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Sweet Home-内包された闇と戦う -


先日LINEの“ダヴィンチニュース”が「韓国エンタメの底力」というタイトルでおすすめしてきたドラマ。別に私にだけすすめてきたわけではないのだが、何となく気になって記事を読んだ。韓国ドラマといえば、ここ最近『愛の不時着』や『梨泰院クラス』などのヒットで第何次かは知らんが韓流ブームと言って良いのではないか。何を隠そう、私も第一次、二次くらいの頃は韓流にどっぷり浸かって、当時大好きだった俳優さん(ヨン様ではない)の“ファンミーティング”いわゆるファンの集いに参加したり、ネットで知り合ったファン同士のオフ会に参加したりと、大いに楽しんでいた。K-popにハマらなかったのは、私にはジャニーズがあったから。そういう“動”の応援から、家でドラマや映画を観るだけの“静”の応援に変わったが、今でも韓国ドラマや映画は気になる。しかし、今流行ってるのはNetflixのオリジナルドラマなので私はまだ観ていない。年末に娘がやっとNetflixに入ったので観ようと思えば観られるのだが、 何となく乗り遅れた感が否めずいまひとつ気が進まない。ダヴィンチニュースがおすすめしてきたドラマもNetflixのオリジナルドラマだった。


娘に話したら「じゃ、一緒に観る?」と言ってくれたので、早速視聴。全10回のうち、いきなり3話分続けて観た。本当はもっと観たかったが、さすがに疲れて今日はここでやめとこう、となった。というより、面白すぎて先が気になってやめられなくなりそうだったから。


『Sweet Home -俺と世界の絶望-』。ある原因により誕生した怪物と古アパートに籠城する人々との生き残りをかけた壮絶な戦いを描いたこの作品を観て、「韓国ドラマはついにここまで来たか」と思った。(ダヴィンチニュースより)

みとんさんてこんなのが好きなの?と思われそうな内容だ。血がいっぱい出たり、怪物が出たりが苦手な人はごめんなさい。でも私は始まって2、3分で既に引き込まれていた。なんとも言えない不穏な空気、BGMの無いシーンの連続で籠城することになるであろう住人たちの日常や関係性が点で描かれる。もちろんこっちは怪物が出てくることは承知で観ているのだが、その点と点がやがて線になり、伏線がはられ、初めはいくつかのグループごとそれぞれが怪物との攻防を繰り返す。住人目線の「何でこんなことに?」から、「どうやって生き延びるか」に視聴者は釘付けだ。怪物の特性も徐々にわかってくるし、住人の中に意外に役に立つ人がいたり、住人同士が対立したり協力したり。このドラマでは、例えばゾンビもののように噛まれて感染するわけではなく、自分がいつ怪物になるかもしれないのだ。突然鼻血や失神などの症状が現れる。とにかく、よく出来ている。興味が尽きない。つい、もっと観たくなってしまうような演出だ。


このドラマを観ていて一つ気づいたことがある。本作のように得体の知れない怪物が襲ってくるだとか、謎の感染症で人々がゾンビ化するとかいわゆるパニックもの、このジャンルの作品内では極限状態における人間の本質のようなものが描かれることが多い。そして大体において、そこに笑いの要素は無い。例えば『シンゴジラ』、私もBlu-rayを買うほど大好きな作品だが、ゴジラを前にしてはジョークの一つも出てこない。真面目だ。みんな真面目にゴジラと対峙する。ところが韓国ドラマや映画になると、得体の知れない怪物がいて、自分たちの命が脅かされている状況でも、「クスッ」と笑えるセリフや行動が出てくる。今のこの状況でそんなことまだ言ってるの?みたいな。今はそんなことよりやるべきことがあるんじゃないの?みたいな。人間の性格、思考回路、思想、人間関係‥そういうのはどんな状況になろうと意外と変わらないのかも知れない。


第3話でも笑いのシーンがあった。とりあえず怪物から逃げて、ある部屋に集まる住人たち、まずは腹ごしらえと食卓を囲むのだがそれは家族の団欒のようにも見えるし、よく知らない同士の緊張感もある。そしてその部屋の住人が場を明るくしようとするも、ことごとく他の人の地雷を踏んでしまうのだ。クスッ。観ている私はちょっとだけホッとする。私たち視聴者も、ドラマの中の人と共に怪物と戦っているようなもんだ。いつ、どこから怪物が現れるやも知れない。いつ誰が怪物になってしまうのかもわからない。ウワッ。ドヒャ。常に緊張している。観ているだけで疲れる。そんな中での息抜き。柔と剛。そして柔の後は、逆に緊張が高まる。この世界観において、ホッとする時間が少ないであろうことは充分予測できる。この笑いのバランスが韓国エンタメの真髄なのかも。


老人と子どものやりとりは、映画『ライフ イズ ビューティフル』を彷彿とさせた。君の任務は見つからないように隠れとくことだよって言うとこ。このドラマのバイプレイヤーさんたち、いろんな韓国ドラマでよく見かける名優揃い。観ているうちに、やはり自然と推しメンが出来てくる。この人には頑張ってほしい、死なないでほしい、怪物にならないでほしい。誰かに死亡フラグが立つのは、その人の優しさが画面に描かれるときだ。推しメンじゃなくても、誰かが死んでしまうのはやっぱり悲しい。だって、今や私も一緒に戦っているから同志のようなもんだから。CGや特殊メイクなど相当お金がかかっている。怪物の造形だけでもなかなかすごい。いろんなタイプが出てきて、新種が出てくる度に「うわっ、すごいのきた」と感心しきりだ。記事によると1話につき3億円近くかけて制作されている。


ただ怪物と戦うだけじゃない。住人たちの問題やトラウマは、現代社会における課題であり、舞台となるアパート自体が小さな社会だ。DV、犯罪、病気、宗教、マウンティング、家庭環境、いじめ、差別、自殺願望‥それらが浮き彫りにされていく中で時には誰かを責めたり人が人を裁いたり報われないことへの怒りの矛先を他の人に向けたりもするが、最後には優しさが残っていく。悲しいけれど救われる。
一つ残念だったのはこのドラマ、第2シーズンの制作が決定しているので、何も解決しないまま謎を残したまま、いやむしろ謎を増やして終わったことだ。結局、次シーズンも観ないといけなくなるという罠だった。見事にひっかかった。まだまだこのドラマの続きが観られるなんて幸せだ。


それにしても私って、Netflixで初めて観る韓国ドラマが怪物ものって、相当あまのじゃくだ。さて次はいよいよ『愛の不時着』でも観るか。



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