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誰も知らない世界のことわざ その④


ものは言いよう、同じ事を言うにも言い方一つで相手に不快な思いをさせることがあります。正しいことを言っていても、「そんな言い方しなくても」と思ってしまうこと。一度発した言葉は言わなかったことには出来ないから私も気をつけたいです。


さて世界のことわざをご紹介してきたこのシリーズの最後は、ソフトな言い方とは違って実はものすごく辛辣なことを言っている、そんなことわざを集めました。


『私のサーカスではないし、私のサルでもない』/ポーランド語

『私の別荘は、ずっと外れにある。』/ウクライナ語

この2つは似た意味で使われています。
“それは私の問題ではない”とか“私には関係ない”ということ。少しフォローするなら、「そのことに私は詳しくないから、よく知らないから」という心情からで、自分に必要のない(関係ない)ことには首をつっこまないよという気遣いでもあります。ちなみにウクライナ語のほうの“別荘”は別に別荘である必要はなく、人が住めるような場所なら何でもあてはめていいそうです。いろいろ考えてみましたが、私はやっぱり別荘が一番このことわざに合ってると思いました。(何か他に良い候補を思いついた方は是非教えてください。)


『青の問いに、緑の答えを与える。』/チベット語

”尋ねられていることに全く関係ないことを答えている”、あるいは質問された意味がわからない時や、元々の質問を忘れてしまった、そんな状況を表しています。本書では、政治の世界を例にあげています。スキャンダルや失策について尋ねられた時にはぐらかすような答えでごまかそうとする、そんな時「総理(あくまで例えです)、そんな答えでは青の問いに緑の答えを与えてるようなもんじゃないですか」と記者の人が言う場面を想像したら、普通に責められるより逆に厳しく感じてしまうのは私だけでしょうか。


『小さなアヒルを吹き出す。』/ラトビア語

これ、可愛い表現です。イラストも可愛いから余計にそう思ったのかも知れませんが。実はこの意味は“くだらないことをベラベラと話している”もしくは“嘘をついている”なのです。「ちょっと黙っててください」と言われるところを「アヒルを吹き出すの、やめて」と言われたら素直に「あ、ごめんごめん」みたいになりそうです。
そういえば、会話中話がそれてしまってそろそろ本題に戻ろうというのをフランス語では『さて、羊に戻るとしようか』って言うそうです。日本人がいきなりこれを言うと周りの人は「ん?」てなりますけどね。


さてラストを飾るのは、本書の中で私が一番なるほどと納得したことわざです。


『水が半分しか入っていない壺のほうが、水がよくはねる』/ヒンディー語

英語にも似た意味のことわざ『空の容器のほうが大きな音を立てる』があるそうですが、意味、わかりますか?“本当の知識をもっていない人に限って、必要以上に大事で語り、飛び回り、腕を大きく動かしておおげさな身ぶり手ぶりをする”という意味なのです。めちゃくちゃ辛辣です。でも確かに、と思い当たる人も多いのでは?会議で自分の意見を押し通したくてギャアギャア言う人たち、人の意見にいちいち反論しては会議を長引かせるだけの人たち、で結局最後は、静かに戦局を見ていた人の一言で決まったりするんですよね。声が大きい人が得する職場は中身が無いってことなのかも。(あ、すみません、最後に毒が漏れました。)


これまでのシリーズ、読んでいただきありがとうございました。最後にもう一度、忘れられないあの言葉を置いておきます。

努めて、自分の言葉にもっと慎重になろう。口にしたときには何の意味もないように思える言葉でも、結果的に力をもってしまうことがある。播くつもりさえなかった言葉の種が、自分を離れて人々の中で育ちはじめることもあるのだ。(写真家ブランドン・スタントン



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