは、連日、ウクライナ関係の報道に番組枠の半分以上の時間を費やし、国民の目を国内問題から外に逸らす事に血道を上げています。また、連日トップニュースとして長時間放送することで国民の危機感を煽って国防意識を高め、国民がこぞって防衛費増強を肯定するように仕向けています。

その一方で、11兆円(16兆円とも)もの政府予備費(国民の税金)が使途不明になっている事実も「桜を見る会」にサントリーが大量の酒を無償で提供していた新たな疑惑も一切報じないNHKは、最早腐っているとしか言いようがありません。

また、国民の基本的人権である「表現の自由」を奪う現代の「讒謗律」「新聞紙条例」とも言うべき「侮辱罪」の厳罰化法案が、国会を通過しそうなこともNHKは一切報道していません。この治安立法が成立してしまえば、政治家への正当な批判まで出来なくなる恐れがある民主主義の危機にも関わらずです。

異常な程ウクライナ関係報道を増やしているのは、上に書いたようにこの戦争に乗じて国民の戦争熱を煽り、国防意識を高めて7月の参院選に勝利し、その後に予定されている憲法改正を容易にしようという政府自民党の意向に100%沿ったものです。こうなるとNHKのニュース・報道番組自体が、最早国民にとって危険な害毒になっていると言っても過言ではないでしょう。

国民の世論形成に大きな影響力をもつNHK

NHKの問題は、党首の立花孝志が極右宗教団体「幸福の科学」の信者であることが暴露されたNHK党(こちらも当然極右政党)が主張しているような「NHK放送のスクランブル化」や「放送料金の強制徴収」のような些末で表面的な問題ではなく、この国の政治や国民生活の行く末に大きな影響を与える重大問題です。

なぜなら、未だに日本国民は欧米民主主義諸国に比べてマスコミへの信頼度が異様に高く、約7割の国民がNHKを無批判に信頼し、ニュース報道などから大きな影響を受け続けているからです。

ここにも自立した自由な思考が苦手で「すべてを疑え!」という批判的思考ができず、権威があるとされるものの言説を鵜呑みにして盲信しがちな日本人の「権威主義的体質」がよく表れています。

中学校に入学した頃から、「校則」や学校行事、生徒指導、体育会系部活という不条理かつ非合理的な規則や教育によってがんじがらめに縛りつけられ、目上の者や権威のあるものには従順に従うように強制される「権威主義教育」の下では、自由で批判的な思考力をもつ自立した近代的市民が育つはずもないのですが。

日本人が「権威主義的国民」でなければ、究極の権威主義の化け物である「天皇制」などは、とっくの昔に廃止されていたでしょうから。

国民洗脳放送局に成り下がったNHK 

  一番大きな問題は、今のNHKはかつてのような国民のための放送局ではなく、政府からの指示を待つまでもなく政権にとって不都合な情報は自ら進んで忖度して自主検閲でカットし、代わりに政権に都合のよい情報を無批判かつ一方的に垂れ流す中国のような官製プロパガンダ放送局に(国民が知らない間に)変質してしまっているという事にあります。

安部・菅政権(菅は総務大臣時代から)は、会長・経営委員の人事や放送内容に陰に陽に介入して圧力をかけ、内閣人事局制度によって官僚を国民全体の奉仕者から権力者の下僕に変えて腐敗させたのと同じように、NHKを政府の従属下に置いてしまったのです。

政府に従属しながら表面上は中立を装い、国民から強制的に徴収した放送料で、国民意識を政権にとって都合のよい方向へ洗脳するニュース・報道番組を大量に流す事で、時の権力者に奉仕しているのが今のNHKの実態です。

NHKだけでなく、日本の報道機関全体の露骨な右傾化を見れば、「報道の自由度ランキング」が「先進国」にあるまじき世界71位に低下したのも当然の結果です。

では、NHKを国民の手に取り戻すには、どうしたらよいのでしようか。

放送法を改正し、NHKの規制監督権を政治から切り離す事が必要

NHKを「国民のための放送局」に戻すための手本となるのが、同じ公共放送である英国BBCのあり方です。

国民からの放送料によって運営されているのはほぼ同じですが(BBCはライセンス制)、最も大きな違いはBBCに対する規制監督が、政府から独立し放送免許を与える権限も持つ「放送通信庁」(オフコム)という機関によって行われているという点です。

英国では、BBC以外のテレビ局(日本の民放にあたる)もすべて 「公共サービス放送」 に位置付けられ、 報道番組の不偏不党が義務化され、番組構成にも一定の規制がかかる ようになっています。

日本のテレビ局も「不偏不党」をうたっていますが、ワイドショーなどの政権寄り右翼番組や「ニッポンスゴイ!」系の夜郎自大番組がのさばる日本の放送業界の現状を見れば、建前だけの絵に描いた餅だという事は明白です。

これに対し、BBCをはじめ英国の放送局の立ち位置は常に市民の側にあり、政府側に不正や問題があれば忖度したり、隠蔽したりすることなく、その事実をありのまま国民に伝え、当然のように放送局独自の厳しい政府批判を行います。

記者会見でも首相や閣僚たちに容赦なく厳しい質問をぶつけ、納得できなければ納得できるまで同じ質問を何度も繰り返します。当たり前ですが、日本の記者クラブのように更問い(再質問)は一切認めないなどという国民の知る権利を侵害する異常な規制は一切ないのです。

政府が政策を発表する際も、日本のように政府発表だけをそのまま垂れ流して終わる(日本のTV局はこれを「不偏不党」と勘違いしています)のではなく、市民の立場から政策の問題点や不備、市民生活への影響などについて独自の立場からメディアとしての見解を付け加えるのが当たり前になっています。

「不偏不党」という原則についても実質が伴うように、政府要人の説明を聞いた後は、野党議員を出演させて政府批判をさせるので、国民は、両者の主張を聞いたうえでその政策への賛否を判断することが出来るのです。

日本でも「放送法」を改正して、BBCのようにNHKの規制監督権を国会や政府から切り離し、干渉を一切排除した公正な独立機関に任せることが必要です。そうなれば、NHKも自主性を取り戻し、政権に遠慮したり、忖度したりする事なくに国民の側に立った本来の公平公正な番組作りが出来るようになるはずです。

どんな政党も長期政権になれば必ず腐敗し、平気で国民に嘘をつくようになります。

政府の不正や汚職、予算執行、外交や条約、また、憲法違反、あるいは国民の自由や権利を侵害するような法案を通そうとしていないかなど、政府の行政執行を日夜監視し、チェックして問題があれば国民にその事実を伝え、批判して行くのがジャーナリズムやマスコミ本来の役割なのですから。

日本の「民主主義」と英国の民主主義

以上のように、公共放送の一件を見ただけでも英国の民主主義と日本の「民主主義」との間には、民主主義と言っても天と地ほどの開きがある事は一目瞭然です。

英国から見たら、子供騙しのような日本の「形だけの民主主義」などちゃんちゃらおかしくて、とても民主主義などとと呼べる代物ではないでしょう。

英国がこれまで日本のようなファシズム国家になった事がなく、これからも絶対にならないであろう事は、真の民主主義が国民の間に空気のように当たり前に根付いているからです。

これが市民革命を起こして、自らの手で自由と民主主義を勝ち取った英国と太平洋戦争敗戦のおかげで形だけの民主主義を負け取った国日本」との根本的違いなのでしょう。日本は英国と同じような民主主義国家ではなく、上に書いたように、内実は今でも戦前と同じ権威主義全体主義国家体制がそのまま続いている国ですから。

未だに「お上に下々の者が仕える」国日本。「お上が下々の者に仕える」日は、いつになったら来るのでしょうか。憲法15条で「大臣や国会議員を含む公務員は、国民全体の奉仕者」のはずですよね。 

戦後の日本と戦後ドイツの国家体制の違いについては、次の記事で触れています。

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