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1960年代~80年代の泣ける名曲100選⑧~「歌謡ロック編1」~アン・ルイス、舘ひろし、矢沢永吉、横浜銀蠅、甲斐バンド、沢田研二、チェッカーズ等全44曲

前回から随分間が空いてしまいましたが、8回目にしてようやくシリーズ名通りの100曲超えを達成。

今回は、いつもとは趣向を変えて「歌謡ロック」の名曲を集めてみました。
とは言ってもブルースロックやジャズロックなどに比べるとジャンルの概念がはっきりせず、「歌謡ロック」という日本独自のジャンル自体が果たしてあるのかないのかさえ確定していない状態なので、ピンとこない人が殆どだと思います。

単純化するとブルースロックがブルースっぽいロックであるとするならば歌謡ロックは歌謡曲っぽいロックという事になりますが、要するにアップテンポなロックのリズムと激しいビートに歌謡曲のメロディを載せた曲という事になるでしょうか。まあ、日本のロックは全て歌謡ロックと断言している過激な御仁もいらっしゃいますが。

歌謡曲のロック化は古くはカバーポップス~GSの時代に遡りますが、その時代と1970年台後半から盛んになる歌謡ロックとの橋渡しとしてのリズム歌謡をヒットさせた歌手として橋幸夫を取り上げていますので、よろしければ覗いてみてください。また、「B級GS名曲集~一人GS 前後編」では、橋幸夫以外のリズム歌謡を取り上げています。


なお、今回は例外的に1990年代以降の曲も何曲か混ざっています。

※動画再生中に画面右下の▢アイコンをクリックすると画面が拡大されます。ただし映像の解像度が低いとかえって逆効果ですが。

86 エミー・ジャクソン「涙の太陽」(1965)

ベンチャーズとビートルズから影響を受けた本格的な歌謡ロックの元祖としてやはりこの曲は欠かせないですね。発売がGSが現れる直前の時期で彼らにも大きな影響を与えています。

初めてこの曲を聴いた時イントロの迫力のあるギターリフにガツンとやられましたが、発売当時は国産の曲である事は隠されていたため聴き手は皆洋楽曲とばかり思っていました。スタジオミュージッシャンを集めて作られたタイトなバック演奏とコーラスはなかなか大したもので、当時の日本でこれが作られたという事がひとつの驚きでした。3枚目のシングルからバック演奏は、ブルーコメッツが担当する事になります。

エミー・ジャクソンは.イギリス生まれで祖父がイギリス人。当然、米語ではなく英語を話しますから、出だしの歌詞も米語の「テイク・ミー」ではなく「タイク・ミー」と発音させたと作詞の湯川れい子が後に明かしています。

沢山のカバーがありますが、1973年には安西マリアが、1989年には田中美奈子がリバイバル・ヒットさせています。

                                  87 こちらはライブです。

エミー・ジャクソン42歳の頃のTVライブ。バックが寺内タケシ、ブルコメの三原綱紀、シャープファイブの三根信宏と超豪華。

88 ジャックス 「堕天使ロック」(1969)

伝説の若者向け情報TV番組「ヤング720」に残されたジャックスの貴重なライブ音源。現役時代のジャックスは、デビューシングルの前衛的幻想ロック「からっぽの世界」(その後放送禁止歌に指定)がスマッシュヒットしたものの、その後に発売したレコードが全く売れず、4年後に人気が出ないまま不遇のうちに解散。しかし、前衛的で情念的なその楽曲はその後に続くニューロックのバンドにも影響を与え、近年、再評価されつつあます。

「ヤング720」には多くののGSバンドが出演しており、当時は、この番組を観てから登校するの習慣になっていました。今でもよく覚えているのがタイガースが初出演した時。加橋かつみが「僕のマリー」の簡単な間奏リードギターを弾き間違えたのにはびっくり。何しろ生番組だったので、当時のGSの演奏技術が未熟だったのが子どもにも丸わかりでした。
「僕のマリー」は1回聞いただけで、大いに気に入りましたが。

89 DOWN TOWN FIGHTING BOOGIE WOOGIE BAND「堕天使ロック」(1980)

在籍していた東芝を離れ、バンド名の一部も変更して自主制作したライブアルバム「海賊版」に収録されたブルースロック風アレンジによるカバー。レコード会社の制約がなくなり、やりたい音楽だけをやりたいようにやっています。過去のヒット曲を封印したのもこの頃。

90 DTFBWB +文楽「曽根崎心中 道行華」(1980)

1980年には、文楽とロックの融合を試みたユニークなアルバム「曽根崎心中 Part2」をリリース。この時のライブの模様は、TVKから放送されています。なお、宇崎竜童は1978年、近松門左衛門原作、増村保蔵造督の「曽根崎心中」に主演しています。

91 モップス「たどり着いたらいつも雨降り」(1971)

このTVライブ映像は放送当時、リアルタイムで観ていました。アレンジと星勝のギターが素晴らしい。
1968年に全盛時代を迎えたGSブームも翌年からは潮が引くように急激に衰退。1970年頃には他のGSが軒並み解散を余儀なくされる中、モップスはいち早くロックバンドに転身。この曲や「月光仮面」がヒットして例外的に1974年まで活動を続けました。

GSについては、こちらのシリーズで詳しく書いています。


92  アン・ルイス「あゝ無情~六本木心中」(1986・1984)

2曲とも本格的にロックと歌謡曲の垣根を取り払った「歌謡ロック」の名曲。

                                  93 ロカビリーバンド「ビスキャッツ」による最近のカバー

いつもなから、アレンジが冴えています。        

94 もんた&ブラザーズ「ダンシング・オールナイト」(1980)

一度聴いただけで、いつまでも心に残る腐朽の名曲ですね。                  

95 舘ひろし&COLTS「朝まで踊ろう」(1977)

舘ひろしのオリジナル曲はかなり歌謡曲寄りで少し物足りない出来栄えでした。ロックバンドCOLTSと共演したこちらの再録版の方はロック(スカ)寄りで、原曲より遥かによくなっています。後奏がなかなかいいです。

96 Mi-Ke「朝まで踊ろう」(1992)

Mi-Keの一連のカバー曲の中では一番よい出来かと。
それにしてもこのPV、これでもかという位衣装にお金をかけてますねえ。まるで、Mi-Keのファッション・ショー? バブルの余韻が色濃く残っていて、まだ日本経済も元気な時代でした。


97 中原めい子「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」(1984)

                                  98 ビスキャッツによるカバー

アレンジがなかなか絶妙ですが、前半のスローテンポ部分を聴くとこの曲のメロデイが完全に歌謡曲である事がよく分かります。

                                  99 中原めい子「鏡のアクトレス」(1988)

「あゝ無情」と並ぶ典型的な歌謡ロック。バックの演奏もしっかりハードロックしています。

100 こちらはライブ。

                                  101 サザンオールスターズ「東京シャッフル」(1983)

「シャッフル」なので、どちらかというとジャズロックに近いですが。

                                  102 矢沢永吉「黒く塗りつぶせ」(1977)

初めて聴いた時、ワーキングプアの視点から金持ちども(資本家階級)を槍玉に挙げる歌詞が入っていたのにはびっくりしました。
映像は前半だけですが、アレンジと演奏が素晴らしくド迫力です。よく聴いていると、バックの演奏は意外にブルースロックっぽいんですね。

こちらは、氷室京介などのゲストを迎えた2009年の東京ドームライブのフルバージョン。

                               

103 矢沢永吉「長い旅」(1978)

キャロル以来、矢沢永吉をJ-ロックの神様と思っているファンの皆様から「我らが永ちゃんの曲を歌謡ロック扱いするとは何事だ!」と大目玉を食らいそうですが、まあ、こちらにも色々と事情があるのでご容赦を。
個人的には歌詞、メロディ、アレンジ、歌唱のどれもが素晴らしい抒情ロックの一つの頂点としてのこの曲が、矢沢永吉のベストワンだと思っています。


104 横浜銀蠅「哀愁のワインディング ロード 」(1983)

強面のツッパリロックンロールバンドに目一杯抒情的な歌謡ロックを歌わせるというミスマッチな企画がなかなか斬新でした。

105 日下優「哀愁のワインディングロード」               


106 SALLY「バージンブルー」(1984)

「バージンブルー」はSALLYのデビュー曲で、最大のヒット曲。サックスが入ったバンド編成や曲調がチェッカーズに似ているため、一時は「第二のチェッカーズ」と呼ばれました。確かにドラムスとサックスで始まるイントロが「ジュリアに傷心」など、一連のチェッカーズのヒットとそっくり。                              


107 アルフィー 「霧のソフィア」(1985)

思いきりド派手でドラマチックなアレンジを施して盛り上げていますが、メロディ自体はとても抒情的で繊細です。

                                 108 桑名正博「サードレディ」(1978)


109 桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」(1979)

                                  110 南佳孝「モンロー・ウォーク」(1979)

                                 111 ヴァージンVS 「ロンリー・ローラー」(1981)

あがた森魚は、林静一の同名マンガにインスパイアされた「赤色エレジー」(1972)が大ヒット。同じ大正浪漫路線の「清怨夜曲」、「昭和柔侠伝の唄(最后のダンス・ステップ)」をスマッシュヒットさせたものの、その後は鳴かず飛ばず状態で1970年台後半にはすっかり忘れられた存在に。

1981年、突然、当時流行していたテクノポップ~ニューウェイブ系バンド「ヴァージンVS」のリーダー兼ボーカリストに変身して復活。シングル曲をTVドラマやアニメとタイアップする商業路線を取り、1980年代半ばまで活躍しました。並行して俳優業にも進出。1981年には早坂暁脚本の傑作ドラマ「夢千代日記」(主演 吉永小百合)にも出演しています。

林静一の「赤色エレジー」については、こちらに書いています。

112 小柳ルミ子「誰でもいいはずないじゃない」(1991)

小柳ルミ子としては最もアップテンポで軽快な乗りの典型的歌謡ロック。

                                 113 沢田研二「ストリッパー」(1981)

作曲が沢田研二本人というのがすごいです。
イントロのベースが何となくキンクスの名曲「サニーアフタヌーン」に似ているような気がするのですが。

114 キンクス「サニーアフタヌーン」(1966)

                                  115 沢田研二「ジャンジャンロック」(1981)

「ストリッパー」のB面ですが、こちらも沢田研二の作曲。A面として出してもおかしくない出来栄えで、AB面共に名曲というのはなかなかお目にかかれません。

                                  116 ツイスト「銃爪」(1978)

今はそれ程でもありませんが、ツイスト人気が沸騰していた頃は、世良公則の大股を開いた過剰であざといステージパフォーマンスが気持ち悪くて大嫌いでした。                      

117 甲斐バンド「漂泊者」(1980)

TVドラマ「土曜ナナハン学園危機一髪」の主題歌。

                                 118 甲斐バンド「悪いうわさ / ダニーボーイに耳をふさいで」(1978)

2曲続けて聴くともうお腹いっぱいという感じになりますね。

                                 119 カバーですが、「悪いうわさ~ダニーボーイに耳をふさいで」

特に前半の「悪いうわさ」は、ひょっとしたら本物?と思わせる程違和感がなくうまいです。

120 斉藤和義「砂漠に赤い花」(1996)

                                 121 シャ乱Q 「いいわけ」(1996)

突然始まるイントロと曲の途中に入る「間」がなかなか秀逸。

 
122 槇原敬之「Hungry Spider」(1999)            

メルヘン調のストーリーを通して、恋してはならない者に恋してしまった主人公の切ない思いを美しく歌い上げた抒情歌の名曲。オチの有るPVもよく出来ています。

アニメ『くもとちゅうりっぷ』(1943)

主題が異なるので「Hungry Spider」とは直接の関係はないと思いますが、『くもとちゅうりっぷ』は日本アニメの父正岡憲三が戦時中に制作した短編フルアニメの傑作。

戦時中にこのような一見戦時色のないアニメがよく軍部の厳しい検閲を通ったものだと感心しますが、検閲官は蜘蛛を米国 (パターン化された黒人のイメージ) 、テントウムシや花をアジアの諸民族、暴風雨を神風、最後にテントウムシや花を助ける(解放する)虫を大日本帝国と解釈することで検閲を通したのかもしれません。

                                
123 槇原敬之「花火の夜」(2002)

楽曲的には「Hungry Spider」をスケールアップしたような感じですが、リリースから20年以上経過した現在でも全く色褪せる事なく、歌い手も聴き手も思わず涙がこぼれそうになる切ない抒情歌の名曲です。

                                 124 中納良恵・東京スカパラダイス「黄昏を遊ぶ猫」(2012)

最後の方がカットされているのが残念。

中納良恵・東京スカパラダイス「黄昏を遊ぶ猫」(2012)                      


125 ポルノグラフィティ「ジョバイロ」(2005)

PV映像のヒロインは野波麻帆。同名傑作マンガをTVドラマ化した『モテキ』の演技が超絶素晴らしかった。

126 チェッカーズ「ジュリアに傷心」(1984)

チェッカーズはアイドルバンドという側面が強いですが、典型的な歌謡ロックバンドでもあります。デビュー曲の「ギザギザハートの子守唄」から9枚目のシングル「神様ヘルプ」まで駄作が一曲もないのはすごいです。

127 チェッカーズ「神様ヘルプ」(1985)

                                  128 カルメン・マキ&OZ 「閉ざされた街」(1976)

カルメン・マキはデビューしてから暫くは寺山修司と組んでフォーク調の歌謡曲を歌っていましたが、数年後にハードロックバンドのボーカリストに変身して再登場して来たのには驚きました。

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